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社員への食事提供の非課税限度額が月額 7,500 円に引き上げ|令和 8 年度改正の内容と会社の対応を北九州の税理士が解説
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- 所得税
- 税務実務
社員食堂や仕出し弁当の補助、深夜勤務のときの夜食など、会社が従業員に食事を提供する場面は多くあります。こうした食事の提供は、税務上は原則として「給与」として扱われ、一定の要件を満たしたときだけ非課税になります。令和 8 年度税制改正では、この非課税限度額が月額 3,500 円から 7,500 円へと大幅に引き上げられました。
物価上昇で弁当代や食材費が上がるなか、福利厚生として食事補助を厚くしたい会社にとっては追い風となる改正です。一方で、要件を正しく理解していないと、せっかくの補助が給与課税の対象となり、従業員の手取りが減ったり源泉徴収もれを指摘されたりするおそれがあります。本記事では、北九州エリアで中小企業の税務をサポートしている税理士の視点から、食事提供の非課税ルールと今回の改正内容、会社が見直しておきたいポイントを整理して解説します。
食事の現物支給は原則として給与課税の対象
会社が役員や従業員に食事を提供した場合、その食事によって従業員が受ける経済的利益は、原則として給与として所得税の課税対象になります。現金で支給していなくても、会社が負担した分だけ従業員が得をしているという考え方です。したがって、何の工夫もなく会社が全額負担で弁当を配れば、その弁当代は給与に上乗せして源泉徴収する必要があります。福利厚生のつもりで始めた制度が、給与課税の対象と知らずに運用されているケースは珍しくありません。
食事の価額はどう決まるか
会社が食事をどう用意したかで、評価額は次のように変わります。
| 食事の用意の仕方 | 食事の価額 |
|---|---|
| 会社が自ら調理して提供する場合 | 材料費など直接費に相当する金額 |
| 飲食店や弁当業者から購入して提供する場合 | 購入価額に相当する金額 |
社員食堂を自社で運営している場合は、光熱費や人件費まで含めた総コストではなく、食材などの直接費で評価できます。外部の弁当業者から購入している場合は、その購入価格がそのまま食事の価額になります。
非課税となる要件
食事の提供が給与課税の対象から外れるためには、次の要件を両方とも満たす必要があります。
- 従業員が食事の価額の 50 % 以上を負担していること
- 会社の負担額が非課税限度額以内であること
この要件は改正後も変わっていません。たとえば 1 食 500 円の弁当を 1 ヶ月 20 日分提供する場合、月の食事の価額は 10,000 円です。従業員が半額の 5,000 円を負担し、会社が残りの 5,000 円を負担すれば、要件のひとつ目はクリアします。あとは会社負担額の 5,000 円が非課税限度額の範囲内かどうかで判定します。
なお、この判定は消費税及び地方消費税の額を除いた金額で行います。要件を満たさない場合は、会社負担額の全額が給与として課税されます。超えた部分だけではありません。限度額ぎりぎりで運用している会社は、月ごとの会社負担額を従業員別に集計し、超えそうな月は補助を調整してください。
勤務に付随する食事は別の取扱い
残業や宿日直に伴って支給する食事については、上記の要件とは別に、課税しない取扱いが認められています。通常の勤務時間外に業務のために食事を提供するもので、給与というよりも業務上の必要経費に近い性格と考えられているためです。ただし、あくまで残業や宿日直に伴う食事という前提があるため、毎日の昼食をこの取扱いで処理することはできません。
令和 8 年度改正で限度額が月額 7,500 円に
今回の改正の中心は、会社負担額の非課税限度額の引き上げです。改正前後の金額は次のとおりです。
| 区分 | 非課税限度額 |
|---|---|
| 改正前 | 月額 3,500 円 |
| 改正後 | 月額 7,500 円 |
昨年まで月額 3,500 円だった限度額は長年据え置かれてきましたが、食材費や外食費の上昇によって、実態に合わなくなっていました。1 食 350 円の補助を 20 日分行うだけで 7,000 円となり、従来の限度額をあっさり超えてしまいます。
