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法人税申告と決算申告の完全ガイド|北九州の税理士が徹底解説
2025-10-19
- 法人税
- 税務実務
法人税申告とは
法人税申告とは、法人が1事業年度の所得と法人税額を計算し、税務署に申告・納税する手続きです。株式会社、合同会社、有限会社など、全ての法人に申告義務があります。
法人税申告は、個人事業主の確定申告と同様の手続きですが、法人特有のルールや書類があり、より複雑です。赤字の場合でも申告が必要であり、適切な申告を行わないとペナルティが課される可能性があります。
法人税申告が必要な法人
- 株式会社
- 合同会社(LLC)
- 有限会社
- 一般社団法人・一般財団法人
- NPO法人
- 医療法人
申告義務がある理由
- 納税義務の履行
- 所得の透明性の確保
- 欠損金の繰越のため(赤字でも申告が必要)
- 各種特例の適用のため
決算申告の流れ
決算申告は、決算日から2か月以内(例外的に3か月以内)に完了する必要があります。以下の流れで進めます。
ステップ1:決算整理
決算日が到来したら、まず決算整理を行います。
決算整理の主な内容
- 棚卸資産の実地棚卸
- 減価償却費の計算
- 貸倒引当金の計上
- 未払費用・前払費用の計上
- 引当金の計上
- 税金の見積計上
棚卸資産の実地棚卸
決算日時点の在庫を実際に数えて、棚卸資産の金額を確定します。これにより、売上原価が確定します。
減価償却費の計算
固定資産(建物、機械、車両など)の減価償却費を計算し、費用として計上します。
例
建物(取得価額3,000万円、耐用年数30年、定額法)
年間減価償却費 = 3,000万円 ÷ 30年 = 100万円
ステップ2:決算書の作成
決算整理が終わったら、決算書を作成します。
法人が作成する決算書
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 株主資本等変動計算書
- 個別注記表
貸借対照表
決算日時点の資産、負債、純資産を表した書類です。会社の財政状態を示します。
損益計算書
1事業年度の収益、費用、利益を表した書類です。会社の経営成績を示します。
ステップ3:法人税の計算
決算書を基に、法人税を計算します。
法人税の計算の流れ
- 会計上の利益を確定
- 税務調整を行う
- 課税所得を計算
- 税率を適用して法人税額を計算
- 税額控除を差し引く
- 納付税額を確定
税務調整とは
会計上の利益と税務上の所得は異なることがあります。税務調整により、会計上の利益を税務上の所得に修正します。
主な税務調整項目
- 交際費の損金不算入額
- 減価償却の限度超過額
- 役員賞与の損金不算入額
- 寄附金の損金不算入額
- 貸倒引当金の繰入限度超過額
例
会計上の利益:1,000万円 交際費の損金不算入額:50万円 減価償却の限度超過額:30万円
課税所得 = 1,000万円 + 50万円 + 30万円 = 1,080万円
法人税の税率
中小法人の税率(資本金1億円以下)
- 年800万円以下の部分:15%
- 年800万円超の部分:23.2%
例
課税所得:1,080万円
法人税額 = 800万円 × 15% + 280万円 × 23.2%
= 120万円 + 64.96万円
= 184.96万円
ステップ4:地方税の計算
法人税のほかに、地方税(法人住民税、法人事業税)も計算します。
法人住民税
都道府県民税と市町村民税からなります。法人税額を基に計算します。
法人事業税
所得を基に計算します。税率は都道府県によって異なります。
北九州市の場合
- 福岡県法人事業税
- 福岡県民税
- 北九州市民税
実効税率
法人税、住民税、事業税を合わせた実効税率は、中小法人で約33%程度です。
ステップ5:申告書の作成
法人税申告書を作成します。法人税申告書は、非常に複雑で、多数の別表から構成されます。
主な別表
- 別表一:各事業年度の所得に係る申告書
- 別表二:同族会社等の判定に関する明細書
- 別表四:所得の金額の計算に関する明細書
- 別表五:利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書
