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法人税の勘定科目を基礎から解説!決算・申告の流れと実務処理
2025-10-19
- 法人税
- 経理実務
法人税の勘定科目の全体像を理解する
法人税の会計処理では、事業年度を通じて複数の勘定科目を使い分けます。期中の中間納付から決算時の税額計上、最終的な納付まで、それぞれの段階で適切な勘定科目を選択することが重要です。
法人税に関する主要な勘定科目は以下の通りです:
資産科目
- 仮払法人税等(中間納付時)
- 未収還付法人税等(還付が発生する場合)
- 繰延税金資産(税効果会計適用時)
負債科目
- 未払法人税等(確定申告後の未納付税額)
- 繰延税金負債(税効果会計適用時)
費用科目
- 法人税、住民税及び事業税(損益計算書の税金費用)
- 法人税等調整額(税効果会計による調整)
- 過年度法人税等(修正申告等の場合)
これらの科目を正しく使い分けることで、企業の税負担を適切に財務諸表に反映できます。
期中の中間納付における勘定科目の処理
中間申告による納付
事業年度の中間時点で、前期実績に基づく中間申告を行う場合、納付額は「仮払法人税等」として資産計上します。
中間納付額 150 万円を普通預金から納付した場合:
借方:仮払法人税等 1,500,000円
貸方:普通預金 1,500,000円
仮払法人税等は、期末の確定申告時に年税額から控除される前払い的な性格を持つため、資産科目として処理します。
予定納税の場合
中間申告に代えて、前期の法人税額の半分を予定納税する方法もあります。この場合も仮払法人税等を使用します。
前期法人税額 300 万円の場合の予定納税:
借方:仮払法人税等 1,500,000円
貸方:普通預金 1,500,000円
前期税額の 1/2 である 150 万円を納付します。
源泉徴収された所得税の処理
預金利息や配当金を受け取る際に源泉徴収された所得税は、法人税から控除できます。この場合「仮払法人税等」または「仮払源泉所得税」として処理します。
預金利息 1,000 円を受取り、所得税 153 円が源泉徴収された場合:
借方:普通預金 847円
借方:仮払法人税等 153円
貸方:受取利息 1,000円
決算時の法人税等の計上処理
確定税額の計上
決算において、当期の法人税等が確定した際の処理が最も重要です。
当期の法人税等が 300 万円と確定し、中間納付 150 万円を控除した残額 150 万円を未払計上する場合:
借方:法人税、住民税及び事業税 3,000,000円
貸方:仮払法人税等 1,500,000円
貸方:未払法人税等 1,500,000円
この仕訳により、損益計算書には当期の税負担 300 万円が費用計上され、貸借対照表には未納付額 150 万円が負債計上されます。
地方税を含めた総合的な処理
実務では、法人税だけでなく、法人住民税、法人事業税、地方法人税もまとめて処理します。
内訳:
- 法人税:200 万円
- 地方法人税:20 万円
- 法人住民税:14 万円
- 法人事業税:66 万円
- 合計:300 万円
これらすべてを「法人税、住民税及び事業税」として一括計上するのが一般的です。
源泉所得税の控除処理
期中に源泉徴収された所得税は、確定申告時に法人税から控除します。
源泉所得税の仮払額が 5 万円ある場合:
借方:法人税、住民税及び事業税 3,000,000円
貸方:仮払法人税等(中間納付) 1,500,000円
貸方:仮払法人税等(源泉税) 50,000円
貸方:未払法人税等 1,450,000円
確定申告後の納付処理
決算後、確定申告書を提出し、未払法人税等を納付します。
未払法人税等 150 万円を納付した場合:
借方:未払法人税等 1,500,000円
貸方:普通預金 1,500,000円
この仕訳により、貸借対照表の未払法人税等がゼロになります。
延納制度を利用する場合
法人税額が 10 万円を超える場合、その半額を 2 か月以内に延納できる制度があります。
法人税 200 万円のうち、100 万円を延納する場合:
決算時:
借方:法人税、住民税及び事業税 2,000,000円
貸方:未払法人税等 2,000,000円
第 1 期分納付時:
借方:未払法人税等 1,000,000円
貸方:普通預金 1,000,000円
延納期限納付時:
借方:未払法人税等 1,000,000円
貸方:普通預金 1,000,000円
還付が発生する場合の勘定科目処理
業績悪化による還付
当期の税額が中間納付額を下回る場合、差額が還付されます。
