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相続税はいくらかかる?計算方法とシミュレーションを徹底解説
2025-10-12
- 相続税
- 税務実務
相続税とは何か
相続税とは、亡くなった方(被相続人)から財産を受け継いだ際に課される税金です。すべての相続に課税されるわけではなく、相続財産が一定額を超えた場合にのみ相続税が発生します。
相続税は国税であり、相続が発生した日(通常は被相続人が亡くなった日)の翌日から10か月以内に申告・納税する必要があります。北九州市を含む全国共通の制度ですが、地域によって不動産評価額が異なるため、実際の税額は個別に計算が必要です。
相続税の基本的な仕組み
- 相続財産の総額を計算
- 基礎控除額を差し引く
- 残った金額に対して税率を適用
- 各相続人の取得割合に応じて税額を配分
相続税がかかる人とかからない人
相続税は、相続財産が基礎控除額を超えた場合にのみ課税されます。基礎控除額は以下の計算式で求められます。
基礎控除額の計算式
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
法定相続人の数別の基礎控除額
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 | |------------|---------| | 1人 | 3,600万円 | | 2人 | 4,200万円 | | 3人 | 4,800万円 | | 4人 | 5,400万円 | | 5人 | 6,000万円 |
たとえば、配偶者と子ども2人が相続人の場合、法定相続人は3人となり、基礎控除額は4,800万円です。相続財産の総額が4,800万円以下であれば、相続税は一切かかりません。
相続税がかかる人の割合
統計によれば、実際に相続税が課税される割合は全体の約8〜9%程度です。つまり、大多数の相続では相続税は発生しません。ただし、都市部や不動産を多く所有している場合は、基礎控除を超える可能性が高まります。
相続財産の評価方法
相続税を計算するには、まず相続財産の総額を正確に把握する必要があります。財産の種類によって評価方法が異なります。
現金・預貯金
現金や預貯金は、相続開始時点の残高がそのまま評価額となります。複数の銀行口座がある場合は、すべての残高を合算します。
評価のポイント
- 相続開始日(死亡日)時点の残高
- 定期預金は額面金額に既経過利息を加算
- 外貨預金は相続開始日の為替レートで円換算
不動産(土地・建物)
不動産は相続財産の中で最も評価が複雑です。土地と建物で評価方法が異なります。
土地の評価方法
土地は主に「路線価方式」または「倍率方式」で評価します。
路線価方式 市街地にある土地は、国税庁が定める路線価を基準に評価します。路線価は、その道路に面する土地の1平方メートルあたりの価格です。
土地の評価額 = 路線価 × 面積 × 各種補正率
たとえば、路線価が20万円、面積が150平方メートルの土地の場合、基本的な評価額は以下のようになります。
20万円 × 150㎡ = 3,000万円
実際には、土地の形状や間口、奥行きなどに応じて補正率が適用されます。
倍率方式 路線価が定められていない地域では、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて評価します。
土地の評価額 = 固定資産税評価額 × 倍率
建物の評価方法
建物は固定資産税評価額がそのまま相続税評価額となります。
建物の評価額 = 固定資産税評価額
小規模宅地等の特例
自宅や事業用の土地については、「小規模宅地等の特例」を適用できる場合があります。この特例を使えば、土地の評価額を最大80%減額できます。
特例の概要
| 用途 | 減額割合 | 限度面積 | |------|---------|---------| | 居住用(自宅) | 80%減額 | 330㎡まで | | 事業用 | 80%減額 | 400㎡まで | | 貸付用 | 50%減額 | 200㎡まで |
たとえば、評価額3,000万円の自宅土地(200㎡)に特例を適用すると、評価額は600万円(80%減額)になります。
株式・有価証券
上場株式は、相続開始日の終値など、複数の価格のうち最も低い金額で評価します。
上場株式の評価方法
以下の4つの価格のうち、最も低い金額を採用します。
- 相続開始日の終値
- 相続開始月の終値の平均額
- 相続開始月の前月の終値の平均額
- 相続開始月の前々月の終値の平均額
非上場株式の評価
同族会社の株式など非上場株式は、「類似業種比準方式」「純資産価額方式」などで評価します。評価が非常に複雑なため、税理士への相談が推奨されます。
その他の財産
生命保険金
生命保険金には非課税枠があります。
