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夏季賞与(ボーナス)支給時の実務ガイド|社会保険料・源泉所得税の計算を北九州の税理士が解説

2026-06-17
  • 税務実務

6 月から 7 月にかけては、多くの会社で夏季賞与(ボーナス)が支給される時期です。賞与は毎月の給与と比べて支給の頻度が少ないため、社会保険料や源泉所得税の計算方法、賞与支払届などの手続きを毎回確認しながら進めている経理担当者の方も多いのではないでしょうか。賞与の計算は毎月の給与計算とルールが異なる点がいくつもあり、思い込みで処理すると保険料の徴収漏れや納付誤りにつながります。本記事では、北九州エリアで多くの中小企業の給与計算をサポートしている税理士の視点から、夏季賞与支給時に押さえておくべき実務ポイントを整理して解説します。

賞与にかかる税金と社会保険料の全体像

賞与を支給する際、会社は従業員に支払う金額からいくつかの保険料や税金を控除する必要があります。毎月の給与と同じように控除するものもあれば、賞与特有の計算方法が定められているものもあります。まずは賞与から控除する項目の全体像を確認しておきましょう。

控除項目 賞与での取り扱い
健康保険料 標準賞与額に保険料率を乗じて計算(労使折半)
厚生年金保険料 標準賞与額に保険料率を乗じて計算(労使折半)
介護保険料 40 歳以上 65 歳未満の従業員が対象
雇用保険料 賞与の総支給額に料率を乗じて計算
源泉所得税 賞与用の算出率の表を使って計算

住民税は毎月の給与から特別徴収するため、賞与からは控除しません。この点は毎月の給与計算との違いとしてよく質問をいただくところです。

社会保険料の計算方法

賞与にかかる健康保険料と厚生年金保険料は、毎月の給与で使う標準報酬月額ではなく、標準賞与額という賞与専用の金額を基準に計算します。計算の流れ自体はシンプルですが、切り捨てのルールや上限額など、賞与ならではの決まりがあります。順番に確認していきましょう。

標準賞与額の求め方

標準賞与額とは、実際に支給する賞与の額から 1,000 円未満の端数を切り捨てた金額です。たとえば賞与の総支給額が 358,500 円であれば、標準賞与額は 358,000 円になります。この標準賞与額に健康保険・厚生年金それぞれの保険料率を乗じ、労使で折半した金額が従業員負担分の保険料です。保険料率は都道府県や年度によって変わるため、支給のたびに最新の保険料額表を確認することをおすすめします。

標準賞与額には上限がある

標準賞与額には上限が設けられており、上限を超えた部分には保険料がかかりません。上限は健康保険と厚生年金で異なる点に注意が必要です。

保険の種類 標準賞与額の上限
健康保険 年度(4 月から翌年 3 月)の累計で 573 万円
厚生年金保険 1 ヶ月あたり 150 万円

役員や高額の賞与を支給する従業員がいる場合、この上限の適用を忘れると保険料を余分に控除してしまうことになります。賞与額が大きい場合は必ず上限を確認しましょう。

源泉所得税の計算方法

賞与から控除する源泉所得税は、毎月の給与で使う源泉徴収税額表(月額表)ではなく、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使って計算します。前月の給与額をもとに税率を決めるという独特の仕組みになっているため、初めて賞与計算を担当する方がつまずきやすいポイントです。

算出率の表を使った基本の計算

基本的な計算手順は次のとおりです。まず前月の給与から社会保険料等を差し引いた金額を求め、扶養控除等申告書に記載された扶養親族等の数と合わせて算出率の表に当てはめ、賞与に適用する税率を求めます。次に、賞与の額から社会保険料を差し引いた金額にその税率を乗じた金額が、賞与から源泉徴収する所得税(復興特別所得税を含む)です。

  • 手順 1 前月給与から社会保険料等を控除した金額を求める
  • 手順 2 算出率の表で扶養親族等の数と照らし合わせて税率を求める
  • 手順 3 社会保険料控除後の賞与額に税率を乗じる

前月の給与水準で税率が決まるため、同じ賞与額でも従業員ごとに税率が異なることがあります。給与ソフトを使っている場合も、扶養親族等の数が最新の状態になっているかを支給前に確認しておくと安心です。

前月に給与がない場合などの特例

前月に給与の支払いがない従業員や、賞与の額が前月給与(社会保険料等控除後)の 10 倍を超える場合には、算出率の表ではなく月額表を使った特別な計算方法が定められています。具体的には賞与額を 6 で割って月額換算し、月額表に当てはめて税額を求めてから 6 倍するという流れです(計算期間が半年を超える賞与は 12 で割ります)。産休や育休から復帰した直後の従業員、休職明けの従業員などに賞与を支給する場合はこの特例に該当することがあるため、注意が必要です。

賞与支払届の提出を忘れずに

社会保険に加入している従業員に賞与を支給したときは、支給日から 5 日以内に「被保険者賞与支払届」を年金事務所(事務センター)へ提出する必要があります。この届出をもとに賞与の保険料額が決定され、将来の年金額の計算にも反映されます。提出を忘れると従業員の年金記録に賞与分が反映されず、将来受け取る年金額に影響する可能性があるため、支給後すぐに提出する習慣をつけましょう。日本年金機構に賞与支払予定月を登録している場合は、支給月の前月に届出用紙が送られてきます。電子申請にも対応しているため、毎回の手続きを効率化したい場合は電子申請の利用も検討するとよいでしょう。

