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相続税の基礎控除と生前贈与の基本知識|北九州の税理士がわかりやすく解説

2025-12-26
  • 相続

「相続税はお金持ちだけが払うもの」と思っている方は少なくありません。しかし、2015年の税制改正で基礎控除額が引き下げられたことにより、相続税の課税対象となる方は大幅に増加しました。北九州市内でも、自宅の土地・建物を所有しているだけで相続税がかかるケースが増えています。私たちの事務所にも、相続税に関するご相談が年々増加しています。本記事では、相続税の基礎控除の仕組みと、生前にできる贈与対策の基本知識について、税務の観点からわかりやすく解説します。

相続税の基礎控除とは

相続税には「基礎控除」という非課税枠があります。遺産の総額がこの基礎控除額以下であれば、相続税はかからず、申告も不要です。基礎控除額は以下の計算式で求められます。

基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)

例えば、法定相続人が配偶者と子ども2人の合計3人の場合、基礎控除額は3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円となります。つまり、遺産の総額が4,800万円以下であれば、相続税はかかりません。

法定相続人が配偶者と子ども1人の場合は4,200万円、配偶者のみの場合は3,600万円が基礎控除額です。法定相続人の数が多いほど基礎控除額も大きくなり、相続税の負担が軽くなる仕組みです。

相続税がかかる財産の範囲

相続税の計算にあたっては、被相続人(亡くなった方)が残したすべての財産が対象となります。主な相続財産は以下の通りです。

不動産(土地・建物)は、相続財産の中で最も大きな割合を占めることが多い財産です。土地は「路線価」または「倍率方式」で評価し、建物は「固定資産税評価額」で評価します。北九州市内の土地でも、駅周辺や商業地域では路線価が高く、基礎控除を超えるケースがあります。

預貯金、有価証券(株式・投資信託など)、生命保険金、退職金なども相続財産に含まれます。生命保険金と退職金については、それぞれ「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。

そのほか、自動車、貴金属、ゴルフ会員権、貸付金なども評価の対象となります。被相続人が事業を営んでいた場合は、事業用資産や在庫なども含まれます。

相続税の計算の流れ

相続税の計算は、以下の手順で行います。

まず、相続財産の総額を計算します。次に、借入金や未払金などの債務、葬式費用を差し引きます。さらに、基礎控除額を差し引いた残額が「課税遺産総額」です。この課税遺産総額を法定相続分に応じて按分し、それぞれに税率を掛けて相続税の総額を算出します。最後に、実際の相続割合に応じて各相続人の税額を配分します。

相続税の税率は、取得金額に応じて10%から55%の累進税率が適用されます。取得金額が1,000万円以下なら税率10%、3,000万円以下なら15%(控除額50万円)、5,000万円以下なら20%(控除額200万円)というように段階的に上がります。

配偶者の税額軽減

相続税には、配偶者を保護するための大きな軽減措置があります。配偶者が相続した財産が、(1)法定相続分以下、または(2)1億6,000万円以下のいずれか大きい方の金額までは、相続税がかかりません。

つまり、配偶者が相続する場合は、かなり大きな非課税枠が確保されています。ただし、この特例を適用するには相続税の申告が必要です。基礎控除以下で申告不要な場合とは異なり、配偶者の税額軽減の適用を受けるためには、たとえ税額がゼロになる場合でも申告書を提出しなければなりません。

また、配偶者が多額の財産を相続すると、その配偶者が亡くなったとき(二次相続)の相続税負担が大きくなる可能性があります。一次相続と二次相続をトータルで考えた対策が重要です。

生前贈与による相続対策

暦年贈与の基本

生前贈与の最も基本的な方法が「暦年贈与」です。贈与税には年間110万円の基礎控除があるため、1年間に110万円以下の贈与であれば贈与税はかかりません。この非課税枠を活用して、毎年少しずつ財産を移転することで、将来の相続財産を減らし、相続税の負担を軽減できます。

例えば、子ども2人と孫2人の合計4人に毎年110万円ずつ贈与すれば、年間440万円、10年間で4,400万円の財産を非課税で移転できます。これにより、相続財産がその分減少し、相続税の課税対象額を引き下げることができます。

