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相続税の基礎控除を徹底解説!計算方法と申告が必要なケース

2025-10-29
  • 相続税
  • 税務基礎

相続税の基礎控除とは

相続税の基礎控除とは、相続財産のうち、相続税が課税されない金額の上限です。相続財産の総額が基礎控除額以下であれば、相続税は課されず、申告も不要です。

基礎控除は、国民の生活保障と中小規模の資産承継を支援するため設けられています。平成27年の税制改正で基礎控除額が引き下げられ、相続税の対象者が大幅に増加しました。

基礎控除額の計算式:

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

この計算式により、法定相続人が多いほど、基礎控除額が大きくなります。

基礎控除額の計算方法

法定相続人の数え方

基礎控除額の計算で最も重要なのが、法定相続人の数です。

法定相続人の順位:

第1順位: 配偶者 + 子 第2順位: 配偶者 + 直系尊属(父母、祖父母) 第3順位: 配偶者 + 兄弟姉妹

配偶者は常に法定相続人となり、子がいる場合は子も法定相続人です。子がいない場合は父母、父母もいない場合は兄弟姉妹が法定相続人となります。

具体的な計算例

例1:配偶者と子2人の場合

法定相続人:3人(配偶者1人 + 子2人)
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円

例2:配偶者と父母の場合(子なし)

法定相続人:3人(配偶者1人 + 父母2人)
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円

例3:独身で子3人の場合

法定相続人:3人(子3人のみ)
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円

例4:配偶者のみの場合(子なし、父母なし、兄弟姉妹あり)

配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合:

法定相続人:3人(配偶者1人 + 兄弟姉妹2人)
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円

法定相続人のカウント方法の注意点

相続放棄をした人の扱い

相続放棄をした人も、基礎控除額の計算では法定相続人としてカウントします。

例: 配偶者と子3人のうち、子1人が相続放棄

基礎控除額の計算:4人でカウント
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 4人 = 5,400万円

実際の相続は3人で分けますが、基礎控除額は4人で計算します。

養子の扱い

養子も法定相続人としてカウントされますが、基礎控除額の計算では人数制限があります。

養子の人数制限:

  • 実子がいる場合: 養子は1人まで算入
  • 実子がいない場合: 養子は2人まで算入

例: 実子2人 + 養子2人の場合

基礎控除額の計算:実子2人 + 養子1人 = 3人
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円

ただし、特別養子縁組や代襲相続人となった養子などは、実子とみなされ、人数制限の対象外となります。

代襲相続の扱い

被相続人の子が先に亡くなっている場合、その子(被相続人の孫)が代襲相続します。代襲相続人も法定相続人として通常通りカウントします。

例: 配偶者1人、子1人(存命)、子1人(死亡、孫2人が代襲)

法定相続人:4人(配偶者1人 + 子1人 + 孫2人)
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 4人 = 5,400万円

相続財産の範囲

基礎控除額と比較する「相続財産」には、以下のものが含まれます。

本来の相続財産

主な相続財産:

  • 現金・預貯金
  • 不動産(土地・建物)
  • 株式・投資信託
  • 生命保険金(一定額超過分)
  • 死亡退職金(一定額超過分)
  • 自動車
  • 美術品・骨董品
  • 貸付金・売掛金

みなし相続財産

主なみなし相続財産:

  • 生命保険金
  • 死亡退職金

これらには非課税枠があります:

非課税枠 = 500万円 × 法定相続人の数

例: 法定相続人3人、生命保険金2,000万円の場合

非課税枠 = 500万円 × 3人 = 1,500万円
課税対象 = 2,000万円 - 1,500万円 = 500万円

相続開始前3年以内の贈与

相続開始前3年以内に被相続人から受けた贈与は、相続財産に加算されます(令和6年以降は段階的に7年以内に延長)。

基礎控除額を超えた場合の対応

相続税申告が必要

相続財産の総額が基礎控除額を超える場合、相続税の申告が必要です。

申告期限: 相続開始(死亡日)を知った日の翌日から10か月以内

申告先: 被相続人の住所地を管轄する税務署

申告が必要なケースの判定

具体例:

  • 相続財産総額:6,000万円
  • 法定相続人:配偶者と子2人(3人)
  • 基礎控除額:4,800万円
6,000万円 > 4,800万円 → 申告必要

申告不要なケース

相続財産が基礎控除額以下であれば、申告不要です。

具体例:

  • 相続財産総額:4,000万円
  • 法定相続人:配偶者と子2人(3人)
  • 基礎控除額:4,800万円
4,000万円 ≤ 4,800万円 → 申告不要

基礎控除額の改正の影響

平成27年改正前後の比較

平成27年1月1日以降の相続から、基礎控除額が大幅に引き下げられました。

改正前(平成26年12月31日まで):

基礎控除額 = 5,000万円 + 1,000万円 × 法定相続人の数

改正後(平成27年1月1日以降):

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

具体例(法定相続人3人の場合):

  • 改正前:5,000万円 + 1,000万円 × 3 = 8,000万円
  • 改正後:3,000万円 + 600万円 × 3 = 4,800万円
  • 差額:3,200万円の減少(40%減)

課税対象者の増加

基礎控除額の引き下げにより、相続税の課税対象者が大幅に増加しました。

課税割合の推移:

  • 平成26年:約4.4%(100人中約4人)
  • 平成27年以降:約8~9%(100人中約8~9人)

特に都市部では不動産価格が高いため、課税割合がさらに高くなっています。

相続財産の評価方法

不動産の評価

土地: 路線価方式または倍率方式で評価 建物: 固定資産税評価額

実際の時価より低く評価されるため、相続税対策として不動産保有が有効な場合があります。

預貯金・現金

死亡日時点の残高がそのまま評価額となります。

上場株式

死亡日の終値、または死亡日を含む月・前月・前々月の各月の終値平均のうち、最も低い価額で評価します。

基礎控除以外の主な控除・特例

基礎控除を超えた場合でも、以下の控除や特例により相続税が軽減されます。

配偶者の税額軽減

配偶者が相続した財産のうち、1億6,000万円または法定相続分のいずれか多い金額まで相続税が非課税になります。

小規模宅地等の特例

自宅や事業用地について、一定の要件を満たせば評価額を大幅に減額できます(最大80%減額)。

未成年者控除・障害者控除

未成年者や障害者が相続人の場合、一定額が控除されます。

相続税申告の準備

財産目録の作成

相続財産の総額を把握するため、すべての財産をリストアップします。

確認すべき書類:

  • 預貯金通帳
  • 不動産の登記簿謄本・固定資産税評価証明書
  • 証券会社の残高証明書
  • 生命保険証券
  • 借入金の残高証明書

債務・葬式費用の控除

借入金などの債務や葬式費用は、相続財産から控除できます。

控除できる債務:

  • 銀行借入金
  • 未払いの医療費
  • 未払いの税金

控除できる葬式費用:

  • 葬儀費用
  • お寺への支払い(お布施等)
  • 火葬・埋葬費用

基礎控除と生前対策

生前贈与の活用

年110万円の贈与税非課税枠(暦年課税)を活用し、生前に財産を贈与することで、相続財産を減らせます。

ただし、相続開始前3年以内(段階的に7年以内)の贈与は相続財産に加算されます。

生命保険の活用

生命保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。現金を生命保険に転換することで、非課税枠を活用できます。

まとめ:基礎控除額を正しく理解し、早めの準備を

相続税の基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で計算されます。相続財産がこの金額以下であれば、相続税は課されず、申告も不要です。

平成27年の税制改正で基礎控除額が引き下げられ、相続税の課税対象者が約2倍に増加しました。特に都市部で不動産を所有している場合、基礎控除額を超える可能性が高くなります。

相続が発生した場合は、まず法定相続人の数を確認し、基礎控除額を計算します。相続財産の総額が基礎控除額を超える場合は、税理士に相談し、適切な申告を行いましょう。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な相続税の計算や申告については、税理士等の専門家にご相談ください。

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