退職予定者や育休中の従業員への賞与

夏季賞与の支給時期は、ちょうど退職や休業と重なるケースが少なくありません。在籍状況によって社会保険料の取り扱いが変わるため、イレギュラーなケースこそ慎重な確認が必要です。

退職する月に支給する賞与

社会保険の資格を喪失する月に支払われた賞与には、原則として健康保険料・厚生年金保険料がかかりません。ただし月末退職の場合は資格喪失日が翌月 1 日となるため、退職月に支給した賞与にも保険料がかかります。退職日が月の途中か月末かで取り扱いが変わる点は、賞与計算で特に間違いやすいポイントです。なお、保険料がかからない場合でも賞与支払届の提出は必要ですし、雇用保険料と源泉所得税は通常どおり控除します。

育児休業中の従業員への賞与

育児休業中の従業員に賞与を支給した場合、連続して 1 ヶ月を超える育児休業を取得しているときは、申出により賞与にかかる社会保険料が免除されます。短期間の育児休業では賞与の保険料は免除されないため、休業期間と支給日の関係を確認したうえで処理しましょう。

決算賞与との違いも押さえておく

夏季賞与と似たものに決算賞与があります。どちらも従業員への賞与であることに変わりはありませんが、支給の目的や税務上の注意点が異なります。

項目 内容
夏季賞与・冬季賞与 支給慣行に基づき毎年決まった時期に支給する賞与
決算賞与 業績に応じて決算期前後に臨時で支給する賞与

決算賞与は、一定の要件を満たせば未払いの状態でも当期の損金に算入できる特例があります。具体的には、支給額を各人別に同時期に通知し、決算日から 1 ヶ月以内に支払い、通知した事業年度に損金経理することが要件です。節税策として決算賞与を検討する場合は、要件を 1 つでも欠くと損金算入が認められないため、事前に税理士へ相談することをおすすめします。また、役員に対する賞与は従業員賞与と異なり、事前確定届出給与の届出をあらかじめ提出していなければ原則として損金になりません。役員と従業員では賞与の税務上の扱いがまったく異なる点にご注意ください。

賞与支給までの実務スケジュール

賞与計算をスムーズに進めるには、支給日から逆算したスケジュール管理が欠かせません。特に扶養親族等の数の確認と支給額の決定は、計算の前提となるため早めに済ませておきましょう。

タイミング やること
支給 1 ヶ月前 支給対象者と査定・支給額の決定
支給 2 週間前 扶養控除等申告書の内容と保険料率の確認
支給 1 週間前 社会保険料・源泉所得税の計算と明細作成
支給日 賞与の支払いと明細の交付
支給後 5 日以内 賞与支払届の提出
翌月 10 日まで 源泉所得税の納付(納期の特例適用の場合を除く)

賞与から控除した源泉所得税は、毎月の給与の源泉所得税と同じく原則として支給月の翌月 10 日までに納付します。納期の特例の承認を受けている場合は、1 月から 6 月支給分を 7 月 10 日まで、7 月から 12 月支給分を翌年 1 月 20 日までにまとめて納付する扱いです。なお、控除する社会保険料の従業員負担分に 1 円未満の端数が出た場合は、50 銭以下は切り捨て、50 銭超は切り上げが原則的な取り扱いです。

よくある質問(Q&A)

Q1. 賞与からも雇用保険料は引かれますか

はい、控除が必要です。雇用保険料は毎月の給与だけでなく賞与も対象で、賞与の総支給額に雇用保険料率(従業員負担分)を乗じた金額を控除します。社会保険料のような標準賞与額への読み替えや端数の切り捨てはなく、支給額そのものに料率をかける点が異なります。

Q2. 賞与の手取りが思ったより少ないと従業員から質問されました

賞与は前月給与をもとに源泉所得税の税率が決まるため、月給に対する天引き額の感覚よりも税額が大きく見えることがあります。ただし賞与の源泉所得税はあくまで前払いであり、年末調整で年間の所得税額が精算されるため、取られすぎた分があれば年末調整で還付されます。この仕組みを従業員へ説明できるようにしておくと、問い合わせ対応がスムーズです。

Q3. 賞与支払届の提出を忘れていた場合はどうすればよいですか

気づいた時点で速やかに提出してください。提出期限は支給日から 5 日以内ですが、期限を過ぎても受け付けてもらえます。放置すると保険料の決定や従業員の年金記録に影響するため、遅れてでも必ず提出することが大切です。

Q4. 賞与の支給月に社会保険料を二重に引いてしまいそうで不安です

賞与にかかる社会保険料は、毎月の給与から控除する保険料とは別に、賞与から直接控除します。毎月の給与側の保険料額は賞与を支給しても変わらないため、給与と賞与それぞれで計算すれば二重控除にはなりません。給与ソフトの設定で賞与支給時の控除項目を確認しておくと安心です。

まとめ

夏季賞与の支給では、標準賞与額による社会保険料の計算、算出率の表による源泉所得税の計算、支給日から 5 日以内の賞与支払届の提出という 3 つの実務がポイントになります。加えて、退職予定者や育休中の従業員への支給、高額賞与の上限適用など、イレギュラーなケースでは判断に迷う場面も出てきます。当事務所では、北九州エリアの中小企業を中心に、賞与計算を含む給与計算業務のサポートや顧問対応を行っています。賞与の処理に不安がある方、給与計算の体制を見直したい方は、お気軽にご相談ください。

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