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個人事業主の経費の種類を完全ガイド!勘定科目別に認められる経費を解説

2025-10-13
  • 税務実務
  • 確定申告

個人事業主の経費とは

個人事業主の経費とは、事業を営むために直接必要な費用のことです。確定申告で経費を正しく計上することで、所得税や住民税を減らすことができます。

経費として認められる条件:

  1. 事業に直接関係している
  2. 事業の収入を得るために必要である
  3. 支出の事実が証明できる(領収証がある)
  4. 金額が常識的な範囲内である

経費にできないもの:

  • 個人的な支出(プライベートな飲食、趣味の費用など)
  • 生活費
  • 所得税、住民税(事業税は経費OK)
  • 罰金、交通違反の反則金

経費の主な種類(勘定科目別)

個人事業主が使う主な勘定科目と、それぞれに計上できる経費を詳しく解説します。

1. 租税公課

租税公課とは: 事業に関連する税金や公的な負担金

経費にできる税金:

  • 個人事業税
  • 固定資産税(事業用資産)
  • 自動車税(事業用車両)
  • 不動産取得税(事業用不動産)
  • 登録免許税
  • 印紙税
  • 消費税(税込経理の場合)

経費にできない税金:

  • 所得税
  • 住民税
  • 相続税
  • 贈与税
  • 罰金、延滞税、加算税

具体例:

  • 事業用の車の自動車税:35,000円 → 全額経費
  • 自宅兼事務所の固定資産税:10万円、事業割合30% → 3万円を経費

2. 荷造運賃

荷造運賃とは: 商品の発送に関する費用

経費にできるもの:

  • 宅配便の送料
  • ゆうパック、レターパック
  • 梱包材料費(ダンボール、緩衝材、テープ)
  • 運送会社への支払い

具体例:

  • ECサイトで販売した商品の発送費用:月10万円
  • 梱包用ダンボール代:5,000円

3. 水道光熱費

水道光熱費とは: 電気、ガス、水道の料金

経費にできるもの:

  • 事務所の電気代
  • 店舗のガス代
  • 工場の水道代

自宅兼事務所の場合: 事業で使用している割合(按分比率)を計算し、その部分を経費にできる

按分方法の例:

  • 面積比:自宅100㎡、事務所スペース20㎡ → 20%を経費
  • 時間比:1日8時間、週5日を事業使用 → 約24%を経費(8時間 × 5日 ÷ 24時間 ÷ 7日)

具体例:

  • 月の電気代:1万円
  • 事業使用割合:30%
  • 経費:1万円 × 30% = 3,000円

4. 旅費交通費

旅費交通費とは: 事業のための移動にかかる費用

経費にできるもの:

  • 電車、バスの運賃
  • 新幹線、飛行機の料金
  • タクシー代(事業目的)
  • 高速道路の通行料
  • 駐車場代
  • ホテル代(出張時)
  • 日当(出張手当)

注意点:

  • プライベートな旅行は経費にできない
  • 通勤定期券は個人事業主の場合、経費にできない(従業員のものはOK)

具体例:

  • 取引先訪問のための新幹線代:往復3万円
  • 出張時のホテル代:1泊1万円
  • 駐車場代(打ち合わせ先):500円

5. 通信費

通信費とは: 電話、インターネット、郵便などの費用

経費にできるもの:

  • 固定電話の基本料金・通話料
  • 携帯電話の料金(事業使用分)
  • インターネット回線料金(事業使用分)
  • レンタルサーバー代
  • ドメイン取得費用
  • 郵便切手、はがき
  • 宅配便(書類の送付)

自宅兼事務所の場合: 電話やインターネットは、事業使用割合で按分

具体例:

  • 携帯電話料金:月8,000円、事業使用70% → 5,600円を経費
  • インターネット料金:月5,000円、事業使用50% → 2,500円を経費
  • ドメイン代:年間1,500円 → 全額経費

6. 広告宣伝費

広告宣伝費とは: 事業の宣伝や広告にかかる費用

経費にできるもの:

  • ネット広告(Google広告、SNS広告)
  • チラシ、パンフレットの印刷費
  • 看板の製作費
  • ホームページ制作費
  • 名刺の印刷費
  • 試供品、サンプル品の費用
  • 展示会の出展費用

具体例:

  • Google広告費:月5万円
  • 名刺印刷:3,000円
  • チラシ印刷:2万円

7. 接待交際費

接待交際費とは: 取引先や顧客との接待、交際にかかる費用

経費にできるもの:

  • 取引先との飲食費
  • 取引先へのお中元、お歳暮
  • 接待ゴルフの費用
  • 取引先との慶弔費(祝儀、香典)
  • 手土産代

注意点:

  • 個人事業主本人の飲食は原則として経費にならない
  • 誰と、何のために使ったかを記録する
  • 領収証の裏にメモを残す(「○○社 田中様と打ち合わせ」など)

会議費との区別:

  • 1人あたり5,000円以下の飲食 → 会議費
  • 1人あたり5,000円超の飲食 → 接待交際費

具体例:

  • 取引先との飲食(3名、15,000円) → 1人5,000円 → 会議費
  • 取引先との飲食(2名、12,000円) → 1人6,000円 → 接待交際費
  • お中元:5,000円

8. 損害保険料

損害保険料とは: 事業に関する保険の保険料

経費にできるもの:

  • 事業用車両の自動車保険
  • 店舗の火災保険
  • 事業用資産の損害保険
  • 賠償責任保険
  • 貨物保険

経費にできないもの:

  • 個人の生命保険(所得控除の対象)
  • 個人の医療保険(所得控除の対象)

自宅兼事務所の火災保険: 事業使用割合で按分

具体例:

  • 事業用車両の自動車保険:年間8万円 → 全額経費
  • 自宅兼事務所の火災保険:年間3万円、事業割合30% → 9,000円を経費

9. 修繕費

修繕費とは: 建物や設備の修理、メンテナンスにかかる費用

経費にできるもの:

  • 事務所の壁紙の張り替え
  • 店舗のエアコンの修理
  • パソコンの修理
  • 事業用車両の車検、修理
  • 機械設備のメンテナンス

注意点:

  • 資産の価値を高める支出(改良、増築など)は「資本的支出」として減価償却が必要
  • 原状回復や維持管理のための支出は「修繕費」として一括で経費計上可能

資本的支出との区別:

  • 修繕費:原状回復、維持管理(例:壁紙の張り替え)
  • 資本的支出:性能向上、価値増加(例:和室を洋室に改装)

具体例:

  • パソコンの修理代:2万円 → 修繕費
  • 事務所の蛍光灯をLEDに交換:5万円 → 修繕費(原状回復の範囲)
  • 店舗の増築:300万円 → 資本的支出(減価償却)

10. 消耗品費

消耗品費とは: 事業で使う消耗品の購入費用

経費にできるもの:

  • 文房具(ボールペン、ノート、ファイル)
  • コピー用紙、インク
  • 電球、電池
  • 掃除用品
  • 名刺
  • 取得価額10万円未満の備品

具体例:

  • 事務用品:月5,000円
  • プリンターインク:3,000円
  • デスクライト(8,000円) → 10万円未満なので消耗品費

11. 減価償却費

減価償却費とは: 高額な資産(10万円以上)を、使用期間に応じて経費化する費用

減価償却が必要な資産:

  • パソコン(耐用年数4年)
  • 机、椅子などの家具(耐用年数8年)
  • 事業用車両(耐用年数6年)
  • 機械設備
  • ソフトウェア(耐用年数5年)

少額減価償却資産の特例(青色申告の場合):

  • 取得価額30万円未満の資産は、一括で経費にできる
  • 年間合計300万円まで

具体例:

  • パソコン20万円を購入(青色申告) → 一括で経費
  • 事業用車両200万円を購入 → 耐用年数6年で減価償却
    • 年間の減価償却費:200万円 ÷ 6年 ≒ 33.3万円

12. 福利厚生費

福利厚生費とは: 従業員の福利厚生のための費用

経費にできるもの:

  • 従業員の健康診断費用
  • 従業員の慰安旅行費用
  • 従業員への弁当代、お茶代
  • 従業員の制服代

注意点:

  • 個人事業主本人の福利厚生費は経費にならない
  • 従業員がいる場合のみ計上可能

具体例:

  • 従業員3名の健康診断費用:1人1万円 × 3名 = 3万円

13. 給料賃金

給料賃金とは: 従業員やアルバイトに支払う給与

経費にできるもの:

  • 従業員への給与
  • アルバイト、パートへの給与
  • 賞与

注意点:

  • 個人事業主本人の給与は経費にならない
  • 青色事業専従者(家族従業員)への給与は「専従者給与」として別科目
  • 源泉徴収が必要

具体例:

  • 従業員2名への給与:月50万円(1人25万円 × 2名)

14. 外注工賃

外注工賃とは: 外部に委託した業務の費用

経費にできるもの:

  • デザイン業務の外注費
  • システム開発の外注費
  • ライティングの外注費
  • 製造の外注費

給料賃金との区別:

  • 雇用関係がない → 外注工賃
  • 雇用関係がある → 給料賃金

具体例:

  • Webデザインの外注:10万円
  • 記事執筆の外注:1記事5,000円

15. 利子割引料

利子割引料とは: 借入金の利息や手形割引料

経費にできるもの:

  • 事業用借入金の利息
  • 手形割引料
  • 信用保証協会の保証料

注意点:

  • 元本の返済は経費にならない(利息のみ)
  • 住宅ローンの利息は経費にならない(事業用不動産ローンの利息はOK)

具体例:

  • 事業用借入金500万円の年間利息:5万円 → 全額経費

16. 地代家賃

地代家賃とは: 事務所や店舗の家賃、土地の賃借料

経費にできるもの:

  • 事務所の家賃
  • 店舗の家賃
  • 駐車場代(事業用)
  • 倉庫の賃借料
  • 土地の賃借料

自宅兼事務所の場合: 事業使用割合で按分

具体例:

  • 事務所家賃:月10万円 → 全額経費
  • 自宅兼事務所の家賃:月15万円、事業割合30% → 4.5万円を経費

17. 専従者給与(青色申告)

