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法人税の税率と計算方法を完全解説!具体例で分かる実務のポイント

2025-10-18
  • 法人税
  • 税務実務

法人税の税率体系を正しく理解する

法人税の税率は、企業の規模や所得金額によって異なる複雑な体系になっています。正確な税額計算のためには、まず自社がどの区分に該当するかを把握することが重要です。

**基本税率(原則)**は 23.2%です。これは平成 30 年 4 月 1 日以降に開始する事業年度から適用されており、資本金 1 億円超の大法人や、中小法人でも年 800 万円超の所得部分に適用されます。

一方、中小法人の軽減税率として、資本金 1 億円以下の法人には年 800 万円以下の所得について 15%の軽減税率が適用されます。この軽減措置により、中小企業の税負担が大幅に軽減されています。

ただし、中小法人であっても、以下のいずれかに該当する場合は軽減税率の適用が受けられません:

  • 資本金 5 億円以上の大法人の 100%子会社
  • 100%グループ内の複数の大法人に発行済株式の全部を保有されている法人

中小法人と大法人の税率の違いを比較

中小法人(資本金 1 億円以下)の税率

中小法人の税率は段階的な構造になっています:

  • 年 800 万円以下の所得:15%
  • 年 800 万円超の所得:23.2%

例えば、課税所得が 1,200 万円の中小法人の場合:

  • 800 万円 × 15% = 120 万円
  • 400 万円 × 23.2% = 92.8 万円
  • 合計法人税額:212.8 万円

大法人(資本金 1 億円超)の税率

大法人には軽減税率の適用がなく、すべての所得に対して一律 23.2%の税率が適用されます。

課税所得 1,200 万円の場合:

  • 1,200 万円 × 23.2% = 278.4 万円

同じ所得でも、中小法人と大法人では 65.6 万円の税額差が生じます。

法人税の課税所得の計算プロセス

法人税の計算は、単純に売上から経費を引いた利益に税率を掛けるだけではありません。会計上の利益と税務上の所得には違いがあり、その調整プロセスを理解する必要があります。

ステップ 1:会計上の当期純利益を確定する

まず、損益計算書により会計上の当期純利益(税引前)を算出します。これは会計基準に基づいて計算された利益です。

ステップ 2:別表四で税務調整を行う

会計上の利益と税務上の所得の差異を調整するのが「別表四(所得の金額の計算に関する明細書)」です。

加算項目の例:

  • 役員給与の損金不算入額(定期同額給与以外の給与など)
  • 交際費の損金不算入額(限度額超過分)
  • 寄附金の損金不算入額
  • 減価償却の償却超過額
  • 法人税・住民税(会計上は費用だが税務上は損金不算入)

減算項目の例:

  • 受取配当等の益金不算入額
  • 還付法人税等(会計上は収益だが税務上は益金不算入)
  • 減価償却の償却不足額(前期からの繰越分)

ステップ 3:課税所得を確定する

別表四での調整を経て、最終的な課税所得金額が確定します。

課税所得 = 会計上の当期純利益 + 加算項目 - 減算項目

具体的な計算例で理解を深める

例 1:中小法人の基本的な計算

株式会社 A(資本金 3,000 万円)の令和 5 年 3 月期の数値:

  • 会計上の税引前当期純利益:1,500 万円
  • 交際費の損金不算入額:100 万円
  • 減価償却超過額:50 万円
  • 受取配当益金不算入額:30 万円

課税所得の計算:

1,500万円 + 100万円 + 50万円 - 30万円 = 1,620万円

法人税額の計算:

800万円 × 15% = 120万円
820万円 × 23.2% = 190.24万円
合計:310.24万円

例 2:赤字の繰越控除がある場合

株式会社 B(資本金 5,000 万円)の当期の状況:

  • 当期の課税所得:2,000 万円
  • 前期からの繰越欠損金:600 万円

課税所得の計算:

2,000万円 - 600万円 = 1,400万円

法人税額の計算:

800万円 × 15% = 120万円
600万円 × 23.2% = 139.2万円
合計:259.2万円

繰越欠損金の控除により、600 万円分の所得が相殺され、その分の税額(約 139 万円)が軽減されます。

例 3:大法人の計算(外形標準課税対象)

株式会社 C(資本金 3 億円)の場合:

  • 課税所得:5,000 万円

法人税額の計算:

