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年末調整の保険料控除を完全ガイド!申告書の書き方と控除額の計算
2025-11-02
- 年末調整
- 所得税
年末調整における保険料控除とは
年末調整の保険料控除とは、従業員が支払った保険料を所得から差し引くことで、所得税・住民税の負担を軽減する制度です。会社が年末調整の際に従業員から申告を受け、給与から天引きした所得税の過不足を精算します。
保険料控除は、国民の生活保障や資産形成を支援するための政策的配慮から設けられた制度です。適切に申告することで、年間数万円の税負担軽減につながることもあります。
年末調整で申告できる主な保険料控除:
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
生命保険料控除の仕組みと種類
3つの区分と控除額
生命保険料控除は、以下の3つに区分されます:
- 一般生命保険料控除 - 死亡保険、養老保険など
- 介護医療保険料控除 - 医療保険、がん保険など
- 個人年金保険料控除 - 個人年金保険
それぞれの区分で最大4万円、合計で最大12万円の所得控除が受けられます。
新制度と旧制度の違い
平成24年1月1日以降に契約した保険は「新制度」、それ以前の契約は「旧制度」として区分されます。
新制度の控除額(各区分):
年間払込保険料 控除額
20,000円以下 全額
20,001~40,000円 払込保険料×1/2 + 10,000円
40,001~80,000円 払込保険料×1/4 + 20,000円
80,001円以上 40,000円(上限)
旧制度の控除額(一般・年金の各区分):
年間払込保険料 控除額
25,000円以下 全額
25,001~50,000円 払込保険料×1/2 + 12,500円
50,001~100,000円 払込保険料×1/4 + 25,000円
100,001円以上 50,000円(上限)
新旧両方の契約がある場合
同じ区分内で新旧両方の契約がある場合、以下のいずれかを選択できます:
- 新制度のみ適用 - 新契約の保険料のみで計算(上限4万円)
- 旧制度のみ適用 - 旧契約の保険料のみで計算(上限5万円)
- 新旧併用 - 両方を合算して計算(上限4万円)
一般的には、最も控除額が大きくなる方法を選択します。
生命保険料控除の計算例
新制度のみの場合
前提条件:
- 一般生命保険料:年間60,000円
- 介護医療保険料:年間50,000円
- 個人年金保険料:年間90,000円
計算:
一般生命保険料控除:
60,000円 × 1/4 + 20,000円 = 35,000円
介護医療保険料控除:
50,000円 × 1/4 + 20,000円 = 32,500円
個人年金保険料控除:
80,001円以上 → 40,000円(上限)
合計控除額:
35,000円 + 32,500円 + 40,000円 = 107,500円
新旧併用の場合
前提条件:
- 一般生命保険料(旧):年間60,000円
- 一般生命保険料(新):年間30,000円
計算:
旧契約のみの場合:
60,000円 × 1/4 + 25,000円 = 40,000円
新契約のみの場合:
30,000円 × 1/2 + 10,000円 = 25,000円
新旧併用の場合:
旧:60,000円 × 1/4 + 25,000円 = 40,000円
新:30,000円 × 1/2 + 10,000円 = 25,000円
合計:40,000円 + 25,000円 = 65,000円 → 40,000円(上限)
最も有利な選択: 旧契約のみで40,000円
地震保険料控除の仕組み
控除対象となる保険
地震保険料控除の対象は、地震保険料のみです。火災保険料単独では控除対象外ですが、火災保険に地震保険が付帯している場合、地震保険部分が控除対象となります。
控除額の計算:
年間払込保険料 控除額
50,000円以下 全額
50,001円以上 50,000円(上限)
旧長期損害保険料の経過措置
平成18年12月31日以前に契約した長期損害保険料(契約期間10年以上で満期返戻金あり)は、経過措置として控除対象となります。
旧長期損害保険料の控除額:
年間払込保険料 控除額
10,000円以下 全額
10,001~20,000円 払込保険料×1/2 + 5,000円
20,001円以上 15,000円(上限)
地震保険料と旧長期損害保険料の両方がある場合、合計で50,000円が上限となります。
社会保険料控除の仕組み
対象となる社会保険料
社会保険料控除は、支払った保険料の全額が控除対象となります(上限なし)。
主な対象保険料:
- 健康保険料
- 厚生年金保険料
- 雇用保険料
- 国民健康保険料
- 国民年金保険料
- 後期高齢者医療保険料
- 介護保険料
給与天引き分と自己負担分の区別
給与天引きの社会保険料: 会社が把握しているため、従業員の申告は不要です。自動的に控除計算されます。
自己負担した社会保険料: 以下のような場合は、従業員が申告する必要があります:
- 国民年金保険料を自分で納付した場合
- 家族(配偶者、子など)の国民年金を本人が支払った場合
- 国民健康保険料を自分で支払った場合
- 任意継続の健康保険料を支払った場合
社会保険料控除証明書
国民年金保険料を支払った場合、日本年金機構から「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」が送付されます。この証明書を年末調整時に提出します。
送付時期:
- 1月~9月分:11月上旬
- 10月~12月分:翌年2月上旬
小規模企業共済等掛金控除
対象となる掛金
控除対象:
- 小規模企業共済の掛金
- 企業型確定拠出年金(企業型DC)の掛金
- 個人型確定拠出年金(iDeCo)の掛金
- 心身障害者扶養共済の掛金
控除額: 支払った掛金の全額(上限なし)
iDeCoの控除
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、拠出時・運用時・受取時の3つの段階で税制優遇があります。年末調整では、拠出した掛金の全額が所得控除の対象となります。
iDeCoの年間拠出限度額:
- 自営業者等:816,000円
- 会社員(企業年金なし):276,000円
- 会社員(企業型DCあり):240,000円
- 公務員:144,000円
保険料控除申告書の書き方
必要な書類
年末調整で保険料控除を受けるには、以下の書類が必要です:
- 給与所得者の保険料控除申告書 - 会社から配布される申告書
- 保険料控除証明書 - 保険会社から送付される証明書
- 社会保険料控除証明書 - 国民年金等を自己負担した場合
申告書の記載手順
生命保険料控除の記入:
- 保険会社名、保険の種類、保険期間を記入
- 保険金等の受取人の氏名と続柄を記入
- 新・旧の区分を選択
- 年間払込保険料額を記入
- 控除額を計算して記入
地震保険料控除の記入:
- 保険会社名、保険の種類を記入
- 保険期間、年間払込保険料額を記入
- 地震保険料と旧長期損害保険料を区分
- 控除額を計算して記入
社会保険料控除の記入:
- 社会保険の種類(国民年金、国民健康保険等)を記入
- 保険料支払先の名称を記入
- 保険料を負担した人(本人、配偶者等)を記入
- 支払額を記入
控除による節税効果の計算
所得税の軽減額
保険料控除により所得が減少し、それに応じて所得税が軽減されます。
計算例:
- 課税所得:500万円(控除前)
- 生命保険料控除:10万円
- 地震保険料控除:5万円
- 課税所得:485万円(控除後)
所得税率20%の場合:
節税額 = 15万円 × 20% = 3万円
住民税の軽減額
住民税の保険料控除額は、所得税とは異なる計算式です。
住民税の控除額:
- 生命保険料控除:最大7万円(各区分最大2.8万円)
- 地震保険料控除:最大2.5万円
住民税率10%の場合:
節税額 = 9.5万円 × 10% = 9,500円
所得税・住民税の合計節税効果: 約3.95万円
よくある間違いと注意点
保険料控除証明書の添付忘れ
保険料控除証明書を添付しないと、控除を受けられません。証明書は大切に保管し、年末調整の際に必ず提出しましょう。
控除証明書が間に合わない場合
保険会社からの控除証明書の送付が遅れ、年末調整に間に合わない場合は、確定申告で控除を受けることができます。
配偶者の保険料を本人が支払った場合
配偶者名義の保険料を実際に本人が支払った場合、本人の保険料控除として申告できます。ただし、実際の負担者を証明できる必要があります。
保険料の一括払い
年払いや一時払いの保険料は、支払った年に全額控除します。翌年以降の保険料控除はありません。
年末調整で控除できない場合
確定申告での対応
以下の場合は、年末調整では対応できず、確定申告が必要です:
- 年末調整後に保険料控除証明書が届いた
- 年末調整で控除を申告し忘れた
- 年の途中で退職し、年末調整を受けていない
確定申告期間(翌年2月16日~3月15日)に申告すれば、還付を受けられます。
5年以内の遡及申告
過去の年分で保険料控除を申告し忘れた場合、5年以内であれば「更正の請求」により還付を受けられます。
まとめ:保険料控除で賢く節税
年末調整における保険料控除は、多くの給与所得者が利用できる身近な節税制度です。生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除を適切に申告することで、年間数万円の税負担軽減が期待できます。
保険料控除証明書を大切に保管し、申告書に正確に記入することが重要です。記入方法に不安がある場合は、会社の経理担当者や税理士に相談しましょう。また、iDeCoなどの個人型確定拠出年金は、老後資金の準備と同時に大きな節税効果があるため、検討する価値があります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税額計算や申告については、最新の税制を確認し、必要に応じて税理士等の専門家にご相談ください。