非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数
たとえば、法定相続人が3人で保険金が2,000万円の場合、非課税限度額は1,500万円なので、500万円が課税対象となります。
退職金
退職金も生命保険金と同様に非課税枠があります。
非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数
自動車・貴金属・美術品など
時価で評価します。専門家による鑑定が必要な場合もあります。
債務・葬式費用の控除
相続財産からは、被相続人の債務や葬式費用を差し引くことができます。
控除できるもの
- 借入金、未払金
- 未払いの税金、医療費
- 葬式費用(通夜、告別式、火葬費用など)
- お布施、戒名料
控除できないもの
- 香典返し
- 初七日、四十九日などの法要費用
- お墓、仏壇の購入費用
相続税の計算方法
相続税の計算は、以下の手順で行います。
ステップ1:課税遺産総額の計算
まず、相続財産の総額から基礎控除額を差し引きます。
課税遺産総額 = 相続財産の総額 - 基礎控除額
計算例
- 相続財産の総額:8,000万円
- 法定相続人:配偶者と子ども2人(計3人)
- 基礎控除額:3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円
課税遺産総額 = 8,000万円 - 4,800万円 = 3,200万円
ステップ2:法定相続分による取得金額の計算
課税遺産総額を、各相続人が法定相続分で取得したものと仮定して分割します。
法定相続分
- 配偶者:1/2
- 子ども1人:1/2 ÷ 2人 = 1/4
- 子ども2人:1/2 ÷ 2人 = 1/4
各相続人の取得金額
- 配偶者:3,200万円 × 1/2 = 1,600万円
- 子ども1:3,200万円 × 1/4 = 800万円
- 子ども2:3,200万円 × 1/4 = 800万円
ステップ3:相続税の総額の計算
各相続人の取得金額に税率を適用して、相続税の総額を計算します。
相続税の速算表
| 法定相続分に応じる取得金額 | 税率 | 控除額 | |---------------------|------|-------| | 1,000万円以下 | 10% | - | | 3,000万円以下 | 15% | 50万円 | | 5,000万円以下 | 20% | 200万円 | | 1億円以下 | 30% | 700万円 | | 2億円以下 | 40% | 1,700万円 | | 3億円以下 | 45% | 2,700万円 | | 6億円以下 | 50% | 4,200万円 | | 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
各相続人の相続税額の計算
配偶者の相続税額
1,600万円 × 15% - 50万円 = 190万円
子ども1の相続税額
800万円 × 10% = 80万円
子ども2の相続税額
800万円 × 10% = 80万円
相続税の総額
190万円 + 80万円 + 80万円 = 350万円
ステップ4:各相続人の納付税額の計算
相続税の総額を、実際の取得割合に応じて各相続人に配分します。
実際の取得割合の例
- 配偶者:5,000万円(62.5%)
- 子ども1:1,500万円(18.75%)
- 子ども2:1,500万円(18.75%)
各相続人の税額
- 配偶者:350万円 × 62.5% = 218.75万円
- 子ども1:350万円 × 18.75% = 65.625万円
- 子ども2:350万円 × 18.75% = 65.625万円
ステップ5:税額控除の適用
ここから各種の税額控除を差し引きます。
配偶者の税額軽減
配偶者は、以下のいずれか多い金額まで相続税がかかりません。
- 1億6,000万円
- 配偶者の法定相続分相当額
上記の例では、配偶者の取得額は5,000万円なので、配偶者の税額218.75万円は全額控除され、配偶者の納付税額は0円となります。
最終的な納付税額
- 配偶者:0円
- 子ども1:65.625万円 → 約66万円
- 子ども2:65.625万円 → 約66万円
- 合計:約132万円
相続税のシミュレーション例
ケース1:配偶者と子ども2人、財産5,000万円
前提条件
- 相続財産:現金3,000万円、自宅不動産2,000万円
- 法定相続人:配偶者、子ども2人(計3人)
- 基礎控除額:4,800万円
結果
課税遺産総額 = 5,000万円 - 4,800万円 = 200万円
課税遺産総額が200万円と少額なため、相続税の総額は約20万円程度です。配偶者の税額軽減を適用すれば、実際の納付税額はさらに少なくなります。
ケース2:配偶者と子ども1人、財産1億円
前提条件
- 相続財産:現金2,000万円、自宅不動産4,000万円、有価証券4,000万円
