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資金繰り悪化の原因と改善策を徹底解説!中小企業が実践すべき対策

2025-10-11
  • 経営
  • 税務実務

資金繰り悪化とは

資金繰り悪化とは、手元の現金が不足し、支払いが困難になる状態のことです。利益が出ていても、資金繰りが悪化すれば倒産する可能性があります(黒字倒産)。

資金繰り悪化の兆候:

  • 支払日に現金が足りない
  • 銀行借入の返済が厳しい
  • 従業員の給与支払いに不安がある
  • 取引先への支払いを延ばしてもらっている
  • 経営者が個人資金を会社に入れている

資金繰り悪化の主な原因

1. 売上減少

原因:

  • 市場の縮小
  • 競合の増加
  • 顧客離れ
  • 季節変動

影響: 売上が減ると、入ってくる現金が減り、資金繰りが悪化します。

2. 売掛金の回収遅延

原因:

  • 取引先の支払い遅延
  • 回収条件が長い(例:売上から3か月後入金)
  • 不良債権の発生

影響: 商品を売っても現金化まで時間がかかり、手元資金が不足します。

例:

  • 100万円の売上があったが、入金は3か月後
  • その間に仕入代金や人件費の支払いが発生
  • 手元現金が不足

3. 在庫過多

原因:

  • 過剰な仕入れ
  • 売れ残り商品の蓄積
  • 不良在庫の放置

影響: 在庫にお金が眠ったままで、現金化できません。

例:

  • 500万円分の在庫を抱えている
  • そのお金があれば、支払いに充てられたはず

4. 固定費の増加

原因:

  • 人件費の増加
  • 家賃の増加
  • 設備投資による減価償却費

影響: 売上が減っても固定費は削減しにくく、利益が圧迫されます。

5. 過剰な設備投資

原因:

  • 必要以上の設備投資
  • 投資回収計画の甘さ
  • 借入金による設備投資

影響: 大きな資金が一時的に流出し、借入金の返済負担も増えます。

6. 借入金返済の負担

原因:

  • 返済額が過大
  • 複数の借入の重複
  • 売上に見合わない借入

影響: 毎月の返済額が大きく、手元資金が減ります。

7. 利益率の低下

原因:

  • 価格競争による値下げ
  • 原価の上昇
  • 経費の増加

影響: 売上があっても利益が少なく、資金が貯まりません。

資金繰り悪化の改善策

1. 資金繰り表の作成

資金繰り表とは: 将来の現金の入出金を予測する表

作成方法:

  1. 月初の現金残高を記入
  2. 入金予定(売掛金回収、借入など)を記入
  3. 出金予定(買掛金支払い、人件費、借入返済など)を記入
  4. 月末の現金残高を計算

資金繰り表の例:

| 項目 | 1月 | 2月 | 3月 | |-----|-----|-----|-----| | 月初現金残高 | 500万円 | 400万円 | 350万円 | | 収入 | | | | | 売掛金回収 | 800万円 | 700万円 | 750万円 | | 借入 | 0万円 | 0万円 | 0万円 | | 収入合計 | 800万円 | 700万円 | 750万円 | | 支出 | | | | | 買掛金支払い | 500万円 | 450万円 | 480万円 | | 人件費 | 300万円 | 300万円 | 300万円 | | 家賃 | 50万円 | 50万円 | 50万円 | | その他経費 | 50万円 | 50万円 | 50万円 | | 借入返済 | 0万円 | 100万円 | 100万円 | | 支出合計 | 900万円 | 950万円 | 980万円 | | 月末現金残高 | 400万円 | 150万円 | 120万円 |

この例では、3月に資金が120万円まで減り、資金繰りが厳しくなることが予測できます。

2. 売掛金の早期回収

具体策:

回収サイトの短縮交渉:

  • 現状:売上から3か月後入金 → 目標:売上から1か月後入金
  • 取引先と交渉し、早期入金をお願いする

請求書の即座発行:

  • 商品納入後、すぐに請求書を発行
  • 入金の遅れを防ぐ

早期入金割引の提示:

  • 「1か月以内の入金で2%割引」など、早期入金にインセンティブ

ファクタリングの活用:

  • 売掛金をファクタリング会社に売却し、即座に現金化
  • 手数料はかかるが、資金繰りが改善

3. 在庫の削減

具体策:

適正在庫の計算:

  • 過去の販売実績から、必要な在庫量を計算
  • 過剰在庫を削減

セール・値引き販売:

  • 不良在庫や動きの遅い在庫を値引き販売
  • 現金化を優先

仕入れ頻度の見直し:

  • 大量仕入れから、こまめな仕入れに変更
  • 在庫を持たないビジネスモデルへの転換

4. 支払い条件の交渉

具体策:

買掛金の支払いサイト延長:

  • 仕入先と交渉し、支払い期限を延ばしてもらう
  • 現状:翌月末払い → 目標:翌々月末払い

分割払いの交渉:

  • 一括払いが難しい場合、分割払いを交渉

支払い優先順位の設定:

  • 給与、税金、社会保険料など、優先度の高い支払いを先に
  • その後、仕入先への支払い

注意点: 支払いを遅らせすぎると、信用を失い、取引停止になる可能性があります。必ず事前に相談しましょう。

5. 経費の削減

具体策:

固定費の見直し:

  • 事務所の家賃を下げる(移転、交渉)
  • 携帯電話料金プランの見直し
  • 不要な契約の解約(使っていないサブスクなど)

変動費の削減:

  • 仕入れコストの削減(仕入先の変更、値下げ交渉)
  • 外注費の見直し
  • 広告費の効率化(費用対効果の低い広告を停止)

人件費の適正化:

  • 残業の削減
  • 非正規雇用への切り替え
  • 一時的な給与カット(従業員と合意の上)

6. 売上の増加

具体策:

新規顧客の獲得:

  • 営業活動の強化
  • ネット広告、SNSマーケティング

既存顧客へのアップセル・クロスセル:

  • 関連商品の提案
  • 単価の高い商品の提案

価格の見直し:

  • 適正価格への値上げ(コストに見合った価格設定)

7. 借入金のリスケジュール

リスケジュール(リスケ)とは: 銀行と交渉し、借入金の返済条件を変更すること

具体的な変更内容:

  • 毎月の返済額を減らす
  • 返済期間を延長する
  • 一定期間、元金返済を猶予してもらう(利息のみ返済)

手順:

  1. 銀行に資金繰りの厳しさを説明
  2. 経営改善計画書を提出
  3. 返済条件の変更を交渉

メリット:

  • 毎月の返済負担が軽減され、資金繰りが改善

デメリット:

  • 総返済額が増える
  • 銀行の信用が低下し、新規借入が難しくなる

8. 新規借入の検討

資金繰りが厳しい場合: 一時的に新規借入で資金を調達

借入先:

  • メインバンク
  • 日本政策金融公庫
  • 信用保証協会付き融資

注意点:

  • 返済計画を立ててから借入
  • 無計画な借入は、将来の返済負担を増やすだけ

9. 助成金・補助金の活用

活用できる制度:

  • 雇用調整助成金
  • 事業再構築補助金
  • ものづくり補助金
  • IT導入補助金

メリット: 返済不要の資金が手に入る

注意点:

  • 申請に手間がかかる
  • 採択されないこともある

10. 不要資産の売却

具体策:

  • 使っていない設備、車両の売却
  • 不動産の売却
  • 有価証券の売却

メリット: 即座に現金が手に入る

資金繰り改善の優先順位

資金繰りが悪化している場合、以下の優先順位で対策を実施しましょう。

短期的な対策(即効性あり)

  1. 売掛金の早期回収

    • ファクタリングの活用
    • 回収催促の強化
  2. 在庫の現金化

    • セール、値引き販売
  3. 支払いの延期交渉

    • 仕入先への支払い延期依頼
  4. 経費の即座削減

    • 不要な契約の解約
  5. 不要資産の売却

中期的な対策(数か月で効果)

  1. 経費の見直し

    • 固定費の削減
    • 仕入れコストの削減
  2. 売上増加施策

    • 新規顧客獲得
    • 既存顧客へのアプローチ
  3. 借入金のリスケジュール

長期的な対策(持続的な改善)

  1. ビジネスモデルの見直し

    • 利益率の高い事業への転換
    • 在庫を持たないビジネスモデル
  2. 財務体質の強化

    • 自己資本比率の向上
    • 内部留保の確保

資金繰り悪化を予防する方法

1. 資金繰り表を毎月作成

将来3〜6か月の資金繰りを予測し、早期に対策を打つ

2. 現金預金残高の目標設定

目安: 月商の2〜3か月分の現金を常に確保

例:

  • 月商1,000万円の場合 → 現金2,000〜3,000万円を確保

3. 売掛金・在庫の適正管理

  • 売掛金の回収を徹底
  • 在庫を適正水準に保つ

4. 固定費の適正化

売上が減っても耐えられる固定費水準を維持

5. 借入金の適正管理

  • 過剰な借入を避ける
  • 返済計画を立てて借入

6. 財務状況の定期的なチェック

毎月、試算表を確認し、財務状況を把握

税理士・専門家に相談するメリット

資金繰りの悪化は、早期に専門家に相談することが重要です。

税理士に相談するメリット:

  1. 資金繰り表の作成サポート
  2. 経営改善計画書の作成(銀行リスケ時に必要)
  3. 経費削減のアドバイス
  4. 助成金・補助金の情報提供
  5. 銀行との交渉サポート

早期相談が重要な理由:

  • 資金繰りが限界に達してからでは、打てる対策が限られる
  • 早めに対策を打てば、倒産を回避できる

資金繰りに不安を感じたら、すぐに税理士や中小企業診断士に相談しましょう。

まとめ:資金繰り悪化は早期対策が鍵

資金繰り悪化の主な原因は、売上減少、売掛金回収の遅延、在庫過多、借入金返済の負担などです。改善策として、資金繰り表の作成、売掛金の早期回収、在庫削減、支払い条件の交渉、経費削減、借入金のリスケジュールなどがあります。

資金繰り悪化は、早期に気づき、対策を打つことが重要です。資金繰り表を毎月作成し、将来の資金不足を予測しましょう。資金繰りに不安を感じたら、すぐに税理士や専門家に相談することをお勧めします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な資金繰り改善については、税理士や中小企業診断士に相談することをお勧めします。

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