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電子帳簿保存法の実務対応ポイント(2025年最新版)|北九州の税理士が解説
2025-12-19
- 税務実務
電子帳簿保存法への対応は、すべての事業者にとって避けて通れない課題となっています。2024年1月から電子取引データの電子保存が完全義務化され、メールやインターネットで受け取った請求書・領収書などは、紙に印刷して保存するだけでは認められなくなりました。しかし、「具体的に何をすればいいのかわからない」「自社の対応が正しいのか不安」という声を、北九州の中小企業の経営者様から多くいただいています。当事務所では、顧問先の皆様に電子帳簿保存法への対応をサポートしてまいりました。本記事では、2025年時点の最新情報をもとに、実務対応のポイントをわかりやすく解説します。
電子帳簿保存法の全体像
電子帳簿保存法は、税務関係の帳簿や書類を電子データで保存するためのルールを定めた法律です。大きく分けて、以下の3つの区分があります。
1つ目は「電子帳簿等保存」です。会計ソフトで作成した仕訳帳や総勘定元帳などの帳簿を、電子データのまま保存する制度です。これは任意の制度であり、導入するかどうかは事業者の判断に委ねられています。
2つ目は「スキャナ保存」です。紙で受け取った請求書や領収書をスキャナやスマートフォンで読み取り、電子データとして保存する制度です。こちらも任意ですが、紙の保管スペースの削減や検索性の向上といったメリットがあります。
3つ目は「電子取引データの保存」です。メール添付やクラウドサービスなどで電子的にやり取りした取引情報を、電子データのまま保存することが義務づけられています。この3つ目が、すべての事業者に関わる最も重要なポイントです。
電子取引データの保存(義務)
対象となる電子取引とは
電子取引とは、取引情報を電子データでやり取りする取引のことです。具体的には、以下のようなケースが該当します。
メールに添付されたPDFの請求書や見積書を受け取った場合。クラウドサービスやEDIシステムを通じて請求書を受領した場合。インターネットで物品を購入し、ECサイトから電子的に領収書をダウンロードした場合。また、自社から電子データで発行した請求書や領収書の控えも対象です。ペーパーレス化が進む中、これらの取引は年々増加しています。
保存要件を満たすための対応
電子取引データの保存には、以下の要件を満たす必要があります。
まず「真実性の確保」です。データの改ざんを防止するための措置として、次のいずれかの対応が求められます。(1)タイムスタンプが付された後にデータを受領する、(2)受領後速やかにタイムスタンプを付す、(3)データの訂正・削除の記録が残るシステムを利用する、(4)訂正・削除を防止する事務処理規程を定めて遵守する。中小企業にとって最も導入しやすいのは、(4)の事務処理規程を定める方法です。国税庁のホームページにひな型が公開されていますので、それを参考に自社の規程を作成できます。
次に「検索機能の確保」です。保存したデータについて、「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3項目で検索できるようにする必要があります。専用のシステムを導入しなくても、ファイル名に日付・金額・取引先を記載する方法(例:「20251219_33000_株式会社〇〇」)や、Excelで索引簿を作成する方法でも対応可能です。なお、基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者で、税務調査の際にデータのダウンロードの求めに応じられる場合は、検索要件の全部が不要となる緩和措置があります。
猶予措置の活用
電子取引データの保存に関しては、一定の要件のもとで猶予措置が設けられています。相当の理由があると認められる場合で、税務調査等の際にデータのダウンロードの求め及び書面の提示・提出の求めに応じることができれば、保存要件を満たさずに電子データを保存することが認められます。ただし、これはあくまで猶予措置であり、恒久的な免除ではありません。できるだけ早く正式な対応体制を整えることをお勧めします。
スキャナ保存の実務(任意)
スキャナ保存のメリット
スキャナ保存は義務ではありませんが、導入することで多くのメリットがあります。まず、紙の保管スペースが不要になります。特に、紙の領収書や請求書が大量に発生する事業者にとっては、オフィスのスペース確保という点で大きなメリットです。また、電子データとして保存することで検索性が飛躍的に向上し、過去の取引を探す時間を大幅に短縮できます。さらに、テレワーク環境での経理業務を可能にするなど、働き方改革にも寄与します。
