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経理の基礎知識を完全ガイド!初心者が押さえるべき7つのポイント
2025-10-19
- 経理
- 税務実務
経理の基礎知識とは
経理の基礎知識とは、会社のお金の流れを正確に記録・管理するために必要な知識のことです。簿記の原理、仕訳のルール、決算書の構造、税務の基本などが含まれます。
経理の基礎知識7つのポイント:
- 簿記の基本原理
- 仕訳のルール
- 勘定科目の理解
- 決算書の読み方
- 会計期間と決算
- 税務の基礎
- 経理業務の流れ
これらを理解することで、経理業務の全体像が見えてきます。
1. 簿記の基本原理
簿記とは
簿記とは、会社の財産や取引を帳簿に記録する技術です。すべての経理業務の基礎となります。
簿記の目的:
- 会社の財産や借金の状況を把握する(財政状態)
- 一定期間の儲け(利益)を計算する(経営成績)
複式簿記の原理
経理では「複式簿記」という方法を使います。複式簿記では、すべての取引を「借方」と「貸方」の2つの側面から記録します。
複式簿記の基本ルール:
借方(左側) = 貸方(右側)
すべての取引は、必ず借方と貸方の金額が一致します。
例:現金100万円で商品を仕入れた
借方:仕入 1,000,000円 / 貸方:現金 1,000,000円
左側(借方)の金額と右側(貸方)の金額が一致しています。
貸借対照表と損益計算書
簿記により、以下の2つの決算書が作成されます。
貸借対照表(B/S):
- 会社の財産や借金の状況を表す
- ある時点での財政状態(スナップショット)
損益計算書(P/L):
- 一定期間の売上と費用、利益を表す
- 期間の経営成績(動画)
2. 仕訳のルール
仕訳とは
仕訳とは、取引を借方と貸方に分けて記録することです。経理業務の最も基本的な作業です。
5つの要素と仕訳のルール
会計には5つの要素があり、それぞれに仕訳のルールがあります。
5つの要素:
- 資産(現金、預金、売掛金、建物など)
- 負債(借入金、買掛金など)
- 純資産(資本金、利益剰余金など)
- 収益(売上など)
- 費用(仕入、給料、家賃など)
仕訳のルール:
借方(増加) 貸方(減少)
─────────────────────────────────
資産の増加 資産の減少
負債の減少 負債の増加
純資産の減少 純資産の増加
費用の発生 収益の発生
仕訳の具体例
例1:現金100万円で商品を仕入れた
借方:仕入(費用)1,000,000円 / 貸方:現金(資産)1,000,000円
- 費用が発生 → 借方
- 資産(現金)が減少 → 貸方
例2:商品を150万円で販売し、掛けとした
借方:売掛金(資産)1,500,000円 / 貸方:売上(収益)1,500,000円
- 資産(売掛金)が増加 → 借方
- 収益が発生 → 貸方
例3:銀行から300万円借り入れた
借方:普通預金(資産)3,000,000円 / 貸方:借入金(負債)3,000,000円
- 資産(普通預金)が増加 → 借方
- 負債(借入金)が増加 → 貸方
3. 勘定科目の理解
勘定科目とは
勘定科目とは、取引の内容を分類するための名前です。仕訳をする際に使用します。
主な勘定科目一覧
資産の勘定科目:
- 現金:手元にある現金
- 普通預金:銀行の普通預金口座
- 売掛金:商品を販売したが、まだ代金を受け取っていない
- 商品:販売目的で保有している商品
- 建物:事業用の建物
- 車両運搬具:事業用の車
負債の勘定科目:
- 買掛金:商品を仕入れたが、まだ代金を支払っていない
- 借入金:銀行などから借りたお金
- 未払金:商品以外のもの(備品など)を購入したが、まだ支払っていない
純資産の勘定科目:
- 資本金:会社設立時に出資されたお金
- 利益剰余金:過去の利益の累積
収益の勘定科目:
- 売上:商品やサービスを販売した収益
- 受取利息:預金の利息収入
- 雑収入:その他の収入
費用の勘定科目:
- 仕入:商品の仕入れ
- 給料:従業員への給与
- 地代家賃:事務所や店舗の家賃
- 水道光熱費:電気、ガス、水道の料金
- 通信費:電話、インターネット代
- 消耗品費:事務用品など
- 旅費交通費:出張費、交通費
