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経理・財務・管理会計・財務会計の違いとは?4つの役割を徹底解説

2025-10-20
  • 経理
  • 税務実務

経理・財務・管理会計・財務会計の全体像

会社のお金に関わる業務は、大きく分けて4つの領域があります。これらは互いに関連していますが、目的と役割が異なります

4つの領域:

  1. 経理:日々の取引を記録し、財務諸表を作成する(業務・職種)
  2. 財務:資金を調達・運用し、企業価値を高める(業務・職種)
  3. 財務会計:外部報告のための会計(会計の種類)
  4. 管理会計:経営判断のための会計(会計の種類)

重要なポイント:

  • 経理・財務:「職種・業務」の名前
  • 財務会計・管理会計:「会計の種類・目的」の名前

経理とは

経理の定義

経理は、会社のすべての取引を記録し、財務諸表を作成する業務です。「経営管理」の略とも言われ、お金の流れを正確に把握する役割を担います。

経理の主な役割:

  • 日々の取引を仕訳として記録
  • 決算書(財務諸表)を作成
  • 税務申告を行う
  • 給与計算と社会保険手続き

経理の具体的な業務

日次業務:

  • 現金・預金の管理
  • 伝票の起票(仕訳)
  • 請求書の発行
  • 支払い処理
  • 領収書の整理

月次業務:

  • 月次決算(試算表の作成)
  • 売掛金・買掛金の管理
  • 給与計算
  • 経費精算

年次業務:

  • 年次決算
  • 法人税・消費税の申告
  • 年末調整
  • 固定資産台帳の管理

経理が扱う会計

経理は、主に財務会計を扱います。財務会計とは、外部の利害関係者(株主、税務署、銀行など)に報告するための会計です。

経理が作成する財務諸表(財務会計):

  • 貸借対照表(B/S)
  • 損益計算書(P/L)
  • キャッシュ・フロー計算書(C/F)

これらは会計基準や税法に基づいて作成され、正確性が最も重視されます。

財務とは

財務の定義

財務は、会社の資金を調達・運用し、企業価値を最大化する業務です。未来のお金の計画を立て、最適な資金配分を行います。

財務の主な役割:

  • 資金調達(借入、増資、社債発行)
  • 資金繰り管理
  • 投資判断のサポート
  • 財務戦略の立案

財務の具体的な業務

資金調達:

  • 銀行からの借入交渉
  • 社債の発行
  • 増資の実施
  • 補助金・助成金の申請

資金繰り管理:

  • 資金繰り表の作成
  • 短期・中長期の資金計画
  • 余剰資金の運用

投資管理:

  • 設備投資の採算性分析
  • M&A(企業買収)の検討
  • 新規事業への投資判断

財務戦略:

  • 中期経営計画の策定
  • 資本政策の立案
  • IR(投資家向け広報)活動

財務が扱う会計

財務は、経理が作成した財務会計のデータを分析し、さらに管理会計の手法も活用します。

財務が活用する情報:

  • 財務諸表(経理が作成)を分析
  • 資金繰り予測(管理会計的な視点)
  • 投資採算性分析(管理会計的な手法)

財務会計とは

財務会計の定義

財務会計は、外部の利害関係者に会社の財務状況を報告するための会計です。主に経理部門が担当します。

財務会計の目的:

  • 株主への業績報告
  • 税務署への納税額の算定
  • 銀行への財務状況の開示
  • 取引先への信用情報の提供

財務会計の特徴

ルールが厳格:

  • 会計基準(企業会計原則、会社法、金融商品取引法)に従う
  • 税法に準拠する
  • 監査を受ける(上場企業など)

過去の実績を記録:

  • すでに発生した取引を記録
  • 実際の数値(実績値)を扱う

外部報告が目的:

  • 決算書を公表(上場企業)
  • 株主総会で報告
  • 税務申告

財務会計で作成する書類

主な財務諸表:

  1. 貸借対照表(B/S):財政状態を表す
  2. 損益計算書(P/L):経営成績を表す
  3. キャッシュ・フロー計算書(C/F):現金の流れを表す
  4. 株主資本等変動計算書:純資産の変動を表す

管理会計とは

管理会計の定義

管理会計は、経営者や管理者が意思決定を行うための会計です。外部報告ではなく、社内の経営判断に活用します。

管理会計の目的:

  • 経営判断のサポート
  • 予算管理
  • 業績評価
  • コスト削減の検討

管理会計の特徴

ルールが柔軟:

  • 会社独自の基準で作成可能
  • 外部報告義務がない
  • 経営判断に役立つ形式で自由に加工

未来の計画も含む:

  • 予算(未来の計画値)
  • 予測(将来の見込み)
  • シミュレーション

内部利用が目的:

  • 経営者の意思決定
  • 部門別の業績評価
  • 予算と実績の比較

管理会計で作成する資料

主な管理会計資料:

  • 予算と実績の比較表
  • 部門別損益計算書
  • 製品別・顧客別の収益性分析
  • CVP分析(損益分岐点分析)
  • 原価計算書
  • 投資採算性分析(NPV、IRR)