専従者給与とは: 青色申告者が家族従業員に支払う給与

要件:

  1. 青色申告者であること
  2. 事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出
  3. 配偶者や親族が専ら事業に従事している(年間6か月以上)
  4. 給与額が妥当である

具体例:

  • 配偶者に月20万円の専従者給与を支払う → 年間240万円を経費

白色申告の場合:

  • 専従者控除として一定額を控除(配偶者86万円、その他50万円)

18. 貸倒金

貸倒金とは: 回収できなくなった売掛金や貸付金

経費にできる場合:

  • 取引先が倒産した
  • 長期間回収できず、法的に回収不能と認められた

注意点:

  • 単に支払いが遅れているだけでは貸倒金にできない
  • 倒産の事実を証明する書類が必要

19. 雑費

雑費とは: 他の科目に当てはまらない少額の経費

経費にできるもの:

  • 銀行の振込手数料
  • クリーニング代(作業着)
  • ゴミ処理費用
  • 引越し費用(事務所移転)

注意点:

  • 雑費が多すぎると税務調査で指摘される
  • 適切な科目があれば、そちらに計上する

家事按分の方法

自宅兼事務所の場合、家賃や光熱費などを事業使用分とプライベート使用分に分ける必要があります。

按分比率の計算方法

1. 面積比

事業使用割合 = 事務所スペースの面積 ÷ 自宅全体の面積

例:

  • 自宅全体:100㎡
  • 事務所スペース:20㎡
  • 事業使用割合:20%

2. 時間比

事業使用割合 = 事業使用時間 ÷ 全体時間

例:

  • 1日8時間、週5日を事業使用
  • 事業使用割合:8時間 × 5日 ÷ 24時間 ÷ 7日 ≒ 24%

3. 台数比(車両)

事業使用割合 = 事業用走行距離 ÷ 全体走行距離

例:

  • 年間走行距離:10,000km
  • 事業用走行距離:7,000km
  • 事業使用割合:70%

按分の記録

按分比率の根拠を記録しておくことが重要です。

記録すべき内容:

  • 事務所スペースの図面
  • 事業時間の記録
  • 走行記録(車両)

経費計上の注意点

1. 領収証・レシートの保管

保管期間:

  • 青色申告:7年間
  • 白色申告:5年間

保管方法:

  • 月ごとにファイリング
  • 科目別に整理
  • 電子保存も可能(電子帳簿保存法に対応)

2. 事業関連性の証明

記録すべき内容:

  • 誰と(取引先名)
  • 何のために(打ち合わせ、接待など)
  • どこで(場所)

領収証の裏にメモを残すと良いでしょう。

3. 常識的な金額

経費は事業規模に応じた常識的な金額である必要があります。

注意すべき例:

  • 売上100万円なのに、交際費が50万円 → 不自然
  • 自宅の家賃15万円のうち、14万円を経費 → 按分割合が高すぎる

4. プライベートとの区別

経費にできないもの:

  • 家族との食事
  • 趣味の費用
  • 個人的な服(スーツを除く)
  • 生活費

よくある質問

Q1: スーツは経費になりますか?

A: 原則として、スーツは経費になりません。ただし、特定の職業(芸能人、モデルなど)で仕事専用の衣装は経費として認められる場合があります。

Q2: 自宅の家賃は何割まで経費にできますか?

A: 明確な上限はありませんが、実態に応じた合理的な割合である必要があります。一般的には20〜50%程度が多いです。

Q3: 領収証がない場合はどうすればいいですか?

A:

  • 出金伝票を作成する
  • クレジットカードの明細を保管
  • 銀行振込の控えを保管
  • レシートでも代用可能

ただし、出金伝票だけでは信憑性が低いため、できるだけ領収証を取得しましょう。

Q4: 青色申告と白色申告で経費の範囲は違いますか?

A: 経費として認められる範囲は基本的に同じです。ただし、青色申告には以下の特典があります:

  • 専従者給与を全額経費にできる(白色は一定額のみ)
  • 30万円未満の少額減価償却資産を一括経費にできる

Q5: 確定申告の際、領収証を提出する必要がありますか?

A: 確定申告書に領収証を添付する必要はありません。ただし、7年間(または5年間)保管し、税務調査の際に提示できるようにしておく必要があります。

まとめ:経費を正しく計上して節税しよう

個人事業主が計上できる経費には、租税公課、旅費交通費、通信費、広告宣伝費、接待交際費、消耗品費、減価償却費、地代家賃など様々な種類があります。経費として認められるためには、事業に直接関係し、領収証で証明できる必要があります。

自宅兼事務所の場合は、家賃や光熱費を事業使用割合で按分して経費計上できます。按分比率は面積比や時間比で合理的に計算しましょう。

領収証は7年間(白色申告は5年間)保管し、誰と何のために使ったかを記録しておくことが重要です。経費を正しく計上することで、適正な納税と節税を両立できます。

不明な点や判断に迷う場合は、税理士に相談することをお勧めします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な税務処理については、税理士に相談することをお勧めします。

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