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不動産の相続税はいくら?税率と評価方法、節税対策を徹底解説
2025-10-27
- 相続税
- 不動産
相続税の税率は財産の種類で変わらない
相続税の税率は、財産の種類(不動産、現金、株式など)に関係なく、相続する財産の総額によって決まります。不動産だけに特別な税率があるわけではありません。
ただし、不動産は以下の点で相続税に大きく影響します:
- 評価額の計算方法が特殊 - 路線価や固定資産税評価額を使用
- 小規模宅地等の特例 - 評価額を最大80%減額
- 現金と比べた評価額の違い - 実勢価格より低く評価されることが多い
相続税の税率構造
相続税は累進課税で、相続する財産が多いほど税率が高くなります。
相続税の速算表
課税遺産額 税率 控除額
─────────────────────────────
1,000万円以下 10% -
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円
この税率は、法定相続分で按分した各相続人の取得額に適用されます。
税率適用の具体例
前提条件:
- 相続財産総額:1億円(不動産5,000万円 + 現金5,000万円)
- 相続人:配偶者と子2人
- 基礎控除額:3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円
計算:
- 課税遺産総額
1億円 - 4,800万円 = 5,200万円
- 法定相続分で按分(仮の計算)
配偶者:5,200万円 × 1/2 = 2,600万円
子:各1,300万円
- 各人の税額計算
配偶者:2,600万円 × 15% - 50万円 = 340万円
子:各1,300万円 × 15% - 50万円 = 145万円
相続税の総額:340万円 + 145万円 × 2 = 630万円
この総額を実際の相続割合で按分し、各人の納税額が決まります。
不動産の評価方法
相続税における不動産の評価額は、実勢価格(時価)とは異なる方法で計算されます。
土地の評価方法
路線価方式: 市街地の土地は、路線価(国税庁が定める1㎡あたりの価格)を基に評価します。
評価額 = 路線価 × 地積 × 各種補正率
倍率方式: 路線価が定められていない地域は、固定資産税評価額に一定の倍率を掛けて評価します。
評価額 = 固定資産税評価額 × 倍率
路線価の目安: 路線価は公示価格(時価の目安)の約80%程度に設定されています。
例:
- 公示価格:1億円の土地
- 路線価評価:約8,000万円
- 節税効果:2,000万円分の評価減
建物の評価方法
建物は固定資産税評価額で評価します。
評価額 = 固定資産税評価額
固定資産税評価額の目安: 建築価格の50~70%程度
例:
- 建築費:3,000万円の建物
- 固定資産税評価額:約1,800万円
- 節税効果:1,200万円分の評価減
賃貸不動産の評価
賃貸している不動産は、さらに評価額が減額されます。
賃貸建物:
評価額 = 固定資産税評価額 × (1 - 借家権割合 × 賃貸割合)
借家権割合:通常30%
貸家建付地(賃貸建物の敷地):
評価額 = 自用地評価額 × (1 - 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
借地権割合:地域により30~90%
具体例:
- 自用地評価額:1億円
- 借地権割合:60%
- 借家権割合:30%
- 賃貸割合:100%
評価額 = 1億円 × (1 - 0.6 × 0.3 × 1.0)
= 1億円 × 0.82
= 8,200万円
評価減:1,800万円
小規模宅地等の特例
居住用または事業用の土地について、一定の要件を満たせば、評価額を大幅に減額できます。
特定居住用宅地等(自宅)
減額率: 80% 限度面積: 330㎡
適用要件(配偶者または同居親族が相続する場合):
- 配偶者が取得:無条件で適用
- 同居親族が取得:相続税の申告期限まで居住・所有を継続
計算例:
- 自宅の土地評価額:6,000万円
- 面積:200㎡
減額後の評価額 = 6,000万円 × (1 - 0.8) = 1,200万円
節税効果:4,800万円分の評価減
特定事業用宅地等
減額率: 80% 限度面積: 400㎡
適用要件: 被相続人が事業を営んでいた土地を、事業を引き継ぐ親族が相続する場合
貸付事業用宅地等
減額率: 50% 限度面積: 200㎡
適用要件: 賃貸アパート・駐車場などの土地を、事業を引き継ぐ親族が相続する場合
