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不動産相続と名義変更の完全ガイド|北九州の税理士が解説

2025-10-15
  • 相続税
  • 税務実務

不動産相続とは

不動産相続とは、亡くなった方(被相続人)が所有していた土地や建物を、相続人が受け継ぐことです。日本では、多くの方が自宅や土地などの不動産を所有しており、相続財産の中で不動産が大きな割合を占めるケースが一般的です。

不動産を相続した場合、名義変更(相続登記)の手続きが必要です。2024年4月からは相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に登記しないと過料が課される可能性があるため、早めの手続きが重要です。

不動産相続の主なポイント

  • 相続登記が義務化(2024年4月〜)
  • 相続税の評価方法が複雑
  • 小規模宅地等の特例で大幅な節税が可能
  • 共有名義のリスク
  • 北九州市内の不動産特有の評価方法

相続登記の義務化

2024年4月から相続登記が義務化

従来、不動産の相続登記は義務ではありませんでしたが、2024年4月1日から義務化されました。

義務化の内容

  • 相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請
  • 正当な理由なく期限内に登記しない場合、10万円以下の過料

義務化前の相続にも適用

2024年4月以前に発生した相続についても、3年の猶予期間内(2027年3月まで)に登記が必要です。

正当な理由とは

以下のような事情がある場合、義務を果たせなくても過料は課されません。

  • 相続人が多数で遺産分割協議に時間がかかる
  • 相続人の所在が不明
  • 重病などやむを得ない事情

相続登記をしないリスク

相続登記をせずに放置すると、以下のようなリスクがあります。

不動産の売却・担保設定ができない

登記名義が被相続人のままでは、不動産を売却したり、担保に入れて融資を受けたりすることができません。

相続人が増えて手続きが複雑化

時間が経つと、相続人の1人が亡くなり、その相続人(孫など)が新たに加わります。相続人が増えるほど、遺産分割協議がまとまりにくくなります。

父が2000年に死亡し、相続登記をしないまま放置していたところ、2020年に相続人の1人(長男)が死亡。長男の妻と子2人が新たに相続人に加わり、合計10人で遺産分割協議が必要になるケースもあります。

書類の取得が困難

年月が経つと、戸籍謄本の取得や被相続人の住所の証明が困難になります。

不動産相続の手続きの流れ

ステップ1:相続人の確定

まず、誰が相続人になるのかを確定します。被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取得し、相続人を確認します。

必要書類

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票

ステップ2:相続不動産の調査

被相続人が所有していた不動産を全て把握します。

調査方法

固定資産税の納税通知書を確認

毎年4〜6月頃に送られてくる固定資産税の納税通知書には、所有する不動産の一覧が記載されています。

名寄帳(なよせちょう)を取得

市区町村役場で「名寄帳」を取得すると、その自治体内で所有する全ての不動産が記載されています。

北九州市の場合

  • 各区役所の市民税課で取得可能
  • 相続人であることを証明する戸籍謄本が必要

他の市町村にも不動産がある可能性

被相続人の出身地や以前住んでいた地域にも不動産がある可能性があります。心当たりがある場合は、各市町村で名寄帳を取得しましょう。

登記事項証明書の取得

法務局で不動産の登記事項証明書を取得し、現在の登記名義人や抵当権の有無などを確認します。

ステップ3:遺産分割協議

相続人全員で、誰がどの不動産を相続するかを話し合います。

不動産の分割方法

現物分割

不動産をそのまま特定の相続人が取得する方法です。最もシンプルで、一般的な方法です。

  • 自宅は配偶者、賃貸アパートは長男が取得

換価分割

不動産を売却し、その代金を相続人で分ける方法です。

メリット

  • 公平に分割できる
  • 現金化できる

デメリット

  • 売却に手間と費用がかかる
  • 譲渡所得税が課される可能性

代償分割

特定の相続人が不動産を取得し、他の相続人に代償金を支払う方法です。

  • 長男が自宅(評価額3,000万円)を取得し、次男に1,500万円を支払う

メリット

  • 不動産を維持できる
  • 公平な分割が可能

デメリット

  • 代償金の資金が必要

共有分割

複数の相続人が不動産を共有する方法です。

  • 長男と次男が1/2ずつ共有

デメリット

  • 将来、売却や活用する際に全員の同意が必要
  • 次の相続で共有者が増え、権利関係が複雑化
  • 共有者間のトラブルの原因になりやすい

推奨されない理由

共有分割は、後々トラブルの原因になることが多いため、できる限り避けることをお勧めします。

ステップ4:遺産分割協議書の作成

遺産分割協議の結果を書面にまとめます。

記載内容

  • 被相続人の氏名、死亡日、本籍、最後の住所
  • 不動産の表示(所在、地番、地目、地積など)
  • 誰が取得するか
  • 作成日
  • 相続人全員の署名・押印(実印)