ただし、2024年1月以降に行われた暦年贈与については、相続財産への加算期間(持ち戻し期間)が従来の3年から段階的に7年へ延長されます。具体的には、2027年1月以降に発生した相続から加算期間が4年に延び、以降1年ずつ延長されて、2031年1月以降の相続で最終的に7年となります。なお、延長された4年分(3年超〜7年以内)については、総額100万円までは加算対象外となる緩和措置が設けられています。この点を考慮すると、生前贈与は早い段階から計画的に始めることが重要です。

定期贈与とみなされないための注意点

毎年同じ時期に同じ金額を同じ相手に贈与し続けると、「定期贈与」(最初から一定額を毎年贈与する約束があった)とみなされるリスクがあります。定期贈与と認定されると、最初の年に贈与総額に対して贈与税が課される可能性があります。

これを避けるためには、贈与の都度、贈与契約書を作成すること、毎年の贈与金額を少しずつ変えること、贈与の時期をずらすこと、などの対策が有効です。また、贈与は銀行振込で行い、記録を残すことも重要です。現金の手渡しでは、贈与の事実を証明することが難しくなります。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度は、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与について、累計2,500万円まで贈与税を非課税にする制度です。2,500万円を超えた部分には一律20%の贈与税がかかります。そして、贈与者が亡くなった際に、贈与した財産を相続財産に加算して相続税を計算し、すでに支払った贈与税を控除します。

2024年1月以降は、相続時精算課税制度にも年間110万円の基礎控除が新設されました。この基礎控除内の贈与であれば、相続財産への加算も不要です。これにより、相続時精算課税制度の使い勝手が大幅に向上しました。

ただし、相続時精算課税制度を選択すると、その贈与者からの贈与について暦年課税に戻ることはできません。制度の選択は慎重に判断する必要があります。当事務所では、お客様の財産状況や家族構成を踏まえた上で、どちらの制度が有利かをシミュレーションし、最適なご提案を行っています。

贈与税の特例制度

住宅取得等資金の贈与の特例

父母や祖父母から住宅取得資金の贈与を受けた場合、一定の要件を満たせば非課税限度額(省エネ等住宅で1,000万円、それ以外で500万円)まで贈与税が非課税になる特例があります。住宅の新築、取得、増改築が対象です。この特例は暦年贈与の基礎控除110万円と併用でき、合わせて最大1,110万円(省エネ等住宅の場合)まで非課税で贈与できます。

教育資金の一括贈与の特例

30歳未満の子や孫に対して、教育資金として一括で贈与する場合、1,500万円まで非課税となる特例です。金融機関に専用の口座を開設し、教育費として使われたことを証明する領収書等を提出する必要があります。この特例には期限があり、適用要件も細かいため、利用を検討される場合は事前に税理士にご相談ください。

結婚・子育て資金の一括贈与の特例

18歳以上50歳未満の子や孫に対して、結婚・子育て資金として一括で贈与する場合、1,000万円まで非課税となる特例もあります(うち結婚関連費用は300万円が上限)。こちらも専用口座の開設や領収書の提出が必要です。

相続対策は早めの準備が大切

相続対策は、「まだ元気だから大丈夫」と先延ばしにしがちです。しかし、生前贈与による相続対策は、時間をかけるほど効果が大きくなります。暦年贈与は毎年コツコツ続けることで、長期間にわたって大きな財産移転が可能です。相続が発生してからでは、取れる対策は限られます。

また、相続対策は税務面だけでなく、財産の分け方(遺産分割)や、認知症への備え(成年後見制度や家族信託)なども含めて総合的に考える必要があります。遺産分割に関する法律的な問題については弁護士にご相談ください。私たちは税務の専門家として、相続税の試算や生前贈与のシミュレーション、納税資金の確保など、税務面からのサポートを行います。

まとめ:相続に備えて今からできること

相続税の基礎控除の引き下げにより、相続税が身近な問題となっています。まずは、自身の財産がどの程度あるのかを把握し、基礎控除を超える可能性があるかを確認することが第一歩です。その上で、生前贈与や各種特例の活用など、できる対策から始めていきましょう。

当事務所では、相続税の試算から生前贈与のプランニング、相続発生後の申告まで、相続に関する税務を一貫してサポートしています。北九州市内にお住まいの方で、相続や贈与に関してお悩みのことがあれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。初回のご相談は無料で承っております。ご家族の大切な財産を次の世代へ円滑に引き継ぐために、私たちがお手伝いいたします。

※本記事は一般的な税務情報の提供を目的としています。個別の状況に応じた対応については、税理士にご相談ください。

現在弊社では、ZOOMを利用したオンラインによる面談を行っております。
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