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役員報酬の決め方と税務上の注意点|定期同額給与・事前確定届出給与を北九州の税理士が解説

2026-05-08
  • 法人税
  • 経営

中小企業のオーナー経営者にとって、自分の役員報酬をいくらに設定するかは毎期の重要な経営判断です。報酬は所得税・住民税・社会保険料に影響するだけでなく、会社側の法人税にも直結します。当事務所には「役員報酬をどう決めればよいか」「期の途中で変更してもよいか」というご相談が日常的に寄せられます。本記事では、北九州の税理士として、役員報酬の基本ルール、税務上の注意点、そして実務的な決定プロセスを整理して解説します。

役員報酬の基本ルール

役員報酬の損金算入は厳格

法人税法では、役員報酬の損金算入(法人税計算上の費用として認める)は厳格にルール化されています。通常の従業員給与のように、自由に決めて自由に変えるというわけにはいきません。

これは、役員報酬を恣意的に操作することで法人税を回避するのを防ぐためです。実務上、次の 3 つのいずれかに該当しない役員報酬は、損金として認められません。

  • 定期同額給与
  • 事前確定届出給与
  • 業績連動給与

中小企業のオーナー経営者の場合、もっとも一般的なのが定期同額給与です。

損金不算入のリスク

もし役員報酬がこれらの要件を満たさない場合、その部分は法人税の計算上、損金に算入できません。つまり、会社が支払った報酬の一部について法人税が課税されることになり、二重課税のような状態に陥ります。

例えば、年間 1,200 万円の報酬を支払っていても、要件を満たさない 200 万円分は損金不算入となり、法人税の課税所得が 200 万円増えてしまうケースがあります。これは大きな損失なので、ルールの理解は必須です。

定期同額給与の仕組み

定期同額給与とは

定期同額給与とは、毎月同じ金額を継続的に支給する役員報酬のことです。中小企業のオーナー経営者の役員報酬は、ほぼこの形態で運用されています。

「定期」とは支給時期が毎月一定であること、「同額」とは支給額が毎月同じであることを意味します。年に 1 回や 2 回のボーナス的な支給は、定期同額給与には該当しません。

改定できるタイミング

定期同額給与の金額を変更できるのは、原則として事業年度開始から 3 ヶ月以内に限られます。例えば 3 月決算法人であれば、4 月から 6 月までの間に役員報酬を見直し、新しい金額を 7 月から確実に支給していくのが一般的です。

3 ヶ月以内の改定の場合、新しい役員報酬は決算月までその金額を継続して支給する必要があります。期の途中で変更すると、変更部分について損金不算入の問題が生じやすくなります。

改定パターン 損金算入の扱い
期首から 3 ヶ月以内 改定後の金額は原則損金算入可
業績悪化による改定 一定の要件を満たせば期中改定も認められる
通常の業績変動 期中改定は損金不算入のリスク

業績悪化改定の例外

定期同額給与は、業績の著しい悪化など、やむを得ない事情がある場合に限り、期中改定が認められることがあります。具体的には、経営状況の悪化により取引先や金融機関に説明が必要な状況にある、財務諸表に大きな影響を与える経済情勢の急激な変化がある、といったケースです。

ただし、単に「思ったほど利益が出ない」「節税のため減額したい」といった理由では認められません。実態として業績の悪化があり、それを客観的に示せることが重要です。

事前確定届出給与

事前確定届出給与とは

事前確定届出給与とは、役員に対するボーナス(賞与)を事前に税務署に届け出ておく制度です。例えば「12 月に役員賞与として 200 万円を支給する」と事前に申告しておけば、その支給が損金に算入できます。

届出のタイミング

事前確定届出給与の届出書は、株主総会等で定めた日から 1 ヶ月以内、または事業年度開始から 4 ヶ月以内のいずれか早い日までに提出する必要があります。期限を 1 日でも過ぎると認められないため、慎重なスケジュール管理が必要です。

届出通りに支給することが大事

届出をした後で、支給時期や支給金額が届出と異なった場合、原則として全額が損金不算入になります。例えば、200 万円と届け出ていたのを 250 万円支給した場合、増額分の 50 万円だけでなく、全額の 250 万円が損金不算入になる可能性があります。

業績の見通しが立ちにくい場合は、無理に高額の届出をせず、現実的な金額に抑えるのが安全です。

業績連動給与

業績連動給与は、利益などの指標に基づいて役員報酬を変動させる仕組みです。ただし、有価証券報告書を提出している法人など、主に上場企業向けの制度で、中小企業ではほとんど活用されません。

中小企業のオーナー経営者の方が役員報酬で押さえるべきは、定期同額給与と事前確定届出給与の 2 つと考えて差し支えありません。

役員報酬を決める際の検討ポイント

法人税と所得税のバランス

役員報酬を高く設定すれば、会社の法人税は減りますが、個人の所得税・住民税が増えます。逆に役員報酬を低く設定すれば、個人の税負担は減りますが、会社に利益が残り法人税が増えます。

