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不動産がある場合の相続税基礎控除!評価額の計算と申告要否の判定

2025-10-25
  • 相続税
  • 不動産
  • 基礎控除

不動産があっても基礎控除の計算式は同じ

不動産がある場合でも、相続税の基礎控除額の計算方法は現金のみの場合と変わりません。

基礎控除額の計算式:

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

例:配偶者と子2人の場合

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円

この基礎控除額と比較するのは、不動産を含むすべての相続財産の合計額です。不動産は評価額で計算するため、その評価方法が重要になります。

不動産の評価額の計算方法

土地の評価

路線価方式(市街地):

評価額 = 路線価 × 地積 × 各種補正率

路線価は、公示価格(時価の目安)の約80%程度に設定されています。

例:

  • 土地の時価(実勢価格):1億円
  • 路線価評価額:約8,000万円

倍率方式(路線価がない地域):

評価額 = 固定資産税評価額 × 倍率

建物の評価

建物は固定資産税評価額で評価します。

評価額 = 固定資産税評価額

固定資産税評価額は、建築費の50~70%程度が目安です。

例:

  • 建築費:3,000万円
  • 固定資産税評価額:約1,800万円

不動産の評価額と実勢価格の乖離

不動産は相続税評価額が実勢価格(時価)より低くなることが一般的です。

例:自宅(土地建物)の場合

  • 実勢価格:1億5,000万円
  • 土地の評価額:8,000万円(路線価)
  • 建物の評価額:1,800万円(固定資産税評価額)
  • 相続税評価額合計:9,800万円

実勢価格より約5,200万円低く評価されます。

不動産を含む相続財産の基礎控除判定

判定の流れ

  1. すべての相続財産を評価額で算出
  2. 債務・葬式費用を控除
  3. 基礎控除額と比較
  4. 基礎控除を超えるか判定

具体的な判定例

ケース1:申告不要

相続財産:

  • 自宅(土地建物):評価額9,800万円
    • 土地:8,000万円
    • 建物:1,800万円
  • 預貯金:500万円
  • 借入金:△3,000万円

計算:

相続財産総額:9,800万円 + 500万円 - 3,000万円 = 7,300万円
法定相続人:配偶者と子2人(3人)
基礎控除額:4,800万円

7,300万円 > 4,800万円 → 申告必要

ケース2:小規模宅地等の特例適用後は申告不要

同じ相続財産で、自宅の土地に小規模宅地等の特例(80%減額)を適用する場合:

土地の評価額:8,000万円 × (1 - 0.8) = 1,600万円
相続財産総額:1,600万円 + 1,800万円 + 500万円 - 3,000万円 = 900万円

900万円 < 4,800万円 → 申告不要...ではない!

重要: 小規模宅地等の特例を適用するには相続税の申告が必須です。特例適用後に基礎控除以下になる場合でも、申告しなければ特例を受けられません。

小規模宅地等の特例と基礎控除の関係

小規模宅地等の特例の概要

特定居住用宅地等(自宅):

  • 減額率:80%
  • 限度面積:330㎡

適用要件:

  • 配偶者が取得:無条件
  • 同居親族が取得:申告期限まで居住・所有を継続

特例適用の効果

例:

  • 自宅の土地評価額:6,000万円(250㎡)
  • 特例適用後:6,000万円 × (1 - 0.8) = 1,200万円
  • 評価減:4,800万円

この評価減により、基礎控除以下になるケースが多くあります。

特例適用には申告が必須

重要なポイント:

  • 小規模宅地等の特例を適用する場合、相続税の申告が必須
  • 特例適用後に基礎控除以下になっても、申告しないと特例を受けられない
  • 申告期限:相続開始から10か月以内

不動産が基礎控除を超えるかの簡易判定

自宅のみの場合

目安:

  • 土地の実勢価格:約1億円以上
  • または、土地の路線価評価額:約8,000万円以上

自宅の土地がこの水準を超え、他に財産がある場合、基礎控除を超える可能性が高くなります。

賃貸不動産がある場合

賃貸不動産は評価額がさらに減額されます。

賃貸アパートの場合:

  • 土地(貸家建付地):自用地評価額の約82%
  • 建物(貸家):固定資産税評価額の約70%

例:

  • 土地の自用地評価額:1億円
  • 貸家建付地評価額:約8,200万円
  • 建物の固定資産税評価額:3,000万円
  • 貸家評価額:約2,100万円
  • 合計:約1億300万円

実勢価格2億円の賃貸アパートが、相続税評価額では約1億300万円となります。

不動産の評価明細書の作成

土地の評価明細書

相続税申告では、土地の評価明細書を作成します。

記載内容:

  • 所在地
  • 地積
  • 路線価または倍率
  • 各種補正率(奥行価格補正、不整形地補正等)
  • 評価額

建物の評価明細書

記載内容:

  • 所在地
  • 構造
  • 床面積
  • 固定資産税評価額
  • 賃貸の有無と賃貸割合

評価額の根拠書類

必要書類:

  • 固定資産税評価証明書
  • 登記簿謄本(登記事項証明書)
  • 路線価図(国税庁ホームページで確認可能)
  • 賃貸借契約書(賃貸物件の場合)

基礎控除を超える場合の相続税申告

申告が必要な場合

以下の場合は相続税の申告が必要:

  1. 相続財産総額が基礎控除を超える
  2. 小規模宅地等の特例を適用する(適用後に基礎控除以下でも)
  3. 配偶者の税額軽減を適用する(税額がゼロになる場合でも)

申告期限と申告先

申告期限: 相続開始を知った日の翌日から10か月以内

申告先: 被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署

申告書の作成

相続税申告書は複雑で、以下の書類を含みます:

主な申告書:

  • 第1表:相続税の申告書
  • 第9表:生命保険金等の明細書
  • 第11表:相続税がかかる財産の明細書
  • 第13表:債務及び葬式費用の明細書
  • 第15表:相続財産の種類別価額表

不動産がある場合は、評価明細書も添付します。

不動産を活用した相続税対策

現金を不動産に転換

現金を不動産に転換することで、評価額を下げられます。

例:

  • 現金1億円を不動産購入に充てる
  • 土地評価額:約8,000万円
  • 建物評価額:約1,800万円
  • 合計:約9,800万円
  • 評価減:約200万円

さらに賃貸に出すと、評価額はさらに下がります。

タワーマンション購入の注意点

高層階のタワーマンションは、実勢価格と固定資産税評価額の乖離が大きく、相続税対策として注目されてきました。

ただし、令和6年以降、極端な節税を目的とした取引には税務調査が入る可能性があります。購入時期や価格、購入後の期間などが総合的に判断されます。

小規模宅地等の特例の最大活用

自宅を配偶者または同居親族に相続させることで、80%の評価減を受けられます。

対策:

  • 生前に同居を開始する
  • 遺言書で自宅の相続先を指定する
  • 二世帯住宅への建て替えを検討

よくある質問と誤解

不動産があると相続税が高くなる?

不動産は評価額が実勢価格より低いため、むしろ現金で持つより相続税が安くなることが多いです。

自宅しかない場合は申告不要?

自宅の評価額と他の財産を合計して基礎控除を超える場合、申告が必要です。小規模宅地等の特例を適用する場合も申告が必須です。

固定資産税評価額がそのまま相続税評価額?

土地は路線価(または倍率)で評価するため、固定資産税評価額とは異なります。建物は固定資産税評価額を使用します。

不動産を売却してから相続した方が良い?

生前に売却すると現金になり、評価額が実勢価格と同じになるため、相続税対策としては不利です。ただし、遺産分割のしやすさなど、他の観点も考慮が必要です。

税理士への相談の重要性

不動産を含む相続では、以下の理由から税理士への相談が強く推奨されます:

理由:

  1. 不動産の評価計算が複雑
  2. 小規模宅地等の特例の適用判断が難しい
  3. 最適な遺産分割の提案が必要
  4. 申告書の作成が専門的

税理士費用の目安:

  • 相続財産5,000万円:30~50万円程度
  • 相続財産1億円:50~80万円程度
  • 不動産が多い場合:加算あり

税理士費用は相続財産の規模や複雑さにより異なりますが、適切な申告により税負担を大幅に軽減できる可能性があります。

まとめ:不動産があっても基礎控除の計算は同じ、ただし評価が重要

不動産がある場合の相続税基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で、現金のみの場合と同じです。ただし、不動産は路線価や固定資産税評価額で評価するため、実勢価格より低くなることが一般的です。

小規模宅地等の特例を適用すれば、自宅の土地評価額を最大80%減額でき、基礎控除以下になるケースも多くあります。ただし、特例を適用するには相続税の申告が必須で、特例適用後に基礎控除以下になる場合でも申告が必要です。

不動産を含む相続では、評価計算が複雑なため、税理士など専門家のサポートを受けることを強くお勧めします。適切な評価と特例の活用により、相続税負担を大幅に軽減できる可能性があります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な不動産の評価や相続税の計算については、税理士等の専門家にご相談ください。

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