BLOGブログ
電子帳簿保存法の実務対応|電子取引・スキャナ保存・電子帳簿のポイントを北九州の税理士が解説
2026-05-01
- 税務実務
- 電子帳簿保存法
電子帳簿保存法は、2022 年 1 月の改正以降、複数回にわたって運用が見直されてきました。中小企業や個人事業主にとって、特に影響が大きいのが電子取引データの保存義務化です。当事務所には「メールで届いた請求書をどう保存すればよいか」「クラウド請求書のデータはどう扱えばよいか」といったご相談が日々寄せられます。本記事では、北九州の税理士として、電子帳簿保存法の 3 つの区分とそれぞれの実務対応ポイント、よくある誤解について整理して解説します。
電子帳簿保存法の全体像
3 つの保存区分
電子帳簿保存法では、保存対象に応じて 3 つの区分が設けられています。それぞれ要件や義務の有無が異なるため、混同しないように整理しておきましょう。
| 区分 | 対象 | 義務/任意 |
|---|---|---|
| 電子取引データ | メール・クラウドサービスで授受した請求書等 | 義務 |
| スキャナ保存 | 紙の領収書・請求書をスキャンしたデータ | 任意 |
| 電子帳簿保存 | 会計ソフトで作成した帳簿データ | 任意 |
このうち、特に重要なのが「電子取引データの保存」です。義務化されているため、対応していないと税務調査で指摘される可能性があります。
改正の経緯と現在のルール
当初は 2022 年 1 月から電子取引データの紙保存が原則禁止される予定でしたが、中小事業者の準備状況を踏まえ、2023 年 12 月まで宥恕(ゆうじょ)措置が設けられました。その後、2024 年 1 月以降は新たな猶予措置として、相当の理由があり、税務職員のダウンロードの求めに応じられる場合は、整然とした形式でのデータ保存(検索要件不要)が認められています。
ただし、これはあくまで猶予措置です。長期的には、検索要件まで含めた本則対応への移行が求められています。
電子取引データの保存義務
電子取引とは何か
電子取引とは、紙ではなく電子データで授受される取引情報のことを指します。具体的には次のようなものが該当します。
- メール添付で受け取った請求書 PDF
- クラウドサービスからダウンロードした請求書・領収書
- インターネットバンキングの取引明細
- EC サイトからの注文確認メール(取引情報を含むもの)
- クレジットカードの利用明細データ
- 電子契約サービスで締結した契約書
これらは紙に印刷して保存するのではなく、電子データのまま保存することが義務付けられています。
保存に求められる要件
電子取引データの保存には、真実性の確保と可視性の確保という 2 つの要件があります。
真実性の確保は、改ざんされていないことを担保するための要件で、次のいずれかの方法を選びます。
- タイムスタンプを付与する
- 訂正削除の履歴が残るシステムを使う
- 訂正削除を行えないシステムを使う
- 事務処理規程を定めて運用する
可視性の確保は、税務調査などで確認できるように整理しておくための要件で、検索機能の確保(取引年月日・取引金額・取引先で検索できる状態)と、保存場所での閲覧・出力体制の整備が求められます。
中小事業者の場合、もっとも現実的なのは「事務処理規程を定めて運用する」方法と、検索要件についてはファイル名の付け方を工夫する方法です。
検索要件への対応方法
検索要件は、取引年月日・取引金額・取引先の 3 項目で検索できる状態にすることが求められています。実務的な対応方法をいくつか紹介します。
| 対応方法 | 概要 |
|---|---|
| ファイル名で表現する | 「20260415_500000_株式会社○○.pdf」のように規則的に命名 |
| 索引簿を作成する | Excel などで取引一覧を作成し、ファイルと紐付け |
| 検索機能のあるシステムを使う | 専用の電帳法対応クラウドサービスを利用 |
なお、前々年度の売上高が 5,000 万円以下の事業者は、税務職員のダウンロードの求めに応じることで検索要件が不要となる緩和措置があります。
スキャナ保存
スキャナ保存の概要
スキャナ保存は、紙で受け取った領収書や請求書をスキャンして電子化し、原本の紙を破棄できる制度です。義務ではなく任意なので、自社の業務効率化の観点で導入を検討します。
スキャナ保存を導入すると、書類の保管スペースを削減でき、検索性も上がります。一方で、要件を満たすには一定の準備が必要なため、導入時には慎重に検討しましょう。
スキャナ保存の主な要件
スキャナ保存には次のような要件があります。
- 入力期間(受領後速やかに、または最長 2 ヶ月以内)の遵守
- 一定の解像度(200dpi 以上)
- カラー画像での読み取り(一般書類は除く)