今回の引き上げにより、月 20 日勤務であれば 1 食あたり 375 円までの会社負担が非課税で行えるようになります。従業員の食事負担を実質的に軽くしながら、会社側は福利厚生費として損金に算入できるため、双方にメリットのある改正といえます。
夜食手当の非課税枠も拡大
製造業の夜勤や運送業では、夜食を現物で用意する代わりに現金を渡している会社が多くあります。この夜食手当についても、一定額までは課税されない取扱いがあり、今回の改正で金額が引き上げられました。
| 区分 | 夜食手当の非課税枠 |
|---|---|
| 改正前 | 1 回 300 円 |
| 改正後 | 1 回 650 円 |
製造業の夜勤や運送業、医療・介護の夜間勤務など、深夜業務がある会社は、食事提供制度と併せて夜食手当の金額も確認しておくとよいでしょう。300 円では現実的な夜食代をまかなえず、超過分を課税扱いにしていた会社も多いはずです。
改正の適用時期
改正後の非課税限度額は、令和 8 年 4 月 1 日以後に支給する食事等から適用されます。4 月分の食事補助から新しい限度額で判定できるため、すでに制度を運用している会社は、4 月以降の給与計算で旧限度額のまま課税していないかを確認してください。もし 4 月以降も月額 3,500 円で判定して課税していた場合は、年末調整で精算することになります。
会社が見直しておきたい対応ポイント
今回の改正を機に、食事に関する福利厚生制度を見直す会社が増えると考えられます。確認しておきたい事項を整理します。
既存の食事提供制度の内容確認
社員食堂や弁当補助の制度がある場合、まず現在の会社負担額と従業員負担額を確認します。従来の月額 3,500 円に合わせて補助額を抑えていた場合は、新しい限度額まで補助を増やす余地があります。逆に、従業員負担が 50 % 未満になっている場合は、限度額が上がっても非課税にはならないため、負担割合の見直しが先です。
夜食手当の金額確認
夜食手当を出している会社は、1 回あたりの支給額を 650 円と比べてみてください。650 円を超えて支給している場合、超えた部分は給与として課税されます。実態に合わせて金額を見直すか、超過分を課税扱いとして正しく処理するかを判断します。
規程の見直し
福利厚生規程や賃金規程に食事補助や夜食手当の金額を明記している会社は、新しい限度額に合わせた改定を検討します。金額を変えるなら、従業員への周知と就業規則の変更届も伴います。社会保険労務士と連携して進めるとスムーズです。
社会保険料への影響
食事の現物支給は、社会保険の報酬の計算にも関係します。社会保険では、都道府県ごとに定められた食事の現物給与の価額をもとに、従業員負担が 3 分の 2 以上かどうかで報酬に含めるかを判定します。所得税の要件とは基準が異なるため、所得税で非課税でも社会保険では報酬に含める必要があるケースがあります。制度を見直す際は、所得税と社会保険の両方の観点から確認しておくことをおすすめします。
食事補助の税務処理と経理上の注意点
非課税の要件を満たす食事補助は、会社側では福利厚生費として処理します。従業員負担分を給与から天引きしている場合は、天引き額を預り金や雑収入として処理し、会社負担分だけが費用になります。弁当業者への支払いの全額を福利厚生費にしたうえで、従業員負担分を雑収入で計上する方法もあります。どちらの方法でも、会社負担額が月額 7,500 円以内に収まっていることを従業員ごとに示せる集計表を残しておきます。
要件を満たさない場合や限度額を超えた場合は、会社負担額を給与として処理し、源泉徴収の対象に含めます。税務調査では、食事補助や夜食手当が給与課税の対象になっていないかが確認されることがあります。従業員負担割合が分かる資料と、月ごとの会社負担額の集計を整えておけば、指摘を受けにくくなります。
具体例で確認する非課税の判定
制度の仕組みは、実際の数字に当てはめてみると理解しやすくなります。ここでは 1 食 600 円(税抜)の弁当を月 20 日提供する会社を例に、負担の分け方によって課税がどう変わるかを見てみます。月の食事の価額は 600 円 × 20 日 = 12,000 円です。
| 負担の分け方 | 判定結果 |
|---|---|
| 従業員 6,000 円、会社 6,000 円 | 従業員負担 50 %、会社負担 7,500 円以内で非課税 |
