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経理と財務の違いは?役割・業務内容・求められるスキルを徹底比較
2025-10-21
- 経理
- 税務実務
経理と財務の基本的な違い
経理と財務は、どちらも会社のお金に関わる仕事ですが、役割と業務内容が大きく異なります。
経理:過去のお金を記録・管理する
- 日々の取引を記録する(記帳)
- 決算書を作成する
- 税務申告を行う
- 過去~現在のお金の流れを正確に把握する
財務:未来のお金を計画・調達する
- 資金調達の計画と実行
- 資金繰りの管理
- 投資判断のサポート
- 未来のお金の流れを予測し、最適化する
簡単なたとえ:
- 経理:家計簿をつける人(何にいくら使ったかを記録)
- 財務:資金計画を立てる人(来月の支払いのためにお金を工面)
経理の役割と業務内容
経理の主な役割
経理は、会社のすべての取引を正確に記録し、財務状況を明らかにする役割を担います。
役割:
- お金の流れの記録(記帳)
- 正確な決算書の作成
- 税務申告と納税
- 経営者や株主への財務報告
経理の具体的な業務
日次業務:
- 現金・預金の管理
- 仕訳伝票の起票
- 請求書の発行
- 経費の支払い処理
- 領収書の整理
月次業務:
- 月次決算(損益計算書・貸借対照表の作成)
- 売掛金・買掛金の管理
- 給与計算
- 社会保険の手続き
- 経費精算
年次業務:
- 年次決算
- 法人税・消費税の申告
- 年末調整
- 固定資産台帳の管理
- 監査対応
経理が作成する主な書類
決算書:
- 貸借対照表(B/S)
- 損益計算書(P/L)
- キャッシュ・フロー計算書(C/F)
税務関連:
- 法人税申告書
- 消費税申告書
- 源泉徴収票
- 法定調書
管理資料:
- 月次試算表
- 現預金管理表
- 売掛金・買掛金管理表
財務の役割と業務内容
財務の主な役割
財務は、会社の資金を最適に調達・運用し、企業価値を最大化する役割を担います。
役割:
- 資金調達の計画と実行
- 資金繰りの管理
- 投資の意思決定サポート
- 財務戦略の立案
財務の具体的な業務
資金調達:
- 銀行からの借入交渉
- 社債の発行
- 増資の実施
- 補助金・助成金の申請
資金繰り管理:
- 資金繰り表の作成
- 短期・中長期の資金計画
- 余剰資金の運用
- 支払いスケジュールの調整
投資判断:
- 設備投資の採算性分析
- M&A(企業買収)の検討
- 新規事業への投資判断
- ROI(投資利益率)の算出
財務戦略:
- 中期経営計画の策定
- 資本政策の立案
- 配当政策の決定
- IR(投資家向け広報)活動
財務が作成する主な書類
資金計画:
- 資金繰り表
- キャッシュ・フロー予測
- 資金調達計画書
投資分析:
- 投資採算性分析資料
- ROI・NPV計算書
- 事業計画書
経営資料:
- 中期経営計画
- 予算編成資料
- 財務分析レポート
経理と財務の違いを表で比較
| 項目 | 経理 | 財務 | |------|------|------| | 時間軸 | 過去~現在 | 現在~未来 | | 主な役割 | 記録・報告 | 計画・調達 | | 業務の性質 | ルーティンワーク中心 | 戦略的・プロジェクト型 | | 関わる部門 | 社内各部署、税務署 | 銀行、投資家、経営陣 | | 必要な資格 | 簿記2級以上 | 簿記+ファイナンス知識 | | 数値の扱い | 正確な実績値 | 予測値・計画値 | | 成果物 | 決算書、税務申告書 | 資金繰り表、事業計画 | | 求められる能力 | 正確性、細かさ | 分析力、交渉力 |
経理と財務の連携
経理と財務は別の機能ですが、密接に連携して業務を進めます。
経理から財務へのデータ提供
経理が作成したデータを財務が活用:
- 経理:過去の売上・利益データを集計
- 財務:そのデータをもとに来期の予算を策定
例:
- 経理が作成した月次試算表(実績) → 財務が資金繰り表(予測)に反映
財務から経理への情報共有
財務の計画を経理が実行:
- 財務:新規借入の交渉・契約
- 経理:借入金の仕訳・返済スケジュール管理
例:
- 財務が銀行から5,000万円借入 → 経理が仕訳を起票
借方:普通預金 50,000,000円 / 貸方:長期借入金 50,000,000円
決算業務での連携
年次決算:
- 経理:決算書を作成
- 財務:決算書を分析し、来期の財務戦略を立案
経理と財務に必要なスキルの違い
経理に必要なスキル
簿記・会計の知識:
- 日商簿記2級以上(実務レベル)
- 仕訳、決算整理の理解
- 会計基準の知識
税務知識:
- 法人税、消費税の基礎
- 源泉徴収の仕組み
- 税務申告の流れ
ソフトウェアスキル:
- 会計ソフト(弥生、freee、勘定奉行など)