- タイムスタンプの付与または改ざん不可能なシステムの使用
- 検索機能の確保(取引年月日・取引金額・取引先)
これらの要件を満たすために、専用のクラウドサービスやスキャナアプリを導入する事業者が増えています。
スキャナ保存の運用上の注意点
スキャナ保存を始めると、紙原本の破棄が認められますが、社内で運用ルールを徹底することが重要です。例えば、誰がいつスキャンするのか、確認者を誰にするのか、スキャン後の紙はどのタイミングで破棄するのか、といった点を事務処理規程で明確にしておきましょう。
途中で運用が崩れると、紙とデータの両方が中途半端に残ってしまい、税務調査で混乱を招く原因になります。
電子帳簿保存
優良な電子帳簿と一般電子帳簿
会計ソフトで作成した仕訳帳・総勘定元帳などの帳簿を、紙に印刷せず電子データのまま保存する制度です。これも任意の制度で、優良な電子帳簿と一般電子帳簿の 2 種類があります。
優良な電子帳簿の要件を満たして届出を行うと、軽減税率の優遇を受けられます。具体的には、過少申告加算税の軽減(5% 軽減)が適用されます。
優良な電子帳簿の要件
優良な電子帳簿として認められるには、次のような要件を満たす必要があります。
- 訂正削除の履歴が残るシステムを使う
- 帳簿間で相互に関連性が確認できる
- 検索機能(取引年月日・取引金額・取引先・範囲指定)を備える
- 電子計算機処理システムの開発関係書類を備え付ける
主要な会計ソフトの多くは、これらの要件に対応した運用が可能です。導入前にベンダーに確認することをお勧めします。
実務でのよくある質問
Q. メールで受け取った請求書は紙に印刷して保存していますが、これでもいいですか
いいえ、原則として認められません。電子で受け取った請求書は、電子データのまま保存することが義務です。紙で印刷したものを正本として扱うことはできません。猶予措置がある場合でも、データ自体の保存は必要です。
Q. 1 ヶ月分まとめてフォルダにダウンロードしておくのは大丈夫ですか
単純にダウンロードして保存しているだけでは、検索要件や真実性要件を満たさない可能性があります。最低限、事務処理規程を整え、ファイル名を検索可能な形式にする、または索引簿を作成するといった対応が必要です。
Q. クラウド会計ソフトに自動取り込みされている場合は別途保存が必要ですか
使用しているクラウドサービスが電子帳簿保存法の要件を満たしている場合、そのまま保存していれば問題ないケースが多いです。ただし、サービスごとに対応状況が異なるため、ベンダーが公開している電帳法対応情報を確認しましょう。
Q. 電子契約書はどう保存すればよいですか
電子契約サービスで締結された契約書も電子取引データに該当します。サービス内で保存できる場合は、そのまま長期的に保存できる契約にしておくことが望ましいです。必要に応じて、検索性のある形式でローカルにバックアップを取る運用も検討しましょう。
中小企業が今すぐ取り組むべきこと
電子取引データの洗い出し
まずは、自社で電子的にやり取りしている書類を洗い出しましょう。仕入請求書、外注費請求書、経費精算の領収書、ネットバンキングの利用明細など、思った以上に多くの電子データが流通しているはずです。
事務処理規程の整備
国税庁が公開している事務処理規程のひな形を活用し、自社の運用に合わせて整備しましょう。規程を整えておけば、真実性の確保要件を比較的容易に満たせます。
保存方法の決定と運用ルール化
フォルダ構成、ファイル名のルール、スキャンするかどうか、誰が処理するかなどを決め、社内で共有しましょう。担当者が変わってもブレない運用ができる体制が理想です。
会計ソフトの見直し
現在使っている会計ソフトが電子帳簿保存法に対応しているか、確認しておきましょう。対応していない場合は、改めて移行を検討する時期かもしれません。クラウド会計ソフトは継続的にアップデートされるため、対応状況の良し悪しが分かれ目になります。
まとめ
電子帳簿保存法は、ペーパーレス化の流れを後押しすると同時に、適切な保存運用を求める法律です。電子取引データの保存は義務であり、対応していないと税務調査で指摘を受けるリスクがあります。一方で、スキャナ保存や電子帳簿保存をうまく活用すれば、業務効率化や税務上のメリットを享受できます。
私たちの事務所では、北九州の税理士として、電子帳簿保存法対応の運用設計、事務処理規程の整備、会計ソフトの選定アドバイスなどを行っています。電子帳簿保存法の対応に不安がある方、自社の運用が要件を満たしているか確認したい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
※本記事は一般的な税務情報の提供を目的としています。個別の状況に応じた対応については、税理士にご相談ください。