- 租税公課:税金(固定資産税、印紙税など)
4. 決算書の読み方
貸借対照表(B/S)の構造
貸借対照表は、会社の財産(資産)と、その資産を誰が提供したか(負債・純資産)を表します。
貸借対照表の構造:
資産の部 負債の部
───────────────── ─────────────────
流動資産 流動負債
現金 買掛金
売掛金 未払金
商品
固定負債
固定資産 借入金
建物
車両 純資産の部
資本金
利益剰余金
───────────────── ─────────────────
資産合計 = 負債・純資産合計
重要な等式:
資産 = 負債 + 純資産
この等式は常に成り立ちます(バランスシート)。
損益計算書(P/L)の構造
損益計算書は、一定期間の売上、費用、利益を表します。
損益計算書の構造:
売上高 10,000,000円
売上原価 6,000,000円
─────────────────────────────────────
売上総利益(粗利) 4,000,000円
販売費及び一般管理費 2,500,000円
給料 1,500,000円
地代家賃 500,000円
水道光熱費 200,000円
その他 300,000円
─────────────────────────────────────
営業利益 1,500,000円
営業外収益 50,000円
営業外費用 100,000円
─────────────────────────────────────
経常利益 1,450,000円
特別利益 0円
特別損失 0円
─────────────────────────────────────
税引前当期純利益 1,450,000円
法人税等 435,000円
─────────────────────────────────────
当期純利益 1,015,000円
利益の5段階:
- 売上総利益:本業の粗利益
- 営業利益:本業の利益
- 経常利益:通常の利益(経常的な活動の利益)
- 税引前当期純利益:税金を引く前の利益
- 当期純利益:最終的な利益
5. 会計期間と決算
会計期間とは
会計期間とは、会社の業績を計算する一定の期間のことです。通常は1年間です。
例:
- 会計期間:4月1日~翌年3月31日(1年間)
- この期間の売上と費用を集計し、利益を計算
決算とは
決算とは、会計期間の終わりに、1年間の取引を集計し、決算書を作成する作業です。
決算の流れ:
- すべての取引を仕訳で記録
- 総勘定元帳に転記
- 決算整理仕訳(減価償却、棚卸など)
- 試算表の作成
- 決算書(貸借対照表、損益計算書)の作成
月次決算
年次決算だけでなく、毎月末に「月次決算」を行う会社も多いです。
月次決算の目的:
- 毎月の業績を把握する
- 経営判断を早めに行う
- 年次決算をスムーズに進める
6. 税務の基礎
会社が関わる主な税金
経理担当者は、以下の税金を理解する必要があります。
法人税:
- 会社の利益に対して課される税金
- 実効税率:約30%(中小企業は軽減税率あり)
- 決算後、2か月以内に申告・納付
消費税:
- 商品やサービスの販売にかかる税金
- 課税事業者は、預かった消費税から支払った消費税を差し引いて納付
- 決算後、2か月以内に申告・納付(原則)
源泉所得税:
- 従業員の給与から天引きする所得税
- 毎月10日までに納付(納期の特例あり)
住民税:
- 従業員の給与から天引きする地方税
- 毎月10日までに納付
社会保険料:
- 健康保険、厚生年金保険
- 会社と従業員が折半して負担
- 毎月末日までに納付
消費税の仕訳例
商品を11,000円(税込)で販売した場合:
借方:現金 11,000円 / 貸方:売上 10,000円
/ 貸方:仮受消費税 1,000円
商品を5,500円(税込)で仕入れた場合:
借方:仕入 5,000円 / 貸方:現金 5,500円
借方:仮払消費税 500円 /
決算時に、仮受消費税と仮払消費税の差額を納付します。
7. 経理業務の流れ
日次業務の流れ
毎日の業務:
-
現金・預金の確認
- 現金の実際残高と帳簿残高を照合
- 銀行口座の入出金を確認
-
仕訳伝票の起票
- 領収書や請求書をもとに仕訳を作成
- 会計ソフトに入力
-
現金出納帳の記帳
- 現金の入出金を記録
