BLOGブログ

インボイス制度の経過措置と2割特例の活用|北九州の税理士が中小事業者向けに解説

2026-04-23
  • 消費税
  • インボイス制度

インボイス制度(適格請求書等保存方式)が 2023 年 10 月に始まってから、中小事業者を中心に多くの相談が当事務所にも寄せられています。特に経過措置の取扱いや、免税事業者から課税事業者へ移行された方の負担軽減策である「2 割特例」は、知っているかどうかで税負担が大きく変わる重要なテーマです。本記事では、北九州の税理士の視点から、インボイス制度の経過措置の概要と 2 割特例の活用方法、そして実務上の注意点を整理してお伝えします。

インボイス制度の基本的なおさらい

適格請求書発行事業者とは

適格請求書発行事業者とは、税務署に登録申請を行い、登録番号を取得した課税事業者のことです。買い手は、適格請求書(インボイス)の保存がなければ、消費税の仕入税額控除を原則として受けられません。

つまり、売り手が登録事業者でない場合、買い手側で消費税分が控除できず、結果的に買い手の税負担が増える構造になっています。これがインボイス制度の最大のポイントです。

免税事業者の選択

売上 1,000 万円以下の事業者は、本来であれば消費税の納税義務がない免税事業者です。しかし、取引先が課税事業者の場合、インボイスを発行できないことで取引から外される可能性があるため、登録するかどうかの判断を迫られています。

登録すると課税事業者になり、消費税の納税義務が発生します。事業の実態や取引先構成によって、登録の損得は変わってきます。判断に迷う場合は、税理士と一緒に試算してみることをお勧めします。

仕入税額控除の経過措置

インボイス制度の急激な変化を緩和するため、免税事業者からの仕入について段階的な経過措置が設けられています。免税事業者から仕入れた場合でも、一定割合の仕入税額控除が認められる仕組みです。

期間 控除可能割合
2023 年 10 月〜 2026 年 9 月 仕入税額相当額の 80%
2026 年 10 月〜 2029 年 9 月 仕入税額相当額の 50%
2029 年 10 月以降 控除不可

このように段階的に控除割合が下がっていくため、免税事業者を仕入先に持つ買い手側は、長期的な税負担を見据えて取引方針を検討する必要があります。

2026 年 10 月からは控除割合が 50% に下がるため、買い手側の負担増は無視できません。免税事業者である売り手側も、取引先から登録の検討を求められる場面が増える可能性があります。

2 割特例の概要

免税事業者から課税事業者に転換した方の負担を軽減するため、2 割特例という制度が設けられています。これは、納付すべき消費税額を「売上にかかる消費税額の 2 割」とできる、非常に有利な特例です。

2 割特例が使える期間

2 割特例の適用期間は、2023 年 10 月 1 日から 2026 年 9 月 30 日までを含む課税期間です。個人事業主であれば 2023 年から 2026 年までの 4 年間、3 月決算法人であれば 2024 年 3 月期から 2027 年 3 月期までの 4 年分が該当します。

事業区分 適用される課税期間の例
個人事業主 2023 年・2024 年・2025 年・2026 年
3 月決算法人 2024 年 3 月期〜 2027 年 3 月期
12 月決算法人 2023 年 12 月期〜 2026 年 12 月期

なお、2026 年 9 月末で経過措置の控除割合が下がるタイミングと、2 割特例の終了時期はほぼ重なっています。2026 年以降は税負担が一段階上がることを念頭に資金繰りを考えておきましょう。

2 割特例の計算方法

2 割特例の計算は非常にシンプルです。売上にかかる消費税額を計算し、その 2 割を納付すればよいだけです。仕入にかかる消費税の集計は不要なため、事務負担が大きく軽減されます。

例えば、課税売上高が 800 万円(税抜)の事業者であれば

  • 売上にかかる消費税額 = 800 万円 × 10% = 80 万円
  • 納付税額 = 80 万円 × 20% = 16 万円

このように、簡便な計算で納税額が確定します。

2 割特例の適用対象者

2 割特例が使えるのは、インボイス制度を機に免税事業者から課税事業者になった方が中心です。具体的には次の条件を満たす必要があります。

  • 基準期間の課税売上高が 1,000 万円以下である
  • 適格請求書発行事業者の登録を受けて課税事業者になった
  • 課税事業者選択届出書の提出による課税事業者ではない(一部例外あり)