スキャナ保存の要件
スキャナ保存を行うには、一定の要件を満たす必要があります。解像度は200dpi以上で、カラー画像での読み取りが求められます(一般書類は白黒でも可)。スマートフォンのカメラで撮影する方法も認められていますが、読み取りの品質に注意が必要です。文字が鮮明に読み取れる品質を確保してください。
入力期間については、受領後速やか(おおむね7営業日以内)にスキャンするのが望ましいとされています。ただし、事務処理規程を定めている場合は、業務処理サイクル(最長2か月+7営業日)以内の入力でも認められます。
中小企業の具体的な対応ステップ
ステップ1:自社の電子取引を洗い出す
まず、自社でどのような電子取引が行われているかを洗い出します。メールで受け取っている請求書はあるか、ECサイトでの購入はあるか、クラウドサービスからダウンロードしている書類はあるか、などを確認します。取引先ごと、部門ごとに整理すると、対応すべき範囲が明確になります。
ステップ2:保存方法を決定する
洗い出した電子取引について、どのように保存するかを決定します。選択肢としては、(1)専用の電子帳簿保存システムを導入する、(2)クラウドストレージ(Google Drive、Dropboxなど)にフォルダを作成してファイル名で管理する、(3)会計ソフトの電子帳簿保存機能を活用する、などがあります。中小企業の場合、まずは(2)のクラウドストレージで対応し、取引量が増えてきたら(1)の専用システムへ移行する、という段階的な導入がお勧めです。
ステップ3:事務処理規程を整備する
真実性の確保のために、事務処理規程を整備します。規程には、電子取引データの保存に関するルール(保存場所、ファイル名の命名規則、担当者、訂正・削除の手続きなど)を定めます。国税庁のホームページに公開されているひな型をベースに、自社の実情に合わせてカスタマイズすることをお勧めします。当事務所では、顧問先の皆様に事務処理規程の作成をサポートしています。
ステップ4:社内に周知し運用を開始する
規程やルールが決まったら、従業員に周知し、運用を開始します。電子取引データを受け取る部門や担当者は経理部門だけではありません。営業部門がメールで見積書を受け取ったり、総務部門がオンラインで備品を購入したりするケースもあります。すべての関係者にルールを理解してもらうことが、正確な運用の鍵です。最初は不慣れな部分もあるかもしれませんが、定着すれば業務効率化にもつながります。
よくある質問と回答
紙の請求書を受け取った場合はどうなる?
紙で受け取った請求書や領収書は、従来通り紙のまま保存すれば問題ありません。電子帳簿保存法で義務化されているのは、あくまで電子的に受け取った取引データの電子保存です。紙をスキャナ保存に切り替えることは任意です。
電子取引データを紙に印刷して保存するのはダメなの?
はい、2024年1月以降は、電子取引データを紙に印刷して保存するだけでは、正式な保存として認められなくなりました。電子データそのものを、要件を満たした形で保存する必要があります。ただし、前述の猶予措置に該当する場合はこの限りではありません。
Amazon等のECサイトでの購入はどう対応する?
ECサイトで物品を購入した場合、サイト上で表示される領収書や購入明細が電子取引データに該当します。注文確認メールやPDF領収書をダウンロードし、所定の方法で保存する必要があります。サイトの表示画面をスクリーンショットやPDFで保存する方法も有効です。
経理業務の改善につなげるために
電子帳簿保存法への対応は、負担に感じるかもしれませんが、経理業務を見直し、効率化するきっかけでもあります。書類の電子化が進むことで、紙の管理コストが削減され、検索性が向上し、テレワークにも対応しやすくなります。対応をきっかけに、クラウド会計ソフトの導入や業務フローの見直しを合わせて行うことで、経理業務全体の効率化を実現できます。
私たちの事務所では、電子帳簿保存法への対応コンサルティングを行っています。自社の状況に合った保存方法の選定、事務処理規程の作成、運用開始後のフォローアップまで、一貫してサポートいたします。北九州市内の事業者の皆様、電子帳簿保存法への対応でお困りのことがあれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。初回のご相談は無料で承っております。
※本記事は一般的な税務情報の提供を目的としています。個別の状況に応じた対応については、税理士にご相談ください。
