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電子帳簿保存法・インボイス制度対応サポート|税理士が解説する対応方法
2025-11-12
- 税務実務
電子帳簿保存法とは
電子帳簿保存法とは、帳簿や書類を電子データで保存することを認める法律です
従来は、紙で保存することが原則でしたが、電子帳簿保存法により、一定の要件を満たせば、電子データでの保存が認められるようになりました
電子帳簿保存法の改正
2022年1月に電子帳簿保存法が改正され、電子取引データの保存が義務化されました
さらに、2024年1月からは、猶予期間が終了し、完全義務化となっています
改正のポイント
- 電子取引データは電子で保存することが義務
- 紙での保存は認められない
- 要件が緩和され、対応しやすくなった
電子帳簿保存法の3つの区分
電子帳簿保存法は、以下の3つに区分されます
1. 電子帳簿等保存
会計ソフトで作成した帳簿や決算書を電子データで保存すること
2. スキャナ保存
紙で受領した領収書や請求書をスキャンして電子データで保存すること
3. 電子取引データ保存(義務)
電子メールやクラウドで受領した請求書・領収書を電子データで保存すること
重要ポイント
電子取引データ保存は義務です。対応しないと、税務調査で青色申告の承認が取り消される可能性があります
電子取引データ保存の対応方法
電子取引データ保存について、具体的な対応方法を解説します
電子取引とは
電子取引とは、以下のような取引です
電子取引の例
- メールで受領した請求書・領収書(PDF)
- Amazonなどのネット通販の領収書
- クラウドサービスの請求書
- クレジットカードの利用明細(Web明細)
- 交通系ICカードの利用履歴
- スマホ決済の利用履歴
保存要件
電子取引データを保存する際の要件は、以下の通りです
保存要件
-
真実性の確保
- タイムスタンプの付与、または
- データの訂正・削除ができないシステムの使用、または
- 訂正・削除の記録が残るシステムの使用、または
- 訂正・削除の防止に関する事務処理規程の策定
-
可視性の確保
- システムの概要書等の備付け
- ディスプレイ・プリンタの備付け
- 検索機能の確保(日付、金額、取引先で検索できること)
対応方法
中小企業が実際に対応する方法を紹介します
推奨される対応方法
- 電子取引データ(PDF等)をフォルダに保存
- ファイル名に「日付_金額_取引先」を記載(例:20250115_10000_ABC株式会社.pdf)
- 事務処理規程を策定
この方法であれば、追加コストをかけずに対応できます
事務処理規程
国税庁のホームページにサンプルがあります。自社用にカスタマイズして使用します
会計ソフトを使う方法
クラウド会計ソフト(freee、マネーフォワードなど)には、電子帳簿保存法に対応した機能があります
会計ソフトにPDFをアップロードすれば、自動的に要件を満たした保存ができます
紙で受領した場合
電子取引ではなく、紙で請求書・領収書を受領した場合は、従来通り紙で保存します
ただし、スキャナ保存を利用すれば、紙をスキャンして電子データで保存することもできます(任意)
インボイス制度とは
インボイス制度とは、**正式には「適格請求書等保存方式」**と呼ばれる制度です
2023年10月1日から開始されました
インボイス制度の目的
消費税の仕入税額控除を適正に行うため、適格請求書(インボイス)の保存を義務付ける制度です
適格請求書(インボイス)とは
適格請求書とは、以下の事項が記載された請求書です
適格請求書の記載事項
- 発行事業者の氏名または名称
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額および適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称
- インボイス登録番号(T+13桁)
インボイス登録番号
インボイスを発行するには、インボイス登録番号が必要です
インボイス登録番号を取得するには、税務署に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出します
登録できる事業者
課税事業者のみ登録できます
免税事業者は、課税事業者になることを選択すれば、登録できます
免税事業者への影響
免税事業者(年間売上1,000万円以下の事業者)は、インボイスを発行できません
取引先が課税事業者の場合、インボイスがないと仕入税額控除ができないため、取引を敬遠される可能性があります
免税事業者の選択肢
- 免税事業者のまま(インボイス登録しない)
- 課税事業者になり、インボイス登録する
どちらが有利かは、取引先や売上規模によって異なります
インボイス制度への対応方法
インボイス制度への対応方法を解説します
