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生前贈与で相続対策!北九州の税理士が教える効果的な節税方法

2025-10-13
  • 相続税
  • 贈与税

生前贈与とは何か

生前贈与とは、財産の所有者が生きている間に、自分の財産を他人に無償で譲ることです。相続は死後に財産が移転するのに対し、生前贈与は生前に計画的に財産を移転できるため、相続税対策として非常に有効な手段となります。

生前贈与を活用することで、将来発生する相続税を軽減し、円滑な資産承継を実現できます。特に北九州市内で不動産や事業を所有している方にとって、早期からの生前対策は重要です。

生前贈与のメリット

  • 相続財産を減らし、相続税を節税できる
  • 財産を渡したい人に確実に渡せる
  • 生前に感謝の気持ちを伝えられる
  • 相続時の遺産分割トラブルを防げる

生前贈与の注意点

  • 贈与税が課される場合がある
  • 相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算される
  • 適切な記録を残さないと贈与と認められない場合がある

贈与税の基本的な仕組み

生前贈与を行う際には、贈与税について理解しておく必要があります。贈与税とは、個人から財産をもらったときに課される税金です。

基礎控除額(年間110万円)

贈与税には年間110万円の基礎控除があります。1月1日から12月31日までの1年間に受け取った財産の合計額が110万円以下であれば、贈与税はかかりません。

基礎控除の計算例

受け取った財産の総額:100万円
基礎控除額:110万円
課税対象額:0円(贈与税なし)
受け取った財産の総額:200万円
基礎控除額:110万円
課税対象額:90万円(贈与税あり)

贈与税の税率

基礎控除額を超える部分に対して、贈与税が課されます。贈与税には「一般贈与」と「特例贈与」の2つの税率があります。

特例贈与(直系尊属から18歳以上の子・孫への贈与)

| 課税価格 | 税率 | 控除額 | |---------|------|-------| | 200万円以下 | 10% | - | | 400万円以下 | 15% | 10万円 | | 600万円以下 | 20% | 30万円 | | 1,000万円以下 | 30% | 90万円 | | 1,500万円以下 | 40% | 190万円 | | 3,000万円以下 | 45% | 265万円 | | 4,500万円以下 | 50% | 415万円 | | 4,500万円超 | 55% | 640万円 |

一般贈与(上記以外の贈与)

| 課税価格 | 税率 | 控除額 | |---------|------|-------| | 200万円以下 | 10% | - | | 300万円以下 | 15% | 10万円 | | 400万円以下 | 20% | 25万円 | | 600万円以下 | 30% | 65万円 | | 1,000万円以下 | 40% | 125万円 | | 1,500万円以下 | 45% | 175万円 | | 3,000万円以下 | 50% | 250万円 | | 3,000万円超 | 55% | 400万円 |

計算例

親から子(25歳)へ500万円を贈与した場合(特例贈与)

課税価格 = 500万円 - 110万円(基礎控除) = 390万円
贈与税額 = 390万円 × 15% - 10万円 = 48.5万円

暦年贈与による相続対策

暦年贈与とは、毎年の基礎控除額110万円を活用して、長期間にわたって少しずつ財産を贈与する方法です。

暦年贈与の効果

計算例:10年間、毎年110万円を2人の子どもに贈与

年間贈与額:110万円 × 2人 = 220万円
10年間の総額:220万円 × 10年 = 2,200万円
贈与税:0円

この方法により、2,200万円を無税で次世代に移転できます。相続財産が2,200万円減少するため、相続税の節税効果も期待できます。

暦年贈与の注意点

相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算される

2024年以降、相続開始前7年以内に行われた贈与は、相続財産に加算されます(以前は3年以内でしたが、段階的に延長されました)。ただし、7年のうち3年超から7年以内の贈与については、総額100万円まで加算されません。

定期贈与とみなされないための工夫

毎年同じ時期に同じ金額を贈与すると、「最初から大きな金額を贈与する予定だった」とみなされ、定期金の贈与として高額な贈与税が課される可能性があります。

定期贈与を避けるための対策

  • 贈与する時期を毎年変える
  • 贈与する金額を毎年変える
  • 贈与の都度、贈与契約書を作成する
  • 受贈者の口座に振り込み、記録を残す
  • 受贈者が自由に使える状態にしておく

