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領収証・請求書の整理方法を完全ガイド!保管のルールと効率化のコツ

2025-10-17
  • 経理
  • 税務実務

領収証・請求書の整理が重要な理由

領収証や請求書は、会社の取引を証明する重要な書類です。適切に整理・保管することで、以下のメリットがあります。

整理が重要な理由:

  1. 税務調査への対応:税務署から求められたときに提示できる
  2. 正確な経理処理:仕訳の根拠として必要
  3. 経費の証明:税務上、経費として認められるために必須
  4. 業務の効率化:必要な書類をすぐに見つけられる
  5. 法的義務:法人は原則7年間の保管が義務付けられている

逆に、領収証や請求書を紛失したり、整理していないと、税務調査で経費が認められなかったり、追徴課税を受けるリスクがあります。

領収証・請求書の保管期間

法人の場合

法人は、原則として7年間の保管が義務付けられています。

保管期間の起算日:

  • 確定申告書の提出期限の翌日から7年間

例:

  • 決算日:2024年3月31日
  • 申告期限:2024年5月31日
  • 保管期間:2024年6月1日〜2031年5月31日(7年間)

欠損金がある場合:

  • 青色申告法人で欠損金(赤字)がある場合は10年間の保管が必要

個人事業主の場合

個人事業主も、原則として7年間の保管が必要です。

保管期間の起算日:

  • 確定申告の期限の翌日(3月16日)から7年間

青色申告の場合:

  • 領収証・請求書:7年間
  • その他の書類(請求書控、見積書など):5年間

白色申告の場合:

  • すべての書類:5年間

消費税の保管義務

消費税の課税事業者は、仕入税額控除の適用を受けるために領収証・請求書の保管が必須です。

インボイス制度(2023年10月〜):

  • 適格請求書(インボイス)の保管が必須
  • 保管期間:7年間

整理すべき書類の種類

領収証(領収書)

受け取る書類:

  • 商品やサービスの代金を支払ったときに受け取る
  • 経費の証明として使用

記載すべき内容:

  1. 日付
  2. 宛名(会社名または屋号)
  3. 金額
  4. 内容(但し書き)
  5. 発行者の名前・住所・印鑑

注意点:

  • 宛名が「上様」では税務上認められない場合がある
  • 但し書きが「お品代」では内容が不明確

請求書

受け取る書類:

  • 取引先から商品やサービスの代金を請求されるときに受け取る
  • 買掛金の管理と支払いの根拠

記載内容:

  1. 請求書番号
  2. 日付
  3. 宛名
  4. 請求金額
  5. 支払い期限
  6. 振込先
  7. 内訳(商品・サービスの明細)
  8. 消費税額

その他の証憑書類

保管すべきその他の書類:

  • 納品書:商品の受け取りを証明
  • 見積書:取引の条件を記録
  • 契約書:取引の詳細を記録
  • クレジットカード明細:カード払いの証明
  • 振込明細書:銀行振込の証明
  • レシート:領収証の代わりとして有効

領収証・請求書の整理方法

基本的な整理方法

1. 日付順に整理

最も基本的な方法は、月ごとに日付順に整理する方法です。

手順:

  1. 月ごとにファイルやクリアファイルを用意
  2. 日付順に書類を並べる
  3. ファイルに「2024年1月」などラベルを貼る

メリット:

  • シンプルでわかりやすい
  • 時系列で探せる

デメリット:

  • 取引先や費目で探すのが難しい

2. 科目別に整理

勘定科目(費目)ごとに整理する方法です。

科目の例:

  • 交通費
  • 交際費
  • 消耗品費
  • 通信費
  • 地代家賃

メリット:

  • 経費の内容ごとに整理され、集計しやすい
  • 税務調査で特定の科目を確認されたときに便利

デメリット:

  • 科目の判断が必要
  • ファイルの数が多くなる

3. 取引先別に整理

取引先ごとに整理する方法です。

メリット:

  • 特定の取引先との取引をまとめて確認できる
  • 請求書と領収証を一緒に保管できる

デメリット:

  • 取引先が多いと管理が煩雑

おすすめの方法: 日付順 + 科目別のハイブリッド

月ごとに日付順に並べ、さらに科目ごとに区切る方法が実務的です。

ファイリングのコツ

1. クリアファイルとバインダーの活用

月ごとのクリアファイル:

  • 各月ごとにクリアファイルを用意
  • 日付順に書類を入れる
  • バインダーに綴じる

2. 封筒の活用

小額の領収証:

  • 小額(例:3,000円以下)の領収証は、月ごとに封筒に入れる
  • 封筒に「2024年1月 小額経費」と記載

3. ラベルとインデックスの活用

ラベル:

  • ファイルに「年月」「科目」を記載
  • 色分けすると見やすい(例:交通費は青、交際費は赤)

インデックス:

  • バインダーにインデックスをつけ、月ごとに区切る

4. 原本とコピーの区別

原本は必ず保管:

  • 税務調査では原本の提示が原則
  • コピーは参考資料として使用

5. 年度ごとにまとめる

決算後:

  • 1年分の書類をボックスファイルにまとめる
  • 「2023年度(2023/4〜2024/3)」とラベルを貼る
  • 保管期限を記載(例:「2031年5月まで保管」)

デジタル化による効率化

電子帳簿保存法(2022年1月改正): 領収証や請求書をスキャンして電子保存することが認められています。

電子化のメリット:

  1. 紙の保管スペース不要
  2. 検索が簡単
  3. 紛失のリスク低減
  4. リモートワークでも確認可能

電子化の要件:

  • タイムスタンプの付与(または訂正削除の記録が残るシステムの使用)
  • 解像度200dpi以上でスキャン
  • 検索機能(日付、金額、取引先で検索可能)

電子化におすすめのツール:

  • freee(会計ソフト + 領収証管理)
  • マネーフォワード クラウド経費
  • STREAMED(領収証のスキャン代行)
  • Dr.経費精算

領収証・請求書の記載チェックポイント

領収証で確認すべき項目

必須項目:

  1. 日付:取引の日付が正確か
  2. 宛名:会社名が正しく記載されているか(「上様」は避ける)
  3. 金額:金額が正確か、改ざん防止のため「¥」や「※」がついているか
  4. 但し書き:「お品代」ではなく、具体的な内容(例:「書籍代として」)
  5. 発行者:店名、住所、電話番号、印鑑

消費税の記載:

  • 消費税額または税率が記載されているか
  • インボイス制度対応:適格請求書発行事業者の登録番号が記載されているか

請求書で確認すべき項目

必須項目:

  1. 請求書番号
  2. 発行日
  3. 支払期限
  4. 宛名(自社名)
  5. 請求金額(合計)
  6. 内訳(商品・サービスの明細、単価、数量)
  7. 消費税額
  8. 振込先
  9. 発行者の情報(会社名、住所、電話番号、登録番号)

インボイス制度(2023年10月〜):

  • 適格請求書発行事業者の登録番号が記載されているか確認
  • 登録番号がない場合、仕入税額控除ができない

領収証が受け取れない場合の対応

クレジットカード払いの場合

利用明細書を保管:

  • クレジットカードの利用明細書が領収証の代わりになる
  • 利用明細書 + レシートを一緒に保管

ネット通販の場合

メールやPDFを保管:

  • Amazon、楽天などの購入履歴画面を印刷
  • 注文確認メールを印刷またはPDF保存

交通系ICカードの場合

利用履歴を印刷:

  • Suica、PASMOの利用履歴を駅の券売機で印刷
  • モバイルSuicaの場合、アプリから履歴を印刷

領収証が発行されない場合

出金伝票を作成: 小額の支払いで領収証が受け取れない場合(例:自動販売機、バス代)は、出金伝票を作成します。

出金伝票の記載内容:

  1. 日付
  2. 支払先
  3. 金額
  4. 内容(用途)
  5. 支払者の署名

ただし、出金伝票だけでは信憑性が低いため、多用は避けましょう。

紛失した場合の対応

領収証を紛失した場合

1. 再発行を依頼

  • 支払先に連絡し、再発行を依頼
  • 再発行できる場合、「再発行」と記載してもらう

2. 振込明細書や支払証明書で代用

  • 銀行振込の場合、振込明細書を保管
  • クレジットカード払いの場合、利用明細書を保管

3. 出金伝票を作成

  • 再発行が難しい場合、出金伝票を作成
  • ただし、税務調査では説明が必要

請求書を紛失した場合

再発行を依頼:

  • 取引先に連絡し、再発行を依頼
  • 通常、請求書は再発行しやすい

税務調査での対応

税務調査で確認されること

領収証・請求書のチェックポイント:

  1. 保管状況:きちんと整理・保管されているか
  2. 記載内容:必要事項が記載されているか
  3. 実在性:架空の取引ではないか
  4. 妥当性:金額や内容が事業に必要なものか

税務調査に備えた準備

日頃から整理:

  • 月次で領収証を整理する習慣をつける
  • 不明な領収証は、裏にメモ(誰と、何のため)を書く

疑義のある支出は説明できるように:

  • 高額な交際費、旅費交通費は、誰と何のために使ったかメモを残す

よくある質問

Q1: レシートでも領収証の代わりになりますか?

A: はい、レシートでも問題ありません。むしろ、レシートの方が内訳が詳しく記載されており、税務上は望ましいとされています。

Q2: 「上様」の領収証は認められますか?

A: 税務上、「上様」の領収証は、本当にその会社の経費かどうか疑義が持たれる可能性があります。できるだけ正確な会社名を記載してもらいましょう。

Q3: 手書きの領収証は有効ですか?

A: はい、有効です。必要事項が記載されていれば、手書きでも印刷でも問題ありません。

Q4: 領収証に印鑑は必須ですか?

A: 法律上は必須ではありませんが、印鑑があると信頼性が高まります。ただし、最近は印鑑なしの領収証も増えています。

Q5: 電子メールで受け取った請求書も保管が必要ですか?

A: はい、電子メールの請求書も保管が必要です。PDFで保存するか、印刷して保管しましょう。電子帳簿保存法に対応したシステムを使えば、電子データのまま保管できます。

Q6: 保管期間が過ぎたらすぐに廃棄していいですか?

A: 保管期間(7年または10年)が経過すれば、法的には廃棄可能です。ただし、念のため少し余裕を持って保管することをお勧めします。

領収証・請求書の整理を習慣化するコツ

1. 毎日または毎週整理する

日次整理:

  • 財布の中の領収証を毎日取り出す
  • クリアファイルに日付順に入れる

週次整理:

  • 週に1回、領収証を科目別に分ける
  • 会計ソフトに入力する

2. 経費精算をルーティン化

個人事業主:

  • 毎月末に1か月分を整理
  • 翌月初めに会計ソフトに入力

会社員:

  • 月に1回、経費精算を提出
  • 領収証を提出する前にコピーを取る(念のため)

3. デジタルツールの活用

スマホアプリ:

  • 領収証をスマホで撮影
  • 自動で仕訳を作成(freee、マネーフォワードなど)
  • クラウドに保存

4. 専用の場所を決める

領収証入れ:

  • 財布とは別に、領収証専用のケースを持つ
  • 帰宅後すぐに専用ファイルに入れる

まとめ:領収証・請求書の整理で経理を効率化

領収証や請求書の整理は、税務調査への対応、正確な経理処理、経費の証明のために非常に重要です。法人は原則7年間、欠損金がある場合は10年間の保管が義務付けられています。

整理方法は、月ごとに日付順に並べる方法が基本ですが、さらに科目別に区切るとより便利です。クリアファイル、封筒、ラベル、インデックスを活用し、見やすく整理しましょう。

電子帳簿保存法により、領収証や請求書をスキャンして電子保存することも可能です。freeeやマネーフォワードなどのクラウドツールを活用すれば、スマホで撮影するだけで自動的に仕訳が作成され、大幅に効率化できます。

領収証の記載内容(日付、宛名、金額、但し書き、発行者)を必ず確認し、不備があれば訂正してもらいましょう。毎日または毎週整理する習慣をつけることで、経理業務がスムーズになります。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な保管方法や電子化については、税理士に相談することをお勧めします。

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