- Excel(関数、ピボットテーブル)
正確性と細かさ:
- ミスのない記帳
- 細部まで確認する注意力
- 期限を守る管理能力
財務に必要なスキル
ファイナンスの知識:
- 財務分析(ROA、ROE、EBITDA など)
- 企業価値評価(DCF法、マルチプル法)
- 資本コストの理解
簿記・会計の知識:
- 日商簿記2級以上
- 財務諸表の読解力
- 会計基準の理解
分析力:
- 財務データの分析
- 投資採算性の評価
- リスク評価
交渉力:
- 銀行との借入交渉
- 投資家へのプレゼンテーション
- M&A交渉
経営視点:
- 経営戦略の理解
- 事業計画の策定能力
- 中長期的な視野
組織における経理と財務の位置づけ
中小企業の場合
中小企業では、経理と財務が明確に分かれていないことが多く、経理担当者が財務業務も兼務するケースが一般的です。
典型的な組織:
- 経理部(2~5名)
- 日常の経理業務
- 資金繰り管理
- 決算・税務申告
- 銀行対応
大企業の場合
大企業では、経理と財務が別部門として独立していることが多いです。
典型的な組織:
-
経理部
- 日常経理
- 決算
- 税務
- 監査対応
-
財務部
- 資金調達
- 資金繰り管理
- 投資管理
- IR活動
-
経営企画部(財務と連携)
- 中期経営計画
- 予算編成
- M&A
経理から財務へのキャリアパス
経理の経験を活かして、財務部門へキャリアアップすることは可能です。
必要なステップ
1. 経理業務の習得(3~5年)
- 日次・月次・年次業務をすべて経験
- 決算書の作成スキルを習得
- 簿記2級以上を取得
2. 財務知識の習得
- ビジネス会計検定、証券アナリストなど
- ファイナンスの書籍で独学
- 財務部門の業務を理解
3. 財務業務へのチャレンジ
- 社内異動を希望
- 財務部門がある企業へ転職
- 資金繰り表の作成から始める
経理経験が財務で活きる理由
決算書を読める: 経理で決算書を作成した経験があれば、財務分析の基礎が身についています。
お金の流れを理解している: 経理で日々のお金の動きを管理してきた経験は、資金繰り管理に直結します。
数字に強い: 経理で培った数値管理能力は、財務の投資分析や予算編成で重要です。
経理と財務、どちらを選ぶべきか
経理に向いている人
こんな人におすすめ:
- コツコツと正確に仕事を進めるのが得意
- ルールに沿って業務を進めるのが好き
- 細かい作業が苦にならない
- 安定した業務を好む
- 簿記や会計に興味がある
経理のメリット:
- 業務が明確で、ルーティン化されている
- 簿記資格があれば未経験でも転職しやすい
- どの業種でも必要とされる
- 税理士などへのキャリアアップも可能
財務に向いている人
こんな人におすすめ:
- 戦略的に物事を考えるのが得意
- 将来を予測し、計画を立てるのが好き
- 交渉やプレゼンテーションが得意
- 経営に関わる仕事がしたい
- ダイナミックな仕事を好む
財務のメリット:
- 経営に近い立場で仕事ができる
- 資金調達や投資など、インパクトの大きい業務
- 高度な専門性を身につけられる
- 年収が高い傾向
よくある質問
経理と財務は同じ部署ですか?
中小企業では同じ部署(経理部)のことが多いですが、大企業では別部署として分かれていることが一般的です。
経理経験がないと財務には就けませんか?
必須ではありませんが、経理の経験があると財務業務の理解が深まります。財務部門に直接入る場合、ファイナンスの知識やMBAなどが求められることがあります。
経理と財務、どちらが年収が高いですか?
一般的に、財務の方が年収が高い傾向にあります。財務は経営戦略に直結する業務が多く、専門性も高いためです。
未経験から財務に就くことはできますか?
難しいですが不可能ではありません。まずは経理アシスタントや経営企画アシスタントから始め、実務経験を積みながら財務知識を習得する方法があります。
まとめ:経理は記録、財務は戦略
経理と財務は、どちらも会社のお金に関わる重要な仕事ですが、その役割は大きく異なります。経理は過去~現在のお金の流れを正確に記録・管理し、決算書や税務申告書を作成します。一方、財務は現在~未来のお金を計画し、資金調達や投資判断を通じて企業価値を最大化します。
経理は正確性と細かさが求められるルーティンワークが中心で、簿記の知識があれば未経験からでも始めやすい職種です。財務は戦略的思考や交渉力が求められ、経営に近い立場でダイナミックな仕事ができます。
どちらが向いているかは、あなたの性格や目指すキャリアによります。まずは経理からスタートし、経験を積んだ後に財務へキャリアアップする道もあります。両者の違いを理解し、自分に合った道を選びましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な業務内容は企業により異なります。
