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課税事業者と免税事業者、どっちが得?消費税の判断基準を徹底解説
2025-11-08
- 消費税
- 税務実務
課税事業者と免税事業者の違い
課税事業者とは
定義: 消費税を納付する義務がある事業者
要件:
- 基準期間の課税売上高が1,000万円超
- または、課税事業者選択届出書を提出
義務:
- 消費税の申告・納付
- インボイス制度対応(適格請求書の発行)
免税事業者とは
定義: 消費税を納付する義務がない事業者
要件:
- 基準期間の課税売上高が1,000万円以下
- かつ、課税事業者選択届出書を提出していない
メリット:
- 消費税の申告・納付が不要
- 預かった消費税を納付しなくて良い(益税)
課税事業者と免税事業者の判定基準
基準期間とは
定義: 2年前の課税売上高
例:
- 2025年の判定:2023年の課税売上高を確認
判定フロー
2023年の課税売上高が1,000万円超
↓
YES → 2025年は課税事業者
NO → 2025年は免税事業者(原則)
特定期間による判定
特定期間とは: 前年の1月1日〜6月30日(法人は前事業年度開始日から6か月間)
要件: 特定期間の課税売上高が1,000万円超、かつ給与支払額が1,000万円超
判定: 両方を満たす場合、翌年は課税事業者
課税事業者のメリット・デメリット
メリット
1. 消費税の還付が受けられる
状況:
- 仕入や経費が多く、預かった消費税より支払った消費税が多い場合
例:
売上(税込):1,100万円(消費税100万円)
仕入・経費(税込):1,650万円(消費税150万円)
納付消費税 = 100万円 - 150万円 = -50万円
→ 50万円の還付
2. インボイスを発行できる
メリット:
- 取引先が仕入税額控除を受けられる
- 取引先から敬遠されない
3. 信用力が高い
メリット:
- 課税事業者は、売上が1,000万円超の事業者と見られる
- 取引先からの信用が高い
デメリット
1. 消費税の納付義務
デメリット:
- 預かった消費税を納付する必要がある
例:
売上(税込):1,100万円(消費税100万円)
仕入・経費(税込):550万円(消費税50万円)
納付消費税 = 100万円 - 50万円 = 50万円
2. 申告・納付の手間
デメリット:
- 消費税の申告書を作成する必要がある
- 年1回(または年4回)の申告・納付
3. インボイス制度への対応
デメリット:
- 適格請求書(インボイス)を発行する必要がある
- 会計ソフトの対応が必要
免税事業者のメリット・デメリット
メリット
1. 消費税の納付が不要
メリット:
- 預かった消費税を納付しなくて良い(益税)
例:
売上(税込):1,100万円(消費税100万円)
仕入・経費(税込):550万円(消費税50万円)
免税事業者の場合:
消費税100万円を