BLOGブログ
黒字倒産はなぜ起こる?原因と防止策を徹底解説
2025-11-11
- 経理
- 税務実務
黒字倒産とは
黒字倒産とは、損益計算書上は利益が出ているにもかかわらず、資金繰りが悪化して倒産することです。「勘定合って銭足らず」と言われる状態です。
黒字倒産の定義:
- 損益計算書:黒字(利益が出ている)
- 資金繰り:悪化(現金が不足)
- 結果:倒産
なぜ黒字なのに倒産するのか: 損益計算書の利益と、実際の現金の動きは一致しないため。
黒字倒産が起こる原因
1. 売掛金の回収遅延
具体例:
- 大口の売上があったが、入金は3か月後
- 損益計算書では売上が計上されているが、現金はまだ入っていない
なぜ倒産するのか:
- 売上は計上されているので、損益計算書上は黒字
- しかし、現金が入っていないため、仕入代金や給料が払えない
実例:
売上:1000万円(3か月後入金予定)
仕入:600万円(当月支払)
給料:200万円(当月支払)
利益:200万円(黒字)
しかし、現金が不足して支払いができず倒産
2. 在庫の過剰
具体例:
- 商品を大量に仕入れたが、売れ残っている
- 損益計算書上は在庫として資産計上されているが、現金化できていない
なぜ倒産するのか:
- 在庫は資産として計上されるため、損益計算書には影響しない
- しかし、仕入代金は現金で支払っているため、現金が減少
実例:
在庫:500万円(売れ残り)
仕入代金の支払:500万円(現金で支払済)
現金:マイナス500万円
損益計算書上は黒字だが、現金が不足して倒産
3. 設備投資
具体例:
- 新しい機械を購入(1000万円)
- 損益計算書上は減価償却費のみが計上される
なぜ倒産するのか:
- 機械の購入代金は現金で一括支払い(1000万円)
- しかし、損益計算書には減価償却費(例:100万円/年)のみが計上される
- 現金は1000万円減少しているが、損益計算書には100万円しか反映されない
実例:
機械購入:1000万円(現金で支払)
減価償却費:100万円/年(損益計算書に計上)
現金は1000万円減少しているが、損益計算書は黒字
4. 借入金の返済
具体例:
- 銀行からの借入金を返済(元金500万円)
- 損益計算書には元金返済は計上されない
なぜ倒産するのか:
- 借入金の元金返済は、損益計算書に影響しない
- しかし、現金は減少する
実例:
借入金の返済(元金):500万円(現金で支払)
利息:50万円(損益計算書に計上)
現金は550万円減少しているが、損益計算書には利息50万円のみ反映
5. 急激な売上増加
具体例:
- 売上が急激に増加
- 仕入代金の支払が先行し、売上の入金が遅れる
なぜ倒産するのか:
- 売上が増えるほど、仕入代金の支払が増える
- 売上の入金が遅れると、現金が不足する
実例:
1月の売上:100万円 → 6月の売上:1000万円
仕入代金:当月支払
売上代金:3か月後入金
売上が急増したことで、仕入代金の支払が増加
入金が追いつかず、現金が不足して倒産
損益と資金繰りの違い
損益計算書(P/L)
内容:
- 一定期間の収益と費用を計上
- 利益を計算
特徴:
- 現金の動きとは一致しない
- 発生主義(取引が発生した時点で計上)
資金繰り表
内容:
- 現金の入出金を記録
- 現金残高を把握
特徴:
- 実際の現金の動きを反映
- 現金主義(現金が動いた時点で計上)
損益と資金繰りの違いの例
例1: 売掛金
- 損益計算書:売上として計上(現金が入っていなくても)
- 資金繰り表:入金時に計上
例2: 減価償却費
- 損益計算書:減価償却費として計上
- 資金繰り表:計上しない(現金は動いていない)
例3: 借入金の返済
- 損益計算書:元金返済は計上しない
- 資金繰り表:返済時に計上
黒字倒産の防止策
1. 資金繰り表の作成
内容:
- 毎月の現金の入出金を予測
- 現金残高を把握
作成方法:
【資金繰り表】
前月繰越:100万円
当月入金:500万円(売上代金、借入金など)
当月出金:450万円(仕入代金、給料、家賃など)
次月繰越:150万円
ポイント:
- 3か月先まで予測
- 現金不足が予想されたら、早めに対策
2. 売掛金の回収管理
対策:
- 回収サイトを短縮する(3か月 → 1か月)
- 前受金を受け取る
- 支払条件の見直し
ポイント:
- 売掛金が増えすぎないように管理
- 回収遅延があれば、すぐに督促
3. 在庫の適正化
対策:
- 在庫を必要最小限に
- 売れ筋商品に絞る
- 不良在庫は処分
ポイント:
- 在庫回転率を上げる
- 在庫は現金と同じと認識
4. 設備投資の慎重な判断
対策:
- 設備投資は必要最小限に
- リースの活用(一括支払を避ける)
- 投資対効果を慎重に検討
ポイント:
- 現金の流出を抑える
5. 借入金の適正管理
対策:
- 返済計画を立てる
- 返済負担が過大にならないようにする
- 借入金は事業資金の範囲内に
ポイント:
- 借入金の返済は、損益計算書に反映されない
6. 銀行との関係強化
対策:
- 定期的に試算表を提出
- 資金繰りが悪化する前に相談
- 融資枠を確保しておく
ポイント:
- 資金不足になる前に、融資を受けられる体制を整える
資金繰りの改善方法
1. 入金を早める
方法:
- 前受金の受取
- 回収サイトの短縮
- 現金売上の増加
2. 出金を遅らせる
方法:
- 支払サイトの延長
- リースの活用
- 分割払いの交渉
3. 在庫を減らす
方法:
- 不良在庫の処分
- 在庫回転率の向上
4. 銀行融資の活用
方法:
- 運転資金の借入
- つなぎ融資の活用
税理士に相談するメリット
黒字倒産を防ぐには、税理士に相談することが有効です。
税理士のサポート内容:
- 資金繰り表の作成支援
- 資金繰りの改善策の提案
- 銀行融資のサポート
- 月次試算表の作成と経営アドバイス
- 経営計画の策定支援
資金繰りに不安がある方は、早めに税理士に相談しましょう。
まとめ
黒字倒産は、損益計算書上は黒字でも、資金繰りが悪化して起こります。原因は、売掛金の回収遅延、在庫の過剰、設備投資、借入金の返済などです。防止策として、資金繰り表の作成、売掛金の回収管理、在庫の適正化が重要です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な資金繰り対策については、税理士に相談することをお勧めします。
現在弊社では、ZOOMを利用したオンラインによる面談を行っております。
© 税理士 富下会計事務所