-
請求書の発行
- 売上が発生したら請求書を作成・送付
月次業務の流れ
月末・月初の業務:
-
月次決算
- 1か月間の取引を集計
- 月次試算表を作成
- 経営者に報告
-
売掛金・買掛金の管理
- 売掛金の回収状況を確認
- 買掛金の支払いを実行
-
給与計算
- 勤怠データをもとに給与を計算
- 源泉所得税、社会保険料を控除
- 給与明細を発行
- 銀行振込を実行
-
社会保険・税金の納付
- 源泉所得税の納付(翌月10日まで)
- 住民税の納付(翌月10日まで)
- 社会保険料の納付(月末まで)
年次業務の流れ
年に1回の業務:
-
年次決算
- 1年間の取引をすべて集計
- 決算整理仕訳(減価償却、棚卸など)
- 貸借対照表、損益計算書を作成
-
税務申告
- 法人税の確定申告(決算後2か月以内)
- 消費税の確定申告(決算後2か月以内)
- 地方税の申告
-
年末調整
- 従業員の所得税の年末調整(12月)
- 源泉徴収票の発行(翌年1月31日まで)
- 法定調書合計表の提出(翌年1月31日まで)
経理初心者が押さえるべき帳簿
主要簿
仕訳帳:
- すべての取引を日付順に記録する帳簿
- 仕訳の記録
総勘定元帳:
- 仕訳帳の内容を勘定科目ごとに転記する帳簿
- 各勘定科目の残高を把握
補助簿
現金出納帳:
- 現金の入出金を記録
預金出納帳:
- 銀行口座ごとの入出金を記録
売掛金元帳:
- 取引先ごとの売掛金を管理
買掛金元帳:
- 取引先ごとの買掛金を管理
固定資産台帳:
- 建物、車両などの固定資産を管理
経理に必要な資格
日商簿記検定
経理に最も役立つ資格が「日商簿記検定」です。
簿記3級:
- 経理の基礎を理解できるレベル
- 個人商店の経理
- 独学で2~3か月で取得可能
簿記2級:
- 実務で通用するレベル
- 株式会社の経理
- 商業簿記と工業簿記(原価計算)
- 経理職の求人で「簿記2級以上」が多い
簿記1級:
- 高度な会計知識
- 経理責任者、税理士・公認会計士を目指す人向け
その他の資格
ビジネス会計検定:
- 決算書の読み方、分析力を習得
給与計算実務能力検定:
- 給与計算の専門知識
税理士:
- 税務の専門家(5科目合格が必要)
経理業務でよく使うツール
会計ソフト
主な会計ソフト:
- 弥生会計:シェアNo.1、初心者向け
- freee:クラウド型、自動仕訳機能
- マネーフォワード クラウド会計:クラウド型
- 勘定奉行:大企業向け
Excel
経理業務では、Excelを頻繁に使用します。
必要なスキル:
- 基本的な関数(SUM, VLOOKUP, IF)
- ピボットテーブル
- グラフ作成
- データの並べ替え・フィルター
経理初心者が注意すべきポイント
証憑の保管
証憑(しょうひょう)とは: 取引を証明する書類(領収書、請求書、契約書など)
保管期間:
- 法人:7年間(欠損金がある場合は10年間)
- 電子帳簿保存法に従って電子保存も可能
期限の厳守
主な期限:
- 法人税・消費税の申告:決算後2か月以内
- 源泉所得税の納付:翌月10日まで
- 年末調整:12月、源泉徴収票は翌年1月31日まで
期限を守らないと、罰則(延滞税、無申告加算税)が課されます。
正確性の重視
経理のミスは、会社の財務状況の誤認識につながります。以下を心がけましょう:
- 仕訳の金額を必ず確認
- 借方と貸方の金額が一致しているか確認
- 現金・預金の残高を毎日照合
- ダブルチェック(他の人に確認してもらう)
まとめ:経理の基礎を身につけて実務へ
経理の基礎知識は、簿記の原理、仕訳のルール、勘定科目の理解、決算書の読み方、税務の基礎など多岐にわたります。これらの知識は、実務経験と資格学習を通じて習得できます。
まずは日商簿記3級の学習から始め、仕訳のルールや基本的な勘定科目を理解しましょう。その後、実務で日次・月次・年次業務を経験しながら、簿記2級の取得を目指すことをお勧めします。
経理は正確性が最も重視される仕事ですが、会社のお金の流れを理解できるやりがいのある職種です。基礎知識をしっかり身につけ、着実にスキルアップしていきましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な経理実務については、各企業の方針や会計基準に従ってください。