当期の法人税等が 80 万円、中間納付 150 万円の場合:
借方:法人税、住民税及び事業税 800,000円
借方:未収還付法人税等 700,000円
貸方:仮払法人税等 1,500,000円
未収還付法人税等は流動資産として表示し、後日還付を受けます。
還付金の入金時
借方:普通預金 700,000円
貸方:未収還付法人税等 700,000円
還付加算金の処理
還付金には利息相当額として還付加算金が付くことがあります。還付加算金は収益(雑収入)として処理します。
還付加算金 1 万円が付いた場合:
借方:普通預金 710,000円
貸方:未収還付法人税等 700,000円
貸方:雑収入 10,000円
修正申告・更正による追加納付の処理
過年度の修正申告
税務調査等により過年度分の法人税を追加納付する場合、「過年度法人税等」として処理します。
前期分の法人税 50 万円を追加納付する場合:
借方:過年度法人税等 500,000円
貸方:現金預金 500,000円
過年度法人税等は、金額が重要な場合、特別損失として表示することもあります。
加算税・延滞税の処理
修正申告に伴う加算税や延滞税は、租税公課として処理し、損金不算入となります。
過少申告加算税 5 万円を納付した場合:
借方:租税公課 50,000円
貸方:現金預金 50,000円
会計上は費用計上しますが、税務上は損金算入できないため、別表四で加算調整が必要です。
税効果会計を適用する場合の勘定科目
繰延税金資産の計上
将来減算一時差異が発生し、繰延税金資産を計上する場合:
貸倒引当金の繰入超過額 100 万円(税率 30%):
借方:繰延税金資産 300,000円
貸方:法人税等調整額 300,000円
繰延税金資産は固定資産(投資その他の資産)に表示します。
繰延税金負債の計上
将来加算一時差異が発生し、繰延税金負債を計上する場合:
圧縮記帳による差異 200 万円(税率 30%):
借方:法人税等調整額 600,000円
貸方:繰延税金負債 600,000円
繰延税金負債は固定負債に表示します。
一時差異の解消時
将来、一時差異が解消する際には、逆仕訳を行います。
貸倒引当金の認容額が発生した場合:
借方:法人税等調整額 300,000円
貸方:繰延税金資産 300,000円
損益計算書での表示方法
損益計算書では、法人税等は税引前当期純利益の次に表示されます。
税引前当期純利益 10,000,000円
法人税、住民税及び事業税 3,000,000円
法人税等調整額 △200,000円
当期純利益 7,200,000円
法人税等調整額がマイナス表示の場合、税負担を軽減する効果があります。
貸借対照表での表示方法
貸借対照表では、法人税関連の科目は以下のように表示されます:
資産の部
- 流動資産
- 未収還付法人税等
- 固定資産(投資その他の資産)
- 繰延税金資産
負債の部
- 流動負債
- 未払法人税等
- 固定負債
- 繰延税金負債
期中の仮払法人税等は、決算時にすべて相殺されるため、通常は貸借対照表に残りません。
実務での注意点とチェックポイント
勘定科目の整合性確認
会計ソフトで自動仕訳される場合でも、以下の整合性を必ず確認します:
- 損益計算書の法人税等 = 法人税申告書の年税額
- 貸借対照表の未払法人税等 = 年税額 - 既納付額
- 繰延税金資産・負債の増減 = 法人税等調整額
月次決算での概算計上
月次決算を行う企業では、法人税等を概算で計上することがあります。
月次で概算税額 25 万円を計上する場合:
借方:法人税、住民税及び事業税 250,000円
貸方:未払法人税等 250,000円
年度決算時に実際の税額と調整します。
四半期決算での簡便処理
上場企業の四半期決算では、見積実効税率による簡便的な方法が認められています。ただし、年度決算では必ず実際の税額計算に基づく処理が必要です。
まとめ:体系的な理解で正確な処理を実現
法人税の勘定科目は、事業年度を通じて複数の場面で使い分けが必要です。中間納付時の仮払法人税等、決算時の法人税等と未払法人税等、税効果会計の繰延税金資産・負債など、それぞれの科目の性質と使用タイミングを正しく理解することが重要です。
実務では、会計ソフトの自動化機能を活用しつつも、仕訳の意味を理解し、税務申告書との整合性を確認する習慣をつけることで、正確な財務報告が可能になります。疑問点がある場合は、税理士など専門家に相談し、適切な処理を行いましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な会計処理については、顧問税理士等の専門家にご相談ください。