両者のバランスをどう取るかが、役員報酬決定の最大のテーマです。一般的には、会社と個人を合わせた手取りが最大になる水準を目指して試算を行います。

社会保険料への影響

役員報酬は、社会保険料(健康保険・厚生年金)の算定基礎にもなります。報酬が高いほど社会保険料も高くなり、会社と個人の両方で負担が増えます。

社会保険料は税金とは別に発生する固定的な負担なので、税金だけでなく社会保険料も含めた総合的な試算が必要です。

検討要素 影響範囲
法人税 会社側の負担
所得税・住民税 個人側の負担
社会保険料 会社と個人の両方の負担
退職金準備 役員報酬の水準と連動する場合がある

退職金準備との関係

将来の役員退職金は、最終報酬月額に在任期間や功績倍率を掛けて算定されることが多いため、役員報酬の水準が退職金額にも影響します。退職金は税制上有利な扱いがあるため、長期的な視点で報酬と退職金のバランスを検討することも大切です。

業績の見通し

業績の見通しがまだ立たない段階で、高めの役員報酬を設定してしまうと、業績が悪化したときに減額するのが難しくなります(業績悪化改定の要件は厳しい)。期首の段階では、保守的な見積もりに基づいた水準にしておくのが無難です。

役員報酬決定のよくある質問

Q. 役員報酬をゼロにすることはできますか

法的にはゼロでも問題ありません。創業期で利益がほとんど出ていない時期や、別の収入がある場合などにゼロとするケースもあります。ただし、社会保険料は最低額が発生する場合があるため、別途確認が必要です。また、ゼロにすると個人の生活費は他の方法で確保する必要があります。

Q. 役員報酬の決定はどこで決めますか

株主総会または取締役会で決定するのが一般的です。中小企業の場合、株主=オーナー=役員であることが多いため、実質的には経営者本人の判断ですが、議事録を残しておくことが重要です。税務調査でも議事録の確認が行われます。

Q. 期の途中で役員を新規就任させる場合の報酬はどう扱いますか

新たに役員に就任した方の報酬は、就任日から定期同額給与として支給することができます。期首から 3 ヶ月以内のルールには該当しないため、就任のタイミングで合理的な金額を設定すれば問題ありません。

Q. 同族会社の家族役員に報酬を支払うときの注意点はありますか

家族役員(配偶者や子など)に対する報酬も、定期同額給与のルールに従う必要があります。さらに、不相当に高額な部分は損金不算入になる可能性があります。家族役員の職務内容や実態に見合った水準であることを、説明できる形で整理しておきましょう。

Q. 業績がよくなったら期中に増額できますか

業績がよくなったからといって、期中に役員報酬を増額することはできません。増額した部分は損金不算入になります。業績が好調な場合は、翌期首から新しい金額を反映させるのが原則です。それまでの間は、内部留保として会社に蓄積されることになります。

役員報酬の決定プロセス

決算前から準備を始める

役員報酬は、新事業年度の最初の 3 ヶ月以内に決める必要があります。決算が出てから慌てて決めるのではなく、決算の数字が見え始めたタイミングから、税理士と相談しながら準備を進めるとよいでしょう。

具体的には、当期の決算見込みを把握した上で、翌期の利益計画を立て、それに基づいて報酬水準を試算します。複数のパターンでシミュレーションし、税負担と社会保険料を含めたトータルコストを比較するのが理想的なプロセスです。

議事録の整備

役員報酬の決定は、株主総会または取締役会の議事録に必ず残してください。議事録には、決定日・支給額・支給時期・支給対象役員を明記します。税務調査では議事録の存在と内容が確認されるため、形式的にもしっかり整えておきましょう。

給与計算ソフトとの連動

決定した役員報酬は、給与計算ソフトに反映し、毎月確実に支給される体制を整えます。当事務所では、マネーフォワード給与や弥生給与など、お客様の使用ソフトに応じた設定サポートも行っています。

まとめ

役員報酬の決定は、税負担と資金計画の両面から経営に大きく影響する重要事項です。定期同額給与のルールを正しく理解し、期首の段階で合理的な水準を決め、議事録を整備しておくことが基本です。期中の変更は原則できないため、最初の判断が重要になります。

私たちの事務所では、北九州の税理士として、役員報酬のシミュレーション、議事録の作成支援、給与計算の運用サポートまでトータルで対応しています。新事業年度の役員報酬決定にあたって、第三者の視点でアドバイスを受けたい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

※本記事は一般的な税務情報の提供を目的としています。個別の状況に応じた対応については、税理士にご相談ください。

現在弊社では、ZOOMを利用したオンラインによる面談を行っております。
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