贈与の証拠を残す

贈与が税務署に認められるためには、適切な証拠を残すことが重要です。

贈与契約書の作成

贈与契約書には、以下の内容を記載します。

  • 贈与者と受贈者の氏名・住所
  • 贈与する財産の内容(金額、不動産の場合は所在地など)
  • 贈与の日付
  • 双方の署名・押印

振込記録の保管

現金を手渡しするのではなく、銀行振込で贈与し、振込記録を保管します。これにより、贈与の事実を客観的に証明できます。

受贈者が自由に使える状態にする

贈与した財産を受贈者が自由に使えない場合(例:親が通帳を管理している)、贈与として認められない可能性があります(名義預金)。受贈者本人が管理し、自由に使える状態にしておきましょう。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与について、累計2,500万円まで贈与税を課税せず、相続時に精算する制度です。

相続時精算課税制度の仕組み

特徴

  • 累計2,500万円まで贈与税が非課税
  • 2,500万円を超えた部分は一律20%の贈与税
  • 贈与者が亡くなったとき、贈与財産を相続財産に加算して相続税を計算
  • 2024年以降、年110万円の基礎控除が追加された

計算例

父(65歳)から子(30歳)へ、相続時精算課税制度を使って3,000万円を贈与した場合

2,500万円まで:非課税
500万円(超過分):500万円 × 20% = 100万円
贈与税:100万円

2024年以降は、年110万円の基礎控除が使えるため、毎年110万円以内の贈与であれば、贈与税も相続税もかかりません。

相続時精算課税制度のメリット

早期に大きな金額を贈与できる

暦年贈与では年間110万円までしか非課税で贈与できませんが、相続時精算課税制度を使えば一度に大きな金額を贈与できます。

将来値上がりが期待できる財産の贈与に有利

贈与時の評価額で相続財産に加算されるため、将来値上がりが期待できる財産(株式、不動産など)を贈与すると、相続税の節税効果があります。

贈与時の評価額2,000万円の不動産が、相続時に5,000万円に値上がりした場合でも、相続財産に加算されるのは2,000万円のみです。

相続時精算課税制度の注意点

一度選択すると暦年贈与に戻れない

相続時精算課税制度を選択すると、その贈与者からの贈与については、以降すべて相続時精算課税が適用され、暦年贈与の110万円控除は使えなくなります(2024年以降の年110万円基礎控除は使えます)。

相続税が増える可能性がある

贈与した財産が相続財産に加算されるため、相続税の課税対象が増え、相続税が高くなる可能性があります。

適用できる人が限られる

60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与に限定されています。

非課税制度の活用

特定の目的のための贈与については、特別な非課税制度があります。

教育資金の一括贈与(最大1,500万円)

祖父母や父母が、30歳未満の子・孫の教育資金として一括で贈与する場合、最大1,500万円まで非課税となります。

適用要件

  • 贈与者:直系尊属(父母、祖父母など)
  • 受贈者:30歳未満の子・孫
  • 金融機関に教育資金口座を開設
  • 教育資金の支払いに充てる

対象となる教育資金

  • 学校の入学金、授業料
  • 学校以外の教育費(塾、習い事など):500万円まで
  • 通学定期代、留学費用など

注意点

  • 受贈者が30歳に達したとき、使い切れなかった残額に贈与税が課される
  • 教育資金として使ったことを証明する領収書が必要

結婚・子育て資金の一括贈与(最大1,000万円)

18歳以上50歳未満の子・孫の結婚・子育て資金として一括で贈与する場合、最大1,000万円まで非課税となります。

対象となる資金

  • 結婚費用:300万円まで(挙式費用、新居の家賃・敷金など)
  • 子育て費用:1,000万円まで(妊娠・出産費用、保育料など)

住宅取得等資金の贈与(最大1,000万円)

父母や祖父母が、子・孫の住宅取得資金として贈与する場合、一定額まで非課税となります。

非課税限度額

  • 省エネ等住宅:1,000万円
  • 一般住宅:500万円

適用要件

  • 贈与者:直系尊属(父母、祖父母など)
  • 受贈者:18歳以上の子・孫
  • 受贈者の年間所得が2,000万円以下
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅を取得し、居住する