- 法定相続人:配偶者、子ども1人(計2人)
- 基礎控除額:4,200万円
計算
課税遺産総額 = 1億円 - 4,200万円 = 5,800万円
法定相続分による取得金額
- 配偶者:5,800万円 × 1/2 = 2,900万円
- 子ども:5,800万円 × 1/2 = 2,900万円
各相続人の相続税額
- 配偶者:2,900万円 × 15% - 50万円 = 385万円
- 子ども:2,900万円 × 15% - 50万円 = 385万円
- 相続税の総額:770万円
実際の取得割合が法定相続分と同じ場合
- 配偶者:385万円(配偶者の税額軽減で0円)
- 子ども:385万円
- 実質的な納付税額:約385万円
ケース3:独身、子どもなし、財産7,000万円
前提条件
- 相続財産:現金3,000万円、自宅不動産4,000万円
- 法定相続人:兄弟姉妹2人
- 基礎控除額:4,200万円
計算
課税遺産総額 = 7,000万円 - 4,200万円 = 2,800万円
法定相続分による取得金額
- 兄弟1:2,800万円 × 1/2 = 1,400万円
- 兄弟2:2,800万円 × 1/2 = 1,400万円
各相続人の相続税額
- 兄弟1:1,400万円 × 15% - 50万円 = 160万円
- 兄弟2:1,400万円 × 15% - 50万円 = 160万円
- 相続税の総額:320万円
兄弟姉妹は2割加算の対象
配偶者や一親等の血族以外が相続する場合、相続税額が2割加算されます。
- 兄弟1:160万円 × 1.2 = 192万円
- 兄弟2:160万円 × 1.2 = 192万円
- 実質的な納付税額:約384万円
相続税を減らす方法
生前贈与の活用
毎年110万円までの贈与は非課税です。計画的に生前贈与を行うことで、相続財産を減らし、相続税を節税できます。
暦年贈与
- 1人あたり年間110万円まで非課税
- 複数人に贈与すれば、さらに効果的
- 相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算される点に注意
相続時精算課税制度
- 60歳以上の親・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与
- 累計2,500万円まで非課税
- ただし、相続時に精算が必要
小規模宅地等の特例の活用
自宅や事業用の土地は、小規模宅地等の特例を適用することで、評価額を最大80%減額できます。この特例を最大限活用することが、相続税節税の重要なポイントです。
適用要件
- 配偶者が取得する場合:無条件で適用可能
- 同居親族が取得する場合:相続開始前から同居し、相続後も居住・所有を継続
生命保険の活用
生命保険金の非課税枠(500万円 × 法定相続人の数)を活用することで、現金を非課税で相続人に残せます。
養子縁組
養子を迎えることで法定相続人の数が増え、基礎控除額が増加します。ただし、相続税の計算上、実子がいる場合は養子1人まで、実子がいない場合は養子2人までしか法定相続人に含められません。
北九州での相続税申告と税理士への相談
相続税の計算は複雑であり、特に不動産の評価や特例の適用判断には専門知識が必要です。北九州市内で相続が発生した場合、地域の不動産事情に精通した税理士に相談することをお勧めします。
税理士に相談するメリット
- 正確な財産評価
- 各種特例の適用判断
- 節税対策の提案
- 申告書の作成と提出代行
- 税務調査への対応
相続税申告が必要なケース
- 相続財産が基礎控除額を超える場合
- 小規模宅地等の特例を適用する場合(特例適用後に税額が0円でも申告が必要)
申告期限
相続税の申告・納税期限は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。期限を過ぎると、無申告加算税や延滞税が課される可能性があります。
まとめ
相続税は、相続財産が基礎控除額を超えた場合に課税されます。基礎控除額は法定相続人の数によって変動し、多くの場合は3,600万円から6,000万円程度です。
相続税の計算は、財産の評価、課税遺産総額の算出、税率の適用、各種控除の適用という複数のステップを経て行われます。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用することで、大幅に税額を減らせる可能性があります。
相続税がいくらかかるのかを正確に知るには、財産の種類や評価方法、相続人の構成、適用できる特例など、多くの要素を考慮する必要があります。北九州で相続が発生した場合や、相続対策を検討している場合は、早めに税理士に相談し、適切なシミュレーションと対策を行うことが重要です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な相続税の計算や申告については、税理士にご相談ください。