もともと売上 1,000 万円超の課税事業者には適用されないため、注意が必要です。

2 割特例と簡易課税・原則課税の比較

事業者が選択できる消費税の計算方法は複数あります。それぞれの特徴を理解して、自社に有利な方法を選びましょう。

計算方法 仕入税額の計算 主な向き
原則課税 実額計算 仕入が多い・課税仕入が多い事業者
簡易課税 みなし仕入率による計算 仕入が少なめのサービス業など
2 割特例 売上消費税の 80% を仕入相当額とみなす インボイス転換組の中小事業者

業種によっては、簡易課税のみなし仕入率の方が 2 割特例より有利になるケースもあります。例えば卸売業はみなし仕入率 90% なので、簡易課税の方が有利です。一方、サービス業(みなし仕入率 50%)であれば 2 割特例の方が有利になります。

経過措置と 2 割特例の組み合わせ

2 割特例を選択している事業者は、計算上仕入の集計が不要なので、経過措置(80%・50% 控除)を意識する場面は少なくなります。一方で、原則課税を選択している事業者にとっては、経過措置が重要な節税ポイントになります。

経過措置を活用するには、免税事業者からの仕入であっても、請求書や領収書を適切に保存し、帳簿に区分して記載する必要があります。記録が不十分だと、控除が認められないこともあるため、経理体制の整備が欠かせません。

実務でのよくある質問

Q. 登録後に売上が 1,000 万円を超えてしまったらどうなりますか

基準期間の課税売上高が 1,000 万円を超えた場合、2 割特例は使えなくなります。原則課税または簡易課税のいずれかを選択することになります。事前に売上の見通しを立てて、有利な方法を検討しておきましょう。

Q. 簡易課税の届出を出していると 2 割特例は使えませんか

簡易課税制度選択届出書を提出していても、各課税期間ごとに簡易課税か 2 割特例かを選択できます。確定申告書を提出する際にどちらか有利な方を選ぶことができるので、慌てて届出を取り下げる必要はありません。

Q. 2 割特例の適用は届出が必要ですか

2 割特例の適用には事前の届出は不要です。消費税の確定申告書で 2 割特例を選択する欄にチェックを入れるだけで適用できます。年度ごとに選択できる柔軟性も特徴です。

Q. 2 割特例終了後はどうなりますか

2026 年 9 月末を含む課税期間が終わると、2 割特例は適用できなくなります。その後は原則課税か簡易課税のいずれかになり、納税額が増える可能性があります。早めに自社に有利な方法を見極め、税理士と相談しながら長期的な税負担計画を立てておきましょう。

2 割特例適用時の実務上のポイント

帳簿への記載は引き続き必要

2 割特例を選択していても、消費税法上必要な帳簿への記載(取引先名・取引内容・取引日・取引金額など)は省略できません。日々の経理処理は通常通り行う必要があります。

適格請求書の発行義務はある

売り手としては、適格請求書発行事業者である以上、買い手から求められたらインボイスを交付する義務があります。2 割特例は買い手側の負担計算の話なので、売り手側の発行義務とは別の論点です。インボイスのフォーマットや記載要件は引き続き押さえておきましょう。

中長期の事業計画と合わせて検討

2 割特例は時限的な措置です。終了後にどの計算方法を選ぶかは、事業の規模や仕入構造を踏まえて判断する必要があります。当事務所では、お客様の数年先を見据えた消費税戦略のシミュレーションも行っています。

まとめ

インボイス制度の経過措置と 2 割特例は、中小事業者の負担を軽減する重要な制度です。ただし、いずれも時限的な措置であり、適用期間や条件を正しく理解していないと、思わぬ追加負担に直面することがあります。

私たちの事務所では、北九州の税理士として、インボイス登録の判断、2 割特例と簡易課税の比較シミュレーション、経過措置を踏まえた取引先との交渉サポートなどを行っています。インボイス制度や消費税の取扱いでお困りの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

※本記事は一般的な税務情報の提供を目的としています。個別の状況に応じた対応については、税理士にご相談ください。

現在弊社では、ZOOMを利用したオンラインによる面談を行っております。
© 税理士 富下会計事務所