課税事業者の対応
1. インボイス登録
税務署に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出します
2. 請求書フォーマットの変更
請求書にインボイス登録番号、税率ごとの消費税額等を記載します
3. 会計ソフトの設定変更
会計ソフトでインボイス対応の設定を行います
4. 取引先のインボイス登録確認
取引先がインボイス登録事業者かどうか確認します
免税事業者からの仕入は、仕入税額控除ができなくなるため、注意が必要です
免税事業者の対応
1. 課税事業者になるか検討
取引先が法人や課税事業者の場合、課税事業者になることを検討します
2. インボイス登録
課税事業者になる場合、インボイス登録を行います
3. 消費税の申告
課税事業者になると、消費税の申告が必要になります
4. 簡易課税の検討
消費税の計算方法として、簡易課税を選択できます
簡易課税は、売上の消費税から、みなし仕入率を使って仕入の消費税を計算する方法で、事務負担が軽減されます
インボイスの保存
受領したインボイスは、7年間保存する必要があります
電子データで受領した場合は、電子帳簿保存法の要件を満たして保存します
税理士による電子帳簿保存法対応サポート
税理士が提供する電子帳簿保存法対応サポートの内容を紹介します
現状診断
取引の確認
電子取引がどの程度あるか、現状を確認します
保存方法の確認
現在、電子取引データをどのように保存しているか確認します
対応方法の提案
最適な対応方法の提案
企業の規模や取引状況に応じて、最適な対応方法を提案します
会計ソフトの活用
クラウド会計ソフトを活用した対応方法を提案します
事務処理規程の作成
サンプルの提供
事務処理規程のサンプルを提供します
カスタマイズ
自社の実態に合わせて、事務処理規程をカスタマイズします
運用ルールの策定
業務フローの整理
電子取引データの受領から保存までの業務フローを整理します
役割分担の明確化
誰が、どの業務を担当するか明確にします
従業員への説明
説明会の実施
従業員向けに、電子帳簿保存法の説明会を実施します
マニュアルの作成
従業員向けに、操作マニュアルを作成します
税務調査対応
保存状況のチェック
電子取引データが適切に保存されているか、定期的にチェックします
税務調査時のサポート
税務調査が入った際、電子取引データの提示をサポートします
税理士によるインボイス制度対応サポート
税理士が提供するインボイス制度対応サポートの内容を紹介します
課税事業者・免税事業者の判定
売上高の確認
年間売上高を確認し、課税事業者か免税事業者か判定します
課税事業者になるメリット・デメリット
免税事業者が課税事業者になるメリット・デメリットを説明します
インボイス登録のサポート
登録申請書の作成
適格請求書発行事業者の登録申請書を作成します
税務署への提出
登録申請書を税務署に提出します
請求書フォーマットの変更サポート
インボイス対応の請求書作成
インボイスの要件を満たした請求書フォーマットを作成します
会計ソフトの設定
会計ソフトでインボイス対応の請求書を作成できるよう設定します
取引先の確認サポート
取引先のインボイス登録確認
取引先がインボイス登録事業者かどうか確認します
免税事業者からの仕入の対応
免税事業者からの仕入がある場合、どのように対応するか提案します
消費税申告のサポート
消費税の計算
課税事業者になった場合、消費税の計算を行います
簡易課税の選択
簡易課税を選択すべきかシミュレーションします
消費税申告書の作成
消費税申告書を作成し、税務署に提出します
経過措置の説明
経過措置の内容
インボイス制度開始後も、一定期間は免税事業者からの仕入の一部を控除できる経過措置があります
経過措置のスケジュール
- 2023年10月〜2026年9月:80%控除可能
- 2026年10月〜2029年9月:50%控除可能
- 2029年10月〜:控除不可
電子帳簿保存法・インボイス制度対応の費用
税理士に依頼する場合の費用を紹介します
電子帳簿保存法対応サポート費用
初期サポート
- 現状診断・対応方法提案:3万円〜5万円
- 事務処理規程の作成:2万円〜3万円
- 運用ルールの策定:3万円〜5万円
- 従業員への説明会:2万円〜3万円
合計
10万円〜16万円程度
顧問契約に含まれる場合
税理士と顧問契約を結んでいる場合、サポート費用が顧問料に含まれることがあります
インボイス制度対応サポート費用
インボイス登録
- 登録申請書の作成・提出:1万円〜3万円
請求書フォーマット変更
- インボイス対応の請求書作成:2万円〜5万円
消費税申告
- 消費税申告書の作成:5万円〜15万円(年1回)
顧問契約に含まれる場合
税理士と顧問契約を結んでいる場合、インボイス登録のサポートや消費税申告が顧問料に含まれることがあります
北九州で電子帳簿保存法・インボイス制度対応を相談するメリット
北九州市内の税理士事務所に相談するメリットを紹介します
対面での相談
北九州市内の税理士事務所であれば、対面で相談できます
訪問サポート
事務所に訪問してもらい、現状を確認してもらえます
従業員への説明会
会社に訪問し、従業員向けに説明会を開催してもらえます
地域の他社事例
北九州の他の企業の対応事例を共有してもらえます
同業他社の対応
同じ業種の企業がどのように対応しているか、参考にできます
課税事業者になった事例
免税事業者が課税事業者になった事例や、その後の影響を聞けます
継続的なサポート
導入後も、継続的にサポートを受けられます
定期チェック
月次訪問の際に、電子取引データが適切に保存されているかチェックしてもらえます
法改正への対応
電子帳簿保存法やインボイス制度は、今後も改正される可能性があります。改正があった際も、すぐに対応してもらえます
よくある質問
電子帳簿保存法・インボイス制度についてよくある質問に答えます
電子帳簿保存法に対応しないとどうなりますか
電子取引データを適切に保存していない場合、税務調査で青色申告の承認が取り消される可能性があります
また、経費として認められない可能性もあります
紙で印刷して保存してはいけませんか
電子取引データは、電子で保存することが義務です
紙で印刷して保存するだけでは、要件を満たしません
過去のデータも対応が必要ですか
2022年1月以降の電子取引データは、電子帳簿保存法の要件を満たして保存する必要があります
免税事業者のままでも大丈夫ですか
取引先が一般消費者や免税事業者の場合、免税事業者のままでも問題ありません
ただし、取引先が課税事業者の場合、インボイスがないと仕入税額控除ができないため、取引を敬遠される可能性があります
簡易課税とは何ですか
簡易課税とは、消費税の計算方法の一つです
売上の消費税から、みなし仕入率を使って仕入の消費税を計算します
事務負担が軽減されますが、実際の仕入率より低い場合、納税額が増える可能性があります
みなし仕入率
- 第1種(卸売業):90%
- 第2種(小売業):80%
- 第3種(製造業等):70%
- 第4種(その他の事業):60%
- 第5種(サービス業等):50%
- 第6種(不動産業):40%
インボイス登録は取り消せますか
可能です
インボイス登録を取り消す場合、「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める届出書」を税務署に提出します
会計ソフトを変更する必要がありますか
必ずしも変更する必要はありません
ただし、古い会計ソフトの場合、電子帳簿保存法やインボイス制度に対応していない可能性があります
クラウド会計ソフトであれば、自動的にアップデートされ、対応できます
対応のスケジュール
電子帳簿保存法・インボイス制度への対応スケジュールを紹介します
電子帳簿保存法
2022年1月〜
電子取引データの保存が義務化(2年間の猶予期間あり)
2024年1月〜
完全義務化
今すぐ対応が必要
まだ対応していない企業は、早急に対応する必要があります
インボイス制度
2023年10月1日〜
インボイス制度開始
経過措置
- 2023年10月〜2026年9月:免税事業者からの仕入の80%控除可能
- 2026年10月〜2029年9月:免税事業者からの仕入の50%控除可能
- 2029年10月〜:控除不可
今後の対応
まだインボイス登録していない免税事業者は、2026年9月までに登録するか検討が必要です
まとめ
電子帳簿保存法は、帳簿や書類を電子データで保存することを認める法律で、電子取引データの保存が義務化されています
対応方法として、電子取引データをフォルダに保存し、ファイル名に日付・金額・取引先を記載し、事務処理規程を策定する方法が推奨されます。クラウド会計ソフトを活用すると、さらに簡単に対応できます
インボイス制度は、適格請求書(インボイス)の保存を義務付ける制度で、2023年10月から開始されました
課税事業者はインボイス登録を行い、請求書フォーマットを変更する必要があります。免税事業者は、課税事業者になるか検討が必要です
税理士によるサポートでは、現状診断、対応方法の提案、事務処理規程の作成、運用ルールの策定、従業員への説明、インボイス登録のサポート、消費税申告のサポートなどを受けられます
北九州市内の税理士事務所に相談することで、対面での相談、地域の他社事例の共有、継続的なサポートなどのメリットがあります
電子帳簿保存法・インボイス制度への対応でお困りの際は、税理士に相談し、適切なサポートを受けることをお勧めします。専門家のサポートにより、スムーズに対応でき、法令遵守を徹底できます
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な電子帳簿保存法・インボイス制度への対応については、税理士にご相談ください
