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法人の消費税と経費の関係を徹底解説!仕入税額控除と損金算入のポイント
2025-10-15
- 法人税
- 消費税
法人の消費税と経費の基本的な関係
法人が事業活動で支払う消費税は、「仕入税額控除」として預かった消費税から差し引けるのが原則です。ただし、消費税の処理方法や経理方式によって、経費(損金)としての扱いが異なります。
重要なポイント:
- 課税事業者:支払った消費税は仕入税額控除の対象(原則として経費にならない)
- 免税事業者:支払った消費税は経費として計上できる
- 税込経理と税抜経理:経理方式によって処理が異なる
消費税の基本的な仕組み
消費税の納付額の計算
消費税は、預かった消費税から支払った消費税を差し引いた金額を納付します。
計算式:
納付税額 = 課税売上に係る消費税(仮受消費税)
- 課税仕入に係る消費税(仮払消費税)
例:
- 商品を1,100万円(税込)で販売 → 預かった消費税:100万円
- 商品を550万円(税込)で仕入 → 支払った消費税:50万円
- 納付税額:100万円 - 50万円 = 50万円
仕入税額控除とは
仕入税額控除とは、商品の仕入れや経費の支払い時に支払った消費税を、預かった消費税から差し引くことです。
仕入税額控除の対象:
- 商品の仕入れ
- 原材料の購入
- 外注費
- 消耗品費
- 地代家賃(事業用)
- 水道光熱費
- 通信費
- その他の経費
仕入税額控除ができない取引(非課税取引):
- 土地の購入・賃借
- 住宅の賃借
- 給与・賃金
- 社会保険料
- 利息の支払い
- 保険料
- 商品券、プリペイドカードの購入
課税事業者と免税事業者の違い
課税事業者
課税事業者とは:
- 基準期間(2期前)の課税売上高が1,000万円を超える事業者
- 消費税の納税義務がある
- 支払った消費税は仕入税額控除として、預かった消費税から差し引ける
消費税の処理:
- 支払った消費税 → 仮払消費税(資産)として計上
- 預かった消費税 → 仮受消費税(負債)として計上
- 差額を納付
経費との関係:
- 支払った消費税は、仕入税額控除として処理されるため、原則として経費(損金)にならない
- ただし、税込経理を選択している場合は経費に含まれる
免税事業者
免税事業者とは:
- 基準期間の課税売上高が1,000万円以下の事業者
- 消費税の納税義務がない
- 消費税を預かっても納付不要(益税)
消費税の処理:
- 支払った消費税は、すべて経費として計上できる
- 預かった消費税は、売上に含めて計上(消費税を区別しない)
経費との関係:
- 支払った消費税は、商品代金や経費の一部として損金に算入できる
例:免税事業者が5,500円(税込)の消耗品を購入
借方:消耗品費 5,500円 / 貸方:現金 5,500円
→ 消費税500円も含めて消耗品費として経費計上
税抜経理方式と税込経理方式
課税事業者は、税抜経理方式または税込経理方式のいずれかを選択できます。
税抜経理方式
税抜経理方式とは: 消費税を本体価格と区別して記帳する方法
仕訳の例:11,000円(税込)の消耗品を購入
借方:消耗品費 10,000円 / 貸方:現金 11,000円
借方:仮払消費税 1,000円 /
メリット:
- 本体価格と消費税が明確に区別される
- 経費の実額が把握しやすい
- 消費税の仕入税額控除が明確
経費との関係:
- 経費として計上されるのは10,000円(本体価格のみ)
- 消費税1,000円は仮払消費税として資産計上
税込経理方式
税込経理方式とは: 消費税を本体価格と区別せず、一体として記帳する方法
仕訳の例:11,000円(税込)の消耗品を購入
借方:消耗品費 11,000円 / 貸方:現金 11,000円
メリット:
- 記帳が簡単
- 免税事業者と同じ処理
デメリット:
- 消費税込みの金額で経費を把握するため、実際のコストが見えにくい
経費との関係:
- 経費として計上されるのは11,000円(消費税込み)
- 決算時に納付する消費税は「租税公課」として経費計上
決算時の仕訳:
借方:仮受消費税 1,000,000円 / 貸方:仮払消費税 500,000円
/ 貸方:未払消費税 500,000円
借方:租税公課 500,000円 / 貸方:未払消費税 500,000円
税込経理の場合、納付する消費税が「租税公課」として損金に算入されます。
法人税法上の損金算入のルール
税抜経理の場合
原則: 支払った消費税は仮払消費税として資産計上され、損金に算入されない
例外的に損金算入される消費税:
- 交際費の5,000円基準判定に使われた消費税
- 少額減価償却資産(30万円未満)の判定に含まれた消費税
- 控除対象外消費税(後述)
税込経理の場合
原則: 支払った消費税は経費に含まれ、損金に算入される
決算時: 納付する消費税を「租税公課」として損金に算入
注意点:
- 税込経理の場合、経費の金額が税抜経理より大きくなる
- ただし、消費税納付額も損金になるため、最終的な利益は同じ
控除対象外消費税とは
控除対象外消費税とは、支払った消費税のうち、仕入税額控除できなかった部分です。
控除対象外消費税が発生するケース
1. 非課税売上に対応する仕入れ
非課税売上(土地の売却、住宅の賃貸など)に対応する仕入れの消費税は、仕入税額控除できません。
2. 簡易課税制度を適用している場合
簡易課税制度では、実際の仕入れに係る消費税ではなく、みなし仕入率で計算するため、実際の支払消費税との差額が控除対象外消費税になります。
3. 課税売上割合が95%未満の場合
課税売上と非課税売上の両方がある場合、課税売上割合が95%未満だと、一部の消費税が控除対象外となります。
課税売上割合:
課税売上割合 = 課税売上高 ÷ (課税売上高 + 非課税売上高)
控除対象外消費税の処理
控除対象外消費税の金額が少額の場合:
- 年間の控除対象外消費税が5,000円以下の場合 → 全額をその年度の損金に算入できる
控除対象外消費税の金額が一定額以下の場合:
- 年間の控除対象外消費税が20万円以下の場合 → 全額をその年度の損金に算入できる
控除対象外消費税の金額が大きい場合:
- 年間の控除対象外消費税が20万円超の場合 → 資産に応じて処理が異なる
資産ごとの処理:
- 棚卸資産:取得価額に算入(売上原価として損金算入)
- 固定資産:取得価額に算入(減価償却を通じて損金算入)
- 経費:その年度の損金に算入
具体的な仕訳例
例1: 税抜経理で消耗品を購入(課税事業者)
取引:消耗品11,000円(税込)を現金で購入
仕訳:
借方:消耗品費 10,000円 / 貸方:現金 11,000円
借方:仮払消費税 1,000円 /
損金算入額:10,000円(消費税は損金不算入)
例2: 税込経理で消耗品を購入(課税事業者)
取引:消耗品11,000円(税込)を現金で購入
仕訳:
借方:消耗品費 11,000円 / 貸方:現金 11,000円
損金算入額:11,000円(消費税込み)
例3: 免税事業者が消耗品を購入
取引:消耗品11,000円(税込)を現金で購入
仕訳:
借方:消耗品費 11,000円 / 貸方:現金 11,000円
損金算入額:11,000円(消費税も含めて全額損金算入)
例4: 交際費の処理(税抜経理)
取引:得意先との飲食代5,500円(税込)を支払った
税抜経理の仕訳:
借方:交際費 5,000円 / 貸方:現金 5,500円
借方:仮払消費税 500円 /
交際費の損金不算入判定:
- 1人あたり5,000円以下の飲食費は交際費から除外できる
- この判定は税抜金額で行う(5,000円)
- したがって、交際費から除外でき、会議費として全額損金算入可能
修正後の仕訳:
借方:会議費 5,000円 / 貸方:現金 5,500円
借方:仮払消費税 500円 /
例5: 固定資産の購入(税抜経理)
取引:パソコン220,000円(税込)を購入
税抜経理の仕訳:
借方:備品 200,000円 / 貸方:現金 220,000円
借方:仮払消費税 20,000円 /
少額減価償却資産の判定:
- 取得価額が30万円未満の場合、全額損金算入できる(中小企業)
- この判定は税抜金額で行う(200,000円)
- したがって、全額損金算入可能
消費税の経費処理でよくある質問
Q1: 課税事業者は消費税を経費にできないのですか?
A: 税抜経理を採用している場合、支払った消費税は仮払消費税として処理され、原則として損金になりません。ただし、税込経理を採用すれば、消費税込みの金額が経費になり、納付する消費税も租税公課として損金になります。
Q2: 免税事業者から課税事業者になったら、何が変わりますか?
A:
- 免税事業者:支払った消費税も含めて全額経費
- 課税事業者(税抜経理):支払った消費税は仮払消費税(経費にならない)
経費として計上できる金額が減りますが、預かった消費税から支払った消費税を差し引けるため、納税額は適正になります。
Q3: 税抜経理と税込経理、どちらが有利ですか?
A: 最終的な利益(損金算入額)は同じです。
税抜経理のメリット:
- 本体価格が明確で、経費の実額が把握しやすい
- 消費税の管理がしやすい
税込経理のメリット:
- 記帳が簡単
- 免税事業者と同じ処理
一般的には、税抜経理の方が経理処理として明瞭で推奨されています。
Q4: 土地の購入費用は経費になりますか?
A: 土地の購入費用は、固定資産として計上され、減価償却もできないため、購入時には損金になりません。また、土地の取引は非課税取引のため、消費税もかかりません。
Q5: 住宅の家賃は仕入税額控除できますか?
A: 住宅の家賃は非課税取引のため、仕入税額控除できません。ただし、事業用の事務所や店舗の家賃は課税取引なので、仕入税額控除できます。
Q6: 簡易課税制度とは何ですか?
A: 簡易課税制度とは、実際の仕入れに係る消費税を計算せず、みなし仕入率を使って納税額を計算する制度です。
適用要件:
- 基準期間の課税売上高が5,000万円以下
- 事前に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出
みなし仕入率:
- 第一種事業(卸売業):90%
- 第二種事業(小売業):80%
- 第三種事業(製造業等):70%
- 第四種事業(その他):60%
- 第五種事業(サービス業等):50%
- 第六種事業(不動産業):40%
簡易課税制度を適用すると、実際の仕入税額控除額との差額が控除対象外消費税になる場合があります。
まとめ:法人の消費税と経費の関係を正しく理解しよう
法人が支払う消費税は、課税事業者の場合、原則として仕入税額控除の対象となり、預かった消費税から差し引けます。税抜経理を採用すれば、支払った消費税は仮払消費税として処理され、損金にはなりません。一方、税込経理を採用すれば、消費税込みの金額が経費となり、納付する消費税も租税公課として損金になります。
免税事業者の場合は、支払った消費税を含めた全額を経費として損金に算入できます。課税事業者と免税事業者では消費税の処理が大きく異なるため、自社がどちらに該当するかを正しく把握することが重要です。
控除対象外消費税が発生した場合、その金額に応じて損金算入の方法が変わります。税抜経理と税込経理のどちらを選択するかは、自社の経理体制や規模に応じて判断しましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務処理については、税理士に相談することをお勧めします。
