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親が亡くなったら何をする?相続税の期限と手続きを完全ガイド
2025-10-14
- 相続税
- 税務実務
親が亡くなったら最初にすべきこと
大切な方が亡くなられた際、悲しみの中でも多くの手続きを進めなければなりません。初めての相続では何から手をつければよいか分からず、不安を感じる方も多いでしょう。
この記事では、相続発生から相続税申告までの流れを時系列で解説し、期限内に適切な手続きを完了するためのポイントをお伝えします。
相続手続きの全体像
- 死亡届の提出から始まる各種手続き
- 相続人の確定と相続財産の調査
- 遺産分割協議と相続税申告
- 名義変更などの事後手続き
相続手続きのタイムライン
相続に関する手続きには、それぞれ期限が定められています。期限を過ぎると、ペナルティが課されたり、特例が使えなくなったりする場合があるため、スケジュールを把握しておくことが重要です。
死亡直後〜7日以内
死亡届の提出
死亡を知った日から7日以内に、市区町村役場に死亡届を提出します。通常は葬儀会社が代行してくれます。
提出先
- 死亡地、本籍地、届出人の住所地のいずれかの市区町村役場
- 北九州市内で死亡された場合は、各区役所で手続き可能
必要書類
- 死亡届(医師の死亡診断書が添付されたもの)
- 届出人の印鑑
その他の初期手続き
- 葬儀の手配
- 親族への連絡
- 遺言書の有無の確認
死亡後14日以内
年金受給停止の手続き
国民年金は14日以内、厚生年金は10日以内に年金事務所または市区町村役場で受給停止の手続きを行います。
世帯主変更届(該当する場合)
死亡者が世帯主だった場合、14日以内に市区町村役場に世帯主変更届を提出します。
健康保険証の返却
国民健康保険証や後期高齢者医療被保険者証を市区町村役場に返却します。
死亡後3か月以内
相続放棄・限定承認の期限
相続人は、相続を知った日から3か月以内に、以下のいずれかを選択します。
単純承認
- プラスの財産もマイナスの財産(借金など)も全て相続する
- 特に手続きは不要(3か月以内に相続放棄または限定承認をしなければ、自動的に単純承認となります)
相続放棄
- 全ての相続財産を放棄する
- 被相続人に多額の借金がある場合などに選択
- 家庭裁判所に申述書を提出
限定承認
- プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続する
- 相続人全員が共同で家庭裁判所に申述
- 実務上、あまり利用されない
注意点
相続放棄をするかどうか判断するためには、被相続人の財産と債務を早急に調査する必要があります。財産調査に時間がかかる場合は、家庭裁判所に期間延長を申し立てることができます。
死亡後4か月以内
準確定申告の提出
被相続人が確定申告の必要な人だった場合、相続人は死亡日から4か月以内に「準確定申告」を行います。
準確定申告が必要なケース
- 個人事業主だった
- 不動産収入があった
- 給与所得が2,000万円を超えていた
- 2か所以上から給与を受けていた
- 年金収入が400万円を超えていた
準確定申告の対象期間
- 1月1日から死亡日まで
例
- 2025年6月15日に死亡した場合:2025年1月1日〜6月15日の所得について、2025年10月15日までに申告
提出先
- 被相続人の住所地を管轄する税務署
必要書類
- 確定申告書
- 付表(相続人全員の氏名、住所、相続分を記載)
- 各種控除証明書
還付金がある場合
準確定申告で還付金が発生する場合、その還付金は相続財産となります。
死亡後10か月以内
相続税の申告・納税
相続税がかかる場合、死亡日の翌日から10か月以内に相続税の申告と納税を行います。これが相続手続きの中で最も重要な期限です。
例
- 2025年6月15日に死亡した場合:2026年4月15日までに申告・納税
提出先
- 被相続人の住所地を管轄する税務署
- 北九州市内にお住まいだった場合は、小倉税務署または八幡税務署
納税方法
- 原則として現金一括納付
- 一括納付が困難な場合は、延納(分割払い)または物納も可能
その他の期限のある手続き
遺留分侵害額請求:相続開始を知った日から1年以内
遺言によって遺留分を侵害された相続人は、1年以内に遺留分侵害額請求を行うことができます。
相続税の更正の請求:申告期限から5年以内
相続税を多く納めすぎた場合、申告期限から5年以内であれば更正の請求ができます。
初めての相続:何から始めるか
ステップ1:遺言書の確認
まず、遺言書の有無を確認します。遺言書がある場合、原則としてその内容に従って遺産分割を行います。
自筆証書遺言が見つかった場合
自宅で遺言書を発見した場合、勝手に開封してはいけません。家庭裁判所で「検認」の手続きが必要です。
検認の手続き
- 家庭裁判所に検認の申立て
- 相続人全員に通知