特例の併用
特定居住用と特定事業用は併用可能です(合計730㎡まで)。
不動産を含む相続税の計算例
ケース1:自宅のみ所有
前提条件:
- 自宅の土地:評価額6,000万円(200㎡)
- 自宅の建物:評価額1,500万円
- 預貯金:2,500万円
- 相続人:配偶者と子2人
計算:
- 小規模宅地等の特例適用後の土地評価額
6,000万円 × (1 - 0.8) = 1,200万円
- 相続財産総額
1,200万円(土地)+ 1,500万円(建物)+ 2,500万円(預貯金)= 5,200万円
- 基礎控除額
3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円
- 課税遺産総額
5,200万円 - 4,800万円 = 400万円
- 相続税の総額
配偶者:400万円 × 1/2 = 200万円 → 200万円 × 10% = 20万円
子:各100万円 → 各100万円 × 10% = 10万円
相続税の総額:20万円 + 10万円 × 2 = 40万円
配偶者が自宅を相続すれば、配偶者の税額軽減により配偶者の税額はゼロになり、子の納税額のみとなります。
ケース2:賃貸アパート所有
前提条件:
- 賃貸アパートの土地:自用地評価額8,000万円(300㎡、借地権割合60%)
- 賃貸アパートの建物:固定資産税評価額4,000万円
- 賃貸割合:100%
- 預貯金:3,000万円
- 相続人:配偶者と子2人
計算:
- 賃貸アパートの評価
土地(貸家建付地):
8,000万円 × (1 - 0.6 × 0.3 × 1.0) = 6,560万円
建物(貸家):
4,000万円 × (1 - 0.3 × 1.0) = 2,800万円
- 小規模宅地等の特例(貸付事業用)
土地200㎡分に50%減額適用:
6,560万円 × 200㎡/300㎡ × 0.5 = 2,187万円の減額
評価額:6,560万円 - 2,187万円 = 4,373万円
- 相続財産総額
4,373万円(土地)+ 2,800万円(建物)+ 3,000万円(預貯金)= 1億173万円
- 課税遺産総額
1億173万円 - 4,800万円 = 5,373万円
- 相続税の総額(計算省略)
約770万円
不動産を活用した相続税対策
現金を不動産に転換
現金1億円を不動産に転換することで、評価額を下げられます。
例:
- 現金1億円で不動産購入
- 土地評価額:約8,000万円(路線価評価)
- 建物評価額:約1,800万円(固定資産税評価額)
- 合計評価額:約9,800万円
さらに賃貸に出すと:
- 評価額:約8,000万円程度まで圧縮可能
タワーマンションの活用
高層階のタワーマンションは、実勢価格と固定資産税評価額の乖離が大きく、相続税対策として注目されてきました。
ただし、令和6年以降、極端な節税を目的とした取引には税務調査が入る可能性があります。
小規模宅地等の特例の最大活用
自宅を配偶者または同居親族に相続させることで、80%の評価減を受けられます。生前に同居を開始することも検討されます。
不動産相続の注意点
納税資金の確保
不動産は現金化に時間がかかるため、相続税の納税資金が不足する可能性があります。
対策:
- 生命保険の活用(死亡保険金で納税資金を確保)
- 一部を現金で相続
- 物納の検討(要件が厳しい)
遺産分割の難しさ
不動産は分割が困難なため、相続人間で争いになる可能性があります。
対策:
- 遺言書の作成
- 代償分割(不動産を相続する人が他の相続人に代償金を支払う)
- 生前の話し合い
相続税評価と実勢価格の乖離
相続税評価額は実勢価格より低いことが多いですが、逆に評価額の方が高いケースもあります(市況の急落時など)。
まとめ:不動産は相続税対策の要、専門家に相談を
不動産にかかる相続税の税率は、他の財産と同じく10%~55%の累進課税です。ただし、不動産は路線価や固定資産税評価額による評価、小規模宅地等の特例により、現金と比べて大幅に評価額を下げられます。
賃貸不動産はさらに評価減があり、相続税対策として有効です。ただし、納税資金の確保、遺産分割の難しさなど、注意すべき点もあります。
不動産を含む相続では、税理士や不動産鑑定士など専門家のサポートが不可欠です。生前から計画的に対策を講じることで、相続税負担を大幅に軽減できる可能性があります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な相続税の計算や不動産の評価については、税理士等の専門家にご相談ください。