不動産の表示の記載方法

登記事項証明書に記載されているとおりに正確に記載します。住所ではなく、「所在」「地番」で記載する点に注意が必要です。

所在:北九州市小倉北区○○町
地番:123番4
地目:宅地
地積:150.00平方メートル

ステップ5:相続登記の申請

法務局に相続登記を申請します。

申請先

不動産の所在地を管轄する法務局

北九州市内の不動産の場合

  • 法務局北九州支局(小倉北区金田)

必要書類

共通書類

  • 登記申請書
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)
  • 不動産を取得する相続人の住民票
  • 固定資産税評価証明書

遺産分割協議による場合

  • 遺産分割協議書
  • 相続人全員の印鑑証明書

遺言による場合

  • 遺言書
  • 検認済証明書(公正証書遺言の場合は不要)

法定相続分で登記する場合

  • 遺産分割協議書や遺言書は不要

登録免許税

相続登記には、登録免許税がかかります。

税率

登録免許税 = 固定資産税評価額 × 0.4%

固定資産税評価額2,000万円の不動産の場合

2,000万円 × 0.4% = 8万円

申請方法

法務局の窓口で申請

必要書類を揃えて、法務局の窓口に提出します。

郵送で申請

書類を郵送で提出することもできます。

オンライン申請

登記・供託オンライン申請システムを利用して、オンラインで申請することもできます。

司法書士に依頼

相続登記の手続きは複雑なため、司法書士に依頼するのが一般的です。

司法書士報酬の目安

  • 5万円〜15万円程度(不動産の数や複雑さによる)

家を相続したときの相続税

不動産の相続税評価

相続税を計算するためには、不動産を評価する必要があります。

土地の評価方法

路線価方式

市街地の土地は、路線価を基に評価します。路線価は、国税庁のホームページで確認できます。

土地の評価額 = 路線価 × 面積 × 各種補正率

例:北九州市小倉北区の土地

路線価:15万円/㎡、面積:200㎡の場合

15万円 × 200㎡ = 3,000万円(補正前)

実際には、土地の形状や間口、奥行きなどに応じて補正率が適用されます。

倍率方式

路線価が定められていない地域では、固定資産税評価額に倍率を乗じて評価します。

土地の評価額 = 固定資産税評価額 × 倍率

建物の評価方法

建物は、固定資産税評価額がそのまま相続税評価額となります。

建物の評価額 = 固定資産税評価額

賃貸不動産の評価

賃貸アパートや貸家などは、評価額が減額されます。

貸家の場合

評価額 = 固定資産税評価額 × (1 - 借家権割合 × 賃貸割合)

借家権割合は通常30%です。

貸家建付地の場合

評価額 = 自用地評価額 × (1 - 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)

小規模宅地等の特例

自宅や事業用の土地は、小規模宅地等の特例により、評価額を大幅に減額できます。

特定居住用宅地等(自宅)

減額割合

  • 80%減額

限度面積

  • 330㎡まで

適用要件

配偶者が取得する場合

  • 無条件で適用

同居親族が取得する場合

  • 相続開始前から被相続人と同居
  • 相続開始後も引き続き居住し、所有を継続

別居親族が取得する場合(家なき子特例)