管理会計の具体例

例:部門別損益計算書

財務会計では会社全体の損益を報告しますが、管理会計では部門ごとの利益を分析します。

部門別損益(単位:万円)
              営業部A  営業部B  合計
売上高        5,000    3,000    8,000
売上原価      3,000    1,800    4,800
売上総利益    2,000    1,200    3,200
販管費        1,000      800    1,800
営業利益      1,000      400    1,400

このデータをもとに、「営業部Aの方が利益率が高い」「営業部Bのコスト削減が必要」といった経営判断を行います。

4つの違いを表で比較

| 項目 | 経理 | 財務 | 財務会計 | 管理会計 | |------|------|------|----------|----------| | 分類 | 職種・業務 | 職種・業務 | 会計の種類 | 会計の種類 | | 時間軸 | 過去~現在 | 現在~未来 | 過去(実績) | 未来(計画・予測) | | 目的 | 記録・報告 | 調達・運用 | 外部報告 | 内部意思決定 | | 対象者 | 外部(税務署等) | 銀行・投資家 | 外部利害関係者 | 経営者・管理者 | | ルール | 会計基準・税法 | 柔軟 | 厳格(会計基準) | 柔軟(社内基準) | | 主な業務 | 記帳、決算、申告 | 資金調達、投資 | 決算書作成 | 予算管理、分析 | | 成果物 | 決算書、申告書 | 資金繰り表 | 財務諸表 | 予算資料、分析表 |

経理と財務会計の関係

経理は財務会計を実務として行う部門です。

  • 経理部門が、財務会計のルールに従って決算書を作成する
  • 財務会計は「会計の種類」、経理は「それを行う職種」

例:

  • 経理担当者が、財務会計のルール(企業会計原則)に基づいて貸借対照表を作成する

財務と管理会計の関係

財務部門は、管理会計の手法を活用します。

  • 財務部門が資金繰り予測を作成する際、管理会計的な視点で未来のキャッシュフローを予測する
  • 投資判断では、管理会計の手法(NPV、IRRなど)を使う

例:

  • 財務担当者が、新規設備投資のNPV(正味現在価値)を計算し、投資の可否を判断する(管理会計の手法)

経理部門と管理会計の関係

経理部門が管理会計を担当することもあります。

中小企業では、経理部門が財務会計だけでなく、予算編成や部門別損益の作成(管理会計)も担当することが多いです。

経理部門の業務範囲:

  • 財務会計:決算書作成、税務申告(必須業務)
  • 管理会計:予算管理、部門別分析(会社により異なる)

会社の規模による違い

中小企業の場合

組織:経理部

  • 経理業務(財務会計)
  • 財務業務(資金繰り、銀行対応)
  • 管理会計(予算編成、部門別分析)

中小企業では、経理担当者が財務会計・管理会計・財務業務をすべて兼務することが多いです。

大企業の場合

組織が分かれる:

  • 経理部:財務会計(決算書作成、税務申告)
  • 財務部:資金調達、資金繰り、投資管理
  • 経営企画部:管理会計(予算編成、経営分析)

大企業では、それぞれが独立した部門として専門性を高めています。

どのスキルを身につけるべきか

まずは財務会計(経理)から

未経験者におすすめ:

  • 財務会計の知識(簿記)は、すべての基礎となる
  • 日商簿記2級を取得すれば、経理職に就ける
  • 経理業務を通じて、会社のお金の流れを理解できる

次に管理会計へ

経理経験者のステップアップ:

  • 経理で財務会計を習得したら、管理会計にチャレンジ
  • 予算編成や部門別分析を経験する
  • ビジネス会計検定などで知識を補強

財務は専門性が高い

経理・管理会計の経験後に:

  • 財務は、経理や管理会計の知識を前提とする
  • ファイナンスの知識(DCF法、企業価値評価など)を習得
  • 経営に近い立場で働ける

実務での使い分け例

例:新規店舗の出店を検討する場合

経理(財務会計)の役割:

  • 過去の既存店舗の売上・利益データを提供
  • 出店後の取引を記帳

財務の役割:

  • 出店資金の調達方法を検討(借入、自己資金)
  • 資金繰りへの影響を分析

管理会計の役割:

  • 新店舗の売上予測・利益予測を作成
  • 投資採算性を分析(何年で投資回収できるか)

連携:

  1. 経理が過去データを提供(財務会計)
  2. 管理会計が将来の収益性を予測(管理会計)
  3. 財務が資金調達を実行(財務)
  4. 出店後、経理が実績を記録(財務会計)
  5. 管理会計が予算と実績を比較(管理会計)

まとめ:4つの違いを理解し、キャリアを考える

経理・財務・財務会計・管理会計は、会社のお金に関わる重要な機能ですが、役割と目的が異なります。

簡単なまとめ:

  • 経理:財務会計を実務として行う職種(過去の記録)
  • 財務:資金調達・運用を行う職種(未来の計画)
  • 財務会計:外部報告のための会計(ルールが厳格)
  • 管理会計:経営判断のための会計(ルールが柔軟)

未経験から始める場合は、まず経理(財務会計)の知識を簿記で学び、実務経験を積むことをお勧めします。その後、管理会計や財務の領域にスキルを広げることで、キャリアの幅が大きく広がります。

それぞれの違いを理解し、自分がどの分野を極めたいか、どのようなキャリアを目指すかを考えることが重要です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な業務内容や組織体制は企業により異なります。

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