活用例

祖父から孫(25歳)へ、省エネ住宅の購入資金として1,500万円を贈与する場合

住宅取得等資金の非課税:1,000万円
暦年贈与の基礎控除:110万円
課税対象:390万円
贈与税:390万円 × 15% - 10万円 = 48.5万円

非課税制度を活用することで、贈与税を大幅に軽減できます。

不動産の生前贈与

不動産の生前贈与は、現金の贈与とは異なる特徴があります。

不動産贈与のメリット

将来値上がりが期待できる不動産の贈与

不動産の評価額が将来上昇する見込みがある場合、早めに贈与することで相続税を節税できます。

収益不動産の贈与

賃貸アパートなど収益を生む不動産を贈与すると、その後の賃料収入は受贈者のものとなり、贈与者の財産増加を抑えられます。

不動産贈与の注意点

贈与税以外の費用がかかる

不動産の贈与には、以下の費用がかかります。

  • 登録免許税:固定資産税評価額の2%
  • 不動産取得税:固定資産税評価額の3%(住宅用は軽減措置あり)
  • 司法書士報酬

例:固定資産税評価額2,000万円の不動産を贈与

登録免許税:2,000万円 × 2% = 40万円
不動産取得税:2,000万円 × 3% = 60万円
司法書士報酬:約10万円
合計:約110万円

相続の場合、登録免許税は0.4%、不動産取得税は非課税なので、贈与より相続の方が登記費用は安くなります。

小規模宅地等の特例が使えない

生前贈与した不動産には、相続税の小規模宅地等の特例(最大80%減額)が適用できません。この特例は相続で取得した場合のみ適用されます。

不動産贈与が有利なケース

  • 将来大幅に値上がりが見込まれる不動産
  • 収益を生む不動産(アパート、駐車場など)
  • 相続時精算課税制度を活用する場合

北九州での生前対策のポイント

北九州市内で相続対策を検討する際のポイントをご紹介します。

不動産評価の地域特性

北九州市内の不動産は、地域によって評価額が大きく異なります。小倉北区や八幡西区などの中心部では路線価が高く、郊外では倍率方式で評価されることが多いです。

地域の不動産事情に詳しい税理士に相談することで、適切な評価と効果的な対策が可能になります。

早期からの対策が重要

相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算されるため、相続対策は早めに始めることが重要です。

推奨される開始時期

  • 60歳代から暦年贈与を開始
  • 元気なうちに財産の棚卸しと対策の検討
  • 定期的に税理士と相談し、対策を見直す

家族全体での計画

生前贈与は、贈与者だけでなく、受贈者や他の相続人の理解と協力が必要です。家族全体で話し合い、納得した上で進めることが、将来のトラブルを防ぐことにつながります。

税理士に相談するメリット

生前贈与は税務上の専門知識が必要であり、誤った方法で贈与すると、かえって税負担が増えることがあります。

税理士に相談するメリット

  • 個別の状況に応じた最適な贈与方法の提案
  • 贈与契約書の作成サポート
  • 贈与税・相続税のシミュレーション
  • 税務署への申告代行
  • 将来の税務調査への備え

相談すべきタイミング

  • 贈与を検討し始めたとき
  • まとまった金額を贈与したいとき
  • 不動産など高額な財産を贈与したいとき
  • 相続税がかかりそうなとき

まとめ

生前贈与は、計画的に実施することで、相続税の節税と円滑な資産承継を実現できる有効な手段です。暦年贈与の年110万円控除、相続時精算課税制度、各種非課税制度を適切に活用することで、大きな節税効果が期待できます。

ただし、贈与税の仕組みは複雑であり、誤った方法で贈与すると思わぬ税負担が発生する可能性があります。特に不動産の贈与や高額な贈与を検討する場合は、事前に税理士に相談し、適切な方法を選択することが重要です。

北九州で相続対策をお考えの方は、地域の不動産事情に精通した税理士に早めに相談し、ご家族の状況に合わせた最適な生前対策を進めましょう。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な贈与税・相続税の対策については、税理士にご相談ください。

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