- 別表七:欠損金又は災害損失金の損金算入に関する明細書
- 別表十五:交際費等の損金算入に関する明細書
- 別表十六:減価償却資産の償却額の計算に関する明細書
地方税の申告書
法人税申告書とは別に、都道府県税と市町村税の申告書も作成します。
ステップ6:申告書の提出と納税
作成した申告書を税務署、都道府県税事務所、市町村役場に提出し、税金を納付します。
提出先(北九州市の場合)
- 法人税:小倉税務署または八幡税務署
- 法人県民税・事業税:福岡県北九州県税事務所
- 法人市民税:北九州市役所(各区役所でも可)
電子申告(e-Tax、eLTAX)
現在は、電子申告が普及しており、インターネットで申告書を提出できます。
メリット
- 税務署に行く必要がない
- 複数の提出先に一括で申告できる
- 提出の証明が残る
- 還付金の受取が早い
納税方法
- 金融機関での納付
- コンビニ納付(30万円以下)
- ダイレクト納付(電子納税)
- クレジットカード納付
法人税申告の期限
法人税申告の期限は、決算日の翌日から2か月以内です。
例
決算日が3月31日の場合、申告期限は5月31日です。
期限の延長
一定の要件を満たす場合、申告期限を1か月延長できます。
延長の要件
- 定款で定時株主総会の開催時期を決算日から3か月以内としている
- 税務署に「申告期限の延長の特例の申請書」を提出
延長のメリット
- 決算作業に余裕ができる
- 株主総会後に申告できる
延長のデメリット
- 延長期間中の利子税がかかる
- 納税は2か月以内に必要(延長されるのは申告のみ)
期限を過ぎた場合のペナルティ
申告期限を過ぎると、以下のペナルティが課されます。
無申告加算税
申告期限までに申告しなかった場合、無申告加算税が課されます。
税率
- 納付すべき税額の50万円まで:15%
- 50万円を超える部分:20%
- 税務調査の前に自主的に申告した場合:5%
例
納付すべき法人税額:100万円 期限後に申告した場合
無申告加算税 = 50万円 × 15% + 50万円 × 20% = 17.5万円
延滞税
納付期限までに納税しなかった場合、延滞税が課されます。
税率(2024年の場合)
- 納期限の翌日から2か月以内:年2.4%
- 納期限の翌日から2か月超:年8.7%
例
納付すべき法人税額:100万円 納期限から3か月遅れて納付した場合
2か月分の延滞税 = 100万円 × 2.4% × 2か月/12か月 = 4,000円
1か月分の延滞税 = 100万円 × 8.7% × 1か月/12か月 = 7,250円
合計延滞税 = 11,250円
重加算税
悪質な仮装・隠蔽があった場合、重加算税が課されます。
税率
- 無申告の場合:40%
- 過少申告の場合:35%
法人税申告に必要な書類
法人税申告には、多くの書類が必要です。
申告書類
法人税申告書
- 別表一〜別表十八など
地方税申告書
- 法人県民税・事業税申告書
- 法人市民税申告書
添付書類
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 株主資本等変動計算書
- 個別注記表
- 勘定科目内訳明細書
- 法人事業概況説明書
保存すべき帳簿書類
会計帳簿
- 総勘定元帳
- 仕訳帳
- 現金出納帳
- 預金出納帳
- 売掛帳
- 買掛帳
- 固定資産台帳
証憑書類
- 請求書
- 領収書
- 契約書
- 通帳
保存期間
- 原則7年間(欠損金がある場合は10年間)
北九州での法人税申告
北九州市内で法人税申告を行う場合の具体的な流れをご説明します。
管轄税務署
小倉税務署
- 管轄地域:小倉北区、小倉南区、門司区
八幡税務署
- 管轄地域:八幡東区、八幡西区、戸畑区、若松区
北九州市内での申告の特徴
産業構造
北九州市は、製造業、卸売業、小売業など、多様な業種の中小企業が多い地域です。業種によって、適用できる特例や注意点が異なります。
税理士への依頼
法人税申告は複雑なため、多くの企業が税理士に依頼しています。北九州市内には、法人税申告に強い税理士事務所が多数あります。
法人確定申告を税理士に代行依頼するメリット
法人税申告は専門性が高く、税理士に依頼することが一般的です。
メリット1:正確な申告
税理士は税務の専門家として、最新の税法に基づいて正確な申告書を作成します。
