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法人税の勘定科目を完全解説!仕訳例と実務での注意点

2025-08-12
  • 法人税
  • 経理実務

法人税に関する主要な勘定科目とその使い分け

法人税の会計処理では、複数の勘定科目を使い分ける必要があります。それぞれの科目には明確な役割があり、正しく理解することで、適切な財務諸表の作成が可能になります。

主要な勘定科目は以下の通りです:

  • 法人税、住民税及び事業税(法人税等) - 損益計算書の税金費用
  • 未払法人税等 - 貸借対照表の流動負債
  • 仮払法人税等 - 中間納付時の資産科目
  • 法人税等調整額 - 税効果会計を適用する場合の調整科目

これらの科目を適切に使い分けることで、企業の税負担を正確に表示し、ステークホルダーへの説明責任を果たすことができます。

期中の中間納付時の仕訳処理

中間納付を行う場合の基本仕訳

中間申告により法人税等を 50 万円納付する場合:

仮払法人税等 500,000円 / 現金預金 500,000円

仮払法人税等は、期末の確定申告まで資産として計上します。これは将来の法人税等と相殺される前払い的な性格を持つためです。

予定納税の場合の処理

前期の法人税額の半分を予定納税として納付する際も、同様に仮払法人税等を使用します。源泉所得税の還付がある場合は、別途「仮払源泉所得税」として区分することも実務上行われています。

決算時の法人税等の計上と仕訳

確定申告による法人税等の計上

決算において、当期の法人税等が 120 万円と確定し、中間納付 50 万円を控除した残額 70 万円を納付する場合:

法人税、住民税及び事業税 1,200,000円 / 仮払法人税等  500,000円
                                        / 未払法人税等  700,000円

この仕訳により、損益計算書には当期の税負担額 120 万円が正しく表示され、貸借対照表には実際の納付予定額 70 万円が負債として計上されます。

還付が発生する場合の処理

業績悪化等により、中間納付額が確定税額を上回る場合:

法人税、住民税及び事業税 300,000円 / 仮払法人税等    500,000円
未収還付法人税等     200,000円 /

未収還付法人税等は流動資産として表示し、還付時期を注記で開示することが望ましいとされています。

修正申告・更正による追加納付の処理

過年度の修正が発生した場合

税務調査により前期分の法人税 30 万円を追加納付する場合:

過年度法人税等 300,000円 / 現金預金 300,000円

過年度法人税等は、当期の法人税等とは区別して表示することで、経常的な税負担と臨時的な税負担を明確に区分できます。金額が重要な場合は、特別損失として表示することも検討されます。

税効果会計を適用する場合の勘定科目

繰延税金資産・負債の計上

一時差異が 100 万円発生し、税率 30%の場合:

繰延税金資産 300,000円 / 法人税等調整額 300,000円

法人税等調整額は、税効果会計により会計上の利益と税務上の所得の差異を調整する科目です。損益計算書では、法人税等の次に表示されます。

評価性引当額の処理

繰延税金資産の回収可能性に疑義がある場合は、評価性引当額を控除します。これは注記事項として開示し、投資家への情報提供を行います。

実務上の注意点とベストプラクティス

勘定科目の統一性を保つ

企業グループ内で勘定科目の使用方法を統一することが重要です。特に連結決算を行う場合、科目の不統一は決算作業の効率を著しく低下させます。

税務申告書との整合性確認

会計上の法人税等と税務申告書の税額が一致しているか、必ず確認が必要です。差異がある場合は、その原因を明確にし、必要に応じて注記での説明を行います。

四半期決算での簡便処理

上場企業の四半期決算では、見積実効税率を使用した簡便的な方法が認められています。ただし、年度決算では必ず実際の税額計算に基づく処理が必要です。

法人税等の開示における留意事項

財務諸表の注記において、以下の情報開示が求められます:

  1. 税金費用の内訳 - 当期分と過年度分の区分表示
  2. 法定実効税率と実際負担率の差異 - 重要な差異がある場合の原因説明
  3. 繰延税金資産の回収可能性 - 判断の根拠と今後の見通し
  4. 税務上の繰越欠損金 - 金額と繰越期限

これらの開示により、企業の税務ポジションの透明性が確保され、投資家の適切な意思決定を支援します。

まとめ:正確な処理で信頼性の高い決算を

法人税に関する勘定科目の適切な使用は、企業会計の基本中の基本です。特に上場企業や金融機関との取引が多い企業では、これらの処理の正確性が企業の信用力に直結します。

実務では、税理士や公認会計士と連携しながら、最新の税制改正や会計基準の変更に対応していくことが不可欠です。定期的な研修や情報収集により、経理担当者のスキルアップを図ることも重要な経営課題といえるでしょう。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。実際の会計処理については、顧問税理士等の専門家にご相談ください。

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