| 従業員 4,000 円、会社 8,000 円 | 従業員負担 50 % 未満のため会社負担 8,000 円全額が課税 |
| 従業員 7,000 円、会社 5,000 円 | 従業員負担 50 % 超、会社負担 7,500 円以内で非課税 |
同じ弁当でも、負担の分け方ひとつで課税と非課税が分かれます。改正前の限度額 3,500 円のもとでは、この例で非課税にするには従業員負担を 8,500 円以上にする必要があり、補助としての魅力は限られていました。改正後は会社が半額を負担しても非課税の範囲に収まるため、従業員にとって実感しやすい福利厚生になります。
なお、1 食 800 円の弁当になると月の価額は 16,000 円となり、会社負担を半額の 8,000 円にすると限度額を超えてしまいます。この場合は会社負担を 7,500 円に抑え、従業員負担を 8,500 円とすれば非課税の要件を満たします。
当事務所の考え方
制度を新設するなら、弁当代の半額を会社が負担する「半額補助」を月額 7,500 円の範囲で設計する形をお勧めしています。1 食 700 円までの弁当なら 20 日勤務で会社負担 7,000 円に収まり、要件の判定が毎月ほぼ自動で済みます。
逆に、従業員負担なしの「全額会社負担」は、金額が小さくても全額が給与課税になるため、福利厚生としての効率が最も悪い形です。この形で運用している会社には、負担割合の変更から入るようお伝えしています。
よくある質問
食事提供の非課税枠について、当事務所によく寄せられる質問をまとめます。
Q1. 会社が全額負担で弁当を提供している場合はどうなりますか
従業員負担が 50 % 未満のため非課税の要件を満たさず、会社負担額の全額が給与として課税されます。非課税にするためには、従業員から食事の価額の半分以上を徴収する必要があります。金額が小さくても要件を外れれば課税対象です。制度を作る段階で負担割合を決めておいてください。
Q2. 現金で食事手当を支給した場合も非課税になりますか
現金で支給する食事手当は、原則として給与として課税されます。非課税の取扱いは食事の現物支給を前提としているためです。例外は深夜勤務に伴う夜食手当で、1 回 650 円までは課税されません。食事代を補助したい場合は、現金支給ではなく会社が食事を用意して従業員負担分を徴収する形にすると、非課税の対象になります。
Q3. 役員への食事提供も対象になりますか
対象になります。非課税の取扱いは役員と従業員のどちらにも適用されます。ただし、役員だけを対象にした手厚い食事補助は給与課税以外の観点でも問題になることがあるため、全従業員を対象とした制度にしておくのが望ましいでしょう。
Q4. 月によって勤務日数が変わる場合、限度額はどう判定しますか
非課税限度額は月額 7,500 円で判定します。勤務日数が多い月は会社負担額が増えるため、日額で補助額を決めている場合は、月合計が 7,500 円を超えないかを毎月確認する必要があります。1 食あたりの会社負担額を 7,500 円を最大勤務日数で割った金額以内にしておくと、月によって超過する心配がなくなります。
Q5. 4 月に改正前の限度額で課税してしまった場合はどうすればよいですか
令和 8 年 4 月 1 日以後の食事等には改正後の限度額が適用されるため、本来は非課税で処理できたものです。年末調整で年間の給与額を正しく計算し直せば精算できます。すぐに修正したい場合は、翌月以降の給与計算で調整する方法もありますので、当事務所にご相談ください。
食事補助を見直すなら 4 月分から
社員への食事提供は、従業員が食事の価額の 50 % 以上を負担し、会社負担額が非課税限度額以内であれば給与として課税されません。令和 8 年度税制改正でこの限度額が月額 3,500 円から 7,500 円へ、夜食手当の非課税枠が 1 回 300 円から 650 円へ引き上げられ、令和 8 年 4 月 1 日以後に支給する食事等から適用されています。
既存の食事補助制度がある会社は、負担割合と月額の会社負担額を確認したうえで、新しい限度額に合わせた補助内容や規程の見直しを検討してみてください。当事務所では、北九州エリアの中小企業の皆様に、福利厚生制度の税務上の取扱いや給与計算の確認をサポートしています。食事補助の制度設計や社会保険との関係でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