5,000万円 × 23.2% = 1,160万円

大法人の場合、これに加えて地方法人特別税(外形標準課税)として、所得以外にも資本金や付加価値(人件費等)に応じた税負担が発生します。

地方税を含めた総合的な税額計算

法人税だけでなく、実務では地方税も含めた総税額を把握する必要があります。

法人住民税の計算

法人住民税(法人税割)は、法人税額を基準に計算されます:

都道府県民税:法人税額 × 1.0% 市町村民税:法人税額 × 6.0%

例えば法人税額が 300 万円の場合:

  • 都道府県民税:300 万円 × 1.0% = 3 万円
  • 市町村民税:300 万円 × 6.0% = 18 万円
  • 合計:21 万円

法人事業税の計算

法人事業税は所得を基準に計算され、税率は所得金額により段階的に変わります(東京都の標準税率の場合):

  • 年 400 万円以下の所得:3.5%
  • 年 400 万円超 800 万円以下の所得:5.3%
  • 年 800 万円超の所得:7.0%

課税所得 1,620 万円の場合:

400万円 × 3.5% = 14万円
400万円 × 5.3% = 21.2万円
820万円 × 7.0% = 57.4万円
合計:92.6万円

地方法人税の計算

地方法人税は、法人税額の 10.3%です:

法人税額300万円 × 10.3% = 30.9万円

実務で注意すべき計算上のポイント

事業年度が 12 か月未満の場合

新設法人や決算期変更により事業年度が 12 か月に満たない場合、中小法人の軽減税率の適用基準(年 800 万円)は月割計算になります。

事業年度が 6 か月の場合:

800万円 × 6/12 = 400万円

この場合、400 万円以下の部分に 15%の軽減税率が適用されます。

中間申告による予定納税との関係

前事業年度の法人税額が 20 万円を超える場合、中間申告により予定納税が必要です。予定納税額は、原則として前期の法人税額の 1/2 です。

中間納付額は仮払法人税等として処理し、確定申告時に年税額から控除します。納付額が年税額を超える場合は還付を受けます。

税率の改正に注意

法人税率は税制改正により変更される可能性があります。特に事業年度をまたぐ改正の場合、適用税率を誤らないよう注意が必要です。

税率の適用は、事業年度の開始日時点の税率が適用されるのが原則です。例えば、令和 6 年 4 月 1 日開始の事業年度には、令和 6 年 4 月 1 日時点で施行されている税率が適用されます。

税額計算における別表の活用方法

別表一(各事業年度の所得に係る申告書)

別表一は法人税申告書の基本となる書類で、最終的な税額が記載されます。他の別表で計算した内容がここに集約されます。

別表四(所得の金額の計算に関する明細書)

会計上の利益を税務上の所得に調整するための明細書です。すべての加算・減算項目を漏れなく記載することが重要です。

別表五(一)(利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書)

資本金等の額や利益積立金額の期首・期末の残高を記載します。別表四との整合性を確認することが重要です。

別表六(所得税額の控除に関する明細書)

源泉徴収された所得税がある場合、法人税額から控除するための明細書です。預金利息や配当金の源泉所得税などが該当します。

システムを活用した効率的な税額計算

会計ソフトの税務機能の活用

現在の会計ソフトの多くは、法人税の申告書作成機能を備えています。会計データから自動的に別表四の調整項目を抽出し、税額計算まで行うことができます。

ただし、システムの自動計算に頼りすぎず、計算ロジックを理解した上で、結果の妥当性を検証することが重要です。

電子申告(e-Tax)の利用

法人税の電子申告は、令和 2 年 4 月以降、大法人に義務化されています。中小法人でも、税務署への訪問が不要になる、受付時間が長いなどのメリットがあります。

電子申告を利用する場合も、計算ロジック自体は変わりませんが、申告書の作成から提出までがスムーズに行えます。

まとめ:正確な税額計算が企業経営の基盤

法人税の税率と計算方法を正確に理解することは、企業の税務コンプライアンスの基本です。特に中小法人の軽減税率は大きな節税効果をもたらすため、適用要件を正しく把握することが重要です。

実務では、会計上の利益と税務上の所得の調整、別表の作成、地方税を含めた総税額の計算など、多くのステップを正確にこなす必要があります。これらのプロセスを理解し、適切なチェック体制を構築することで、税務リスクを最小化できます。

税制は毎年改正されるため、最新の税率や計算方法については、税理士など専門家のサポートを受けながら、常に正確な情報に基づいた処理を行うことが不可欠です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税額計算や申告については、必ず最新の法令を確認し、税理士等の専門家にご相談ください。

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