  • 被相続人に配偶者や同居相続人がいない
  • 相続開始前3年以内に自己または配偶者の持ち家に住んでいない
  • 相続開始後も所有を継続

例:北九州市小倉北区の自宅

土地の評価額:4,000万円、面積:200㎡の場合

特例適用後の評価額 = 4,000万円 × (1 - 80%) = 800万円

3,200万円の減額効果があります。

特定事業用宅地等

個人事業や同族会社の事業用土地も、400㎡まで80%減額されます。

貸付事業用宅地等

賃貸アパートなどの土地は、200㎡まで50%減額されます。

相続税の配偶者控除

配偶者が相続した財産については、以下のいずれか多い金額まで相続税がかかりません。

  • 1億6,000万円
  • 配偶者の法定相続分相当額

配偶者が自宅(評価額5,000万円)と預貯金(3,000万円)の合計8,000万円を相続した場合、配偶者の相続税は0円です。

銀行口座・預金の相続手続き

不動産だけでなく、銀行口座や預金の相続手続きも必要です。

銀行口座の凍結

金融機関が口座名義人の死亡を知ると、口座が凍結され、引き出しや振り込みができなくなります。

凍結のタイミング

  • 金融機関が死亡の事実を知ったとき
  • 相続人からの連絡
  • 新聞のお悔やみ欄などで把握

凍結の理由

  • 相続人全員の権利を保護するため
  • 一部の相続人が勝手に引き出すことを防ぐため

預金の相続手続きの流れ

ステップ1:金融機関への連絡

被相続人が口座を持っていた金融機関に連絡します。

ステップ2:必要書類の確認

金融機関から必要書類のリストを受け取ります。金融機関によって必要書類が異なるため、事前に確認が必要です。

ステップ3:書類の準備

一般的な必要書類

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 遺産分割協議書(または遺言書)
  • 金融機関所定の相続届

ステップ4:書類の提出

必要書類を金融機関に提出します。

ステップ5:払い戻し

審査が完了すると、指定した口座に預金が払い戻されます。通常、1〜2週間程度かかります。

複数の金融機関がある場合

被相続人が複数の金融機関に口座を持っている場合、それぞれの金融機関で手続きが必要です。戸籍謄本は原本還付を請求すれば返却してもらえるため、1通で使い回すことができます。

遺産分割前の預金の払い戻し

2019年の法改正により、遺産分割協議が成立する前でも、一定額まで預金を払い戻せるようになりました。

払い戻し可能額

払い戻し可能額 = 相続開始時の預金額 × 1/3 × 法定相続分

上限

  • 1つの金融機関につき150万円まで

預金1,200万円、相続人は配偶者と子2人(計3人)の場合、配偶者が払い戻せる金額は以下のとおりです。

1,200万円 × 1/3 × 1/2 = 200万円
→ 上限150万円

配偶者は150万円まで払い戻せます。

用途

葬儀費用や当面の生活費などに充てることができます。

北九州での不動産相続のポイント

北九州市内の不動産の特徴

北九州市は、かつて工業都市として栄えましたが、近年は人口減少が進んでいます。そのため、地域によって不動産価格に大きな差があります。

小倉北区・八幡西区など中心部

  • 路線価が高い
  • 相続税の評価額も高くなりがち
  • 小規模宅地等の特例の活用が重要

郊外や山間部

  • 路線価が低い、または倍率方式
  • 相続税がかからないケースも多い
  • 活用や売却が難しい場合もある

空き家問題への対応

北九州市内では、空き家が増加しています。相続した不動産が空き家になる場合、以下の対応が考えられます。

賃貸に出す

収益を得られますが、管理や修繕の負担があります。

売却する

現金化できますが、買い手が見つからない場合もあります。相続から3年以内に売却すれば、「相続空き家の3,000万円特別控除」を利用できる場合があります。

解体する

空き家を放置すると「特定空き家」に指定され、固定資産税が増える可能性があります。解体費用はかかりますが、土地として活用しやすくなります。

北九州市の支援制度

北九州市では、空き家バンクや空き家活用の支援制度があります。相続した不動産の活用に困っている場合は、市の窓口に相談するのも一つの方法です。

税理士・司法書士への相談

不動産相続は、相続登記と相続税申告の両方が必要なため、司法書士と税理士の両方に相談することをお勧めします。

司法書士に依頼すること

  • 相続登記の手続き
  • 遺産分割協議書の作成サポート
  • 戸籍謄本の収集代行

税理士に依頼すること

  • 不動産の相続税評価
  • 小規模宅地等の特例の適用判断
  • 相続税の申告書の作成
  • 節税対策の提案

連携している専門家を選ぶメリット

税理士と司法書士が連携している事務所であれば、ワンストップで手続きを進められ、効率的です。

相談すべきタイミング

  • 相続が発生したらできるだけ早く
  • 不動産の評価や特例の適用について不明な点がある場合

北九州市内の不動産に詳しい税理士・司法書士に相談することで、地域特有の評価方法や活用方法についてアドバイスを受けられます。

まとめ

不動産を相続した場合、相続登記が義務化されたため、3年以内に名義変更を完了する必要があります。手続きには、相続人の確定、遺産分割協議、登記申請など、複数のステップがあります。

相続税の計算では、不動産の評価方法が重要です。小規模宅地等の特例を適用できれば、評価額を最大80%減額でき、大幅な節税が可能です。また、銀行口座や預金の相続手続きも並行して進める必要があります。

北九州市内で不動産を相続された方は、地域の不動産事情に精通した税理士・司法書士に早めに相談し、適切な手続きと節税対策を進めることをお勧めします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な不動産相続の手続きや相続税申告については、税理士・司法書士にご相談ください。

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