- 検認期日に遺言書を開封
公正証書遺言の場合
公正証書遺言は、公証役場で作成された遺言書です。検認の手続きは不要で、すぐに内容を確認できます。公証役場で遺言書の有無を検索することもできます。
法務局での自筆証書遺言保管制度
2020年7月以降、自筆証書遺言を法務局で保管できる制度が始まりました。この制度を利用している場合、検認は不要です。
ステップ2:相続人の確定
誰が相続人になるのかを確定します。法定相続人は、民法で定められています。
法定相続人の順位
第1順位:配偶者と子
- 配偶者:常に相続人
- 子:実子、養子、非嫡出子(認知された子)
第2順位:配偶者と直系尊属(父母、祖父母)
- 子がいない場合、父母が相続人
- 父母がいない場合は祖父母
第3順位:配偶者と兄弟姉妹
- 子も直系尊属もいない場合、兄弟姉妹が相続人
相続人の確定に必要な書類
相続人を確定するためには、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取得します。
取得する戸籍
- 被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本
- 相続人全員の現在の戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
戸籍謄本は、本籍地の市区町村役場で取得します。転籍している場合は、それぞれの本籍地から取り寄せる必要があります。
ステップ3:相続財産の調査
相続財産を漏れなく把握することが重要です。財産の種類によって調査方法が異なります。
プラスの財産
不動産
- 固定資産税の納税通知書で確認
- 市区町村役場で「名寄帳」を取得(所有する全ての不動産のリスト)
- 法務局で登記事項証明書を取得
預貯金
- 通帳、キャッシュカードから金融機関を特定
- 各金融機関に残高証明書を請求
- 郵便物やネット銀行のメールも確認
有価証券(株式、投資信託など)
- 証券会社からの報告書
- 上場株式の場合、証券保管振替機構(ほふり)に登録銘柄の開示請求
生命保険
- 保険証券、保険会社からの通知
- 生命保険協会の「生命保険契約照会制度」を利用
その他の財産
- 自動車:車検証で確認
- 貴金属、美術品:自宅を捜索
- ゴルフ会員権、リゾート会員権
- 貸付金:金銭消費貸借契約書
マイナスの財産(債務)
借入金
- 金融機関からの借入
- 住宅ローン
- クレジットカードの未払金
未払金
- 医療費、入院費
- 介護費用
- 税金、社会保険料
調査方法
- 信用情報機関(CIC、JICC、全国銀行個人信用情報センター)に照会
- 郵便物で請求書がないか確認
- 金融機関に問い合わせ
ステップ4:財産目録の作成
調査した財産を一覧表にまとめます。これを「財産目録」といいます。
財産目録の記載内容
- 財産の種類
- 所在地または所在
- 数量
- 評価額
財産目録は、遺産分割協議や相続税申告の基礎資料となります。
ステップ5:遺産分割協議
相続人全員で、誰がどの財産を相続するかを話し合います。これを「遺産分割協議」といいます。
遺産分割協議の流れ
- 相続人全員が参加
- 各財産の取得者を決定
- 全員が合意
- 遺産分割協議書を作成
- 相続人全員が署名・押印(実印)
遺産分割協議書
遺産分割協議の結果を書面にまとめたものです。不動産の名義変更や銀行口座の解約に必要となります。
記載内容
- 被相続人の氏名、死亡日、本籍、最後の住所
- 各相続人が取得する財産の詳細
- 作成日
- 相続人全員の署名・押印(実印)、印鑑証明書の添付
法定相続分と異なる分割も可能
遺産分割協議では、相続人全員が合意すれば、法定相続分と異なる割合で分割することもできます。
例
- 配偶者が全ての財産を相続
- 長男が不動産、次男が預貯金を相続
- 事業を継ぐ子が事業用資産を多く相続
ステップ6:相続税の申告
相続財産が基礎控除額を超える場合、相続税の申告が必要です。
基礎控除額の計算
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
申告が必要かどうかの判断
財産目録を基に、相続財産の総額を計算し、基礎控除額と比較します。
例:配偶者と子2人の場合
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円
相続財産:6,000万円
→ 相続税の申告が必要
申告書の作成
相続税の申告書は非常に複雑です。特に、不動産の評価や特例の適用判断には専門知識が必要なため、税理士に依頼することをお勧めします。
必要書類
- 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
- 相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明書
- 遺産分割協議書
- 不動産の登記事項証明書、固定資産税評価証明書
- 預貯金の残高証明書
- 有価証券の評価証明書
- 生命保険金の支払通知書
- 葬式費用の領収書
相続税の期限に間に合わない場合
期限に遅れるとどうなるか
無申告加算税
相続税の申告期限(10か月)までに申告しなかった場合、無申告加算税が課されます。
税率
- 納付すべき税額の50万円まで:15%
- 50万円を超える部分:20%
- 税務調査の前に自主的に申告した場合:5%
延滞税
期限までに納付しなかった場合、延滞税が課されます。
税率(2023年の場合)
- 納期限の翌日から2か月以内:年2.4%
- 納期限の翌日から2か月超:年8.7%
小規模宅地等の特例が使えなくなる
申告期限までに申告しないと、小規模宅地等の特例(最大80%減額)が適用できなくなります。この特例を使えるかどうかで、税額が大きく変わるため、期限内の申告が非常に重要です。
期限に間に合わない場合の対処法
遺産分割が間に合わない場合
遺産分割協議がまとまらず、10か月以内に分割できない場合でも、申告は必要です。
対処法:未分割申告
遺産分割が未了でも、法定相続分で仮に分割したものとして申告します。
注意点
- 配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は適用できない
- 遺産分割が確定した後、「更正の請求」で特例を適用し、還付を受けることが可能
- ただし、申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付する必要がある
財産調査が間に合わない場合
財産の把握に時間がかかり、期限に間に合わない場合でも、分かっている範囲で申告します。
後から財産が見つかった場合
- 修正申告または更正の請求を行う
- ペナルティを最小限に抑えるため、できるだけ早く対応する
納税が困難な場合
延納制度
現金で一括納付が困難な場合、分割払い(延納)が認められます。
要件
- 納付税額が10万円を超える
- 現金納付が困難な理由がある
- 担保を提供する(延納税額が100万円以下かつ延納期間が3年以下の場合は不要)
延納期間
- 最長5年(不動産の割合が高い場合は最長20年)
利子税
- 延納期間中、利子税がかかる
物納制度
延納でも納付が困難な場合、相続財産そのもので納税する「物納」が認められます。
要件
- 延納でも金銭納付が困難
- 物納に適した財産がある
- 物納申請書を申告期限までに提出
物納できる財産
- 国債、不動産、株式など
- 順位が定められており、原則として不動産、株式の順
相続を後回しにするリスク
相続手続きを放置すると、以下のようなリスクがあります。
名義変更ができない
不動産や預貯金は、相続人への名義変更が必要です。遺産分割協議が未了のまま放置すると、名義変更ができず、売却や解約もできません。
相続人が増えて複雑になる
相続人の1人が亡くなると、その相続人(孫など)が新たに加わり、遺産分割協議がさらに複雑になります。
書類の取得が困難になる
年月が経つと、戸籍謄本の取得や財産の調査が困難になります。
相続税のペナルティ
申告期限を過ぎると、無申告加算税や延滞税が課されます。
北九州での相続手続きと税理士への相談
北九州市内で相続が発生した場合、以下の機関で手続きを進めます。
主な手続き先
- 各区役所:死亡届、住民票、戸籍謄本など
- 小倉税務署・八幡税務署:相続税の申告
- 小倉北区役所・八幡西区役所など:固定資産税評価証明書
- 法務局北九州支局:不動産の登記
税理士に相談するメリット
相続税の申告は複雑であり、特に初めての相続では何をすればよいか分からないことが多いでしょう。税理士に相談することで、以下のサポートを受けられます。
- 相続税がかかるかどうかの判断
- 財産調査のアドバイス
- 相続税の計算と申告書の作成
- 節税対策の提案
- 税務調査への対応
相談すべきタイミング
- 相続が発生したらできるだけ早く
- 遅くとも相続発生から6か月以内
期限ギリギリでは十分な対策ができないため、早めに相談することが重要です。
まとめ
親が亡くなった後の手続きは、多岐にわたり、それぞれ期限が定められています。特に相続税の申告期限(10か月以内)は厳守しなければならず、期限を過ぎるとペナルティが課されます。
初めての相続では、何から始めればよいか分からないものです。まずは遺言書の確認、相続人の確定、財産調査を行い、早めに全体像を把握することが重要です。
相続税がかかる可能性がある場合や、手続きに不安がある場合は、早めに税理士に相談しましょう。北九州で相続が発生した方は、地域の事情に精通した税理士に相談することで、スムーズに手続きを進めることができます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な相続手続きや相続税申告については、税理士にご相談ください。