税理士に依頼しないリスク
- 計算ミスで過大納付または過少申告
- 適用できる特例を見逃し、税金を多く払う
- 税務調査で指摘を受ける
メリット2:節税対策の提案
税理士は、適法な範囲で節税対策を提案します。
主な節税対策
- 減価償却方法の選択
- 交際費の適切な処理
- 役員報酬の最適化
- 各種特例の適用
メリット3:時間の節約
申告書の作成には、多大な時間と労力がかかります。税理士に依頼することで、経営者は本業に専念できます。
メリット4:税務調査への対応
税理士が申告書を作成していれば、税務調査の際に税理士が立ち会い、対応してくれます。
メリット5:経営アドバイス
税理士は、決算書を分析し、経営改善のアドバイスを提供します。
税理士に依頼する際の費用
税理士への報酬は、会社の規模や取引量によって異なります。
顧問契約の場合
月額顧問料
- 年商1,000万円未満:月額2〜3万円
- 年商3,000万円未満:月額3〜5万円
- 年商5,000万円未満:月額4〜6万円
- 年商1億円未満:月額5〜10万円
- 年商1億円以上:月額10万円〜
決算申告料
- 月額顧問料の4〜6か月分程度
例
月額顧問料5万円の場合、決算申告料は20〜30万円程度
年間合計
月額顧問料:5万円 × 12か月 = 60万円
決算申告料:25万円
年間合計:85万円
スポット契約の場合
顧問契約をせず、決算申告のみを依頼することもできます。
決算申告料(スポット)
- 年商1,000万円未満:10〜15万円
- 年商3,000万円未満:15〜25万円
- 年商5,000万円未満:25〜35万円
- 年商1億円未満:35〜50万円
注意点
- 記帳が整っていることが前提
- 日常的な税務相談は受けられない
- 節税対策は限定的
法人税申告でよくある質問
Q1:赤字でも申告は必要ですか
A:必要です
赤字(欠損)の場合でも、法人税申告は必須です。申告することで、欠損金を翌期以降に繰り越し、将来の黒字と相殺できます。
Q2:個人事業主から法人化しました。何が変わりますか
A:申告手続きが大きく変わります
主な変更点
- 確定申告から法人税申告へ
- 事業年度を自由に設定できる
- 消費税の申告が2年間免除される可能性
- 社会保険への加入義務
- 役員報酬の設定
Q3:決算日は変更できますか
A:変更できます
株主総会で定款を変更すれば、決算日を変更できます。
決算日変更のメリット
- 繁忙期を避けて決算作業ができる
- 節税対策のタイミングを調整できる
Q4:消費税も同時に申告しますか
A:原則として同時に申告します
法人税申告と消費税申告は、通常同じタイミングで行います。消費税の課税事業者は、法人税申告書と併せて消費税申告書を提出します。
Q5:電子申告は義務ですか
A:資本金1億円超の法人は義務です
資本金1億円を超える法人は、電子申告が義務化されています。それ以外の法人は任意ですが、電子申告を推奨します。
決算対策のポイント
決算前に行う節税対策については、次の記事で詳しく解説しますが、ここでは簡単にポイントをご紹介します。
決算前にできる対策
- 未払費用の計上
- 不要な固定資産の除却
- 在庫の見直し
- 短期前払費用の活用
- 少額減価償却資産の購入
計画的な対策が重要
節税対策は、決算日直前では選択肢が限られます。日頃から税理士と相談し、計画的に進めることが重要です。
まとめ
法人税申告は、決算日から2か月以内に、法人税・住民税・事業税を計算し、申告・納税する手続きです。決算整理、決算書の作成、税金の計算、申告書の作成など、多くのステップがあり、専門的な知識が必要です。
期限を守らないと、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課されます。赤字でも申告が必要であり、正確な申告を行うことが重要です。
北九州で法人税申告をお考えの企業は、地域の事情に精通した税理士に依頼することで、正確な申告、節税対策、経営アドバイスなど、多くのメリットを得られます。決算申告や確定申告の代行をお考えの方は、早めに税理士に相談することをお勧めします。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な法人税申告については、税理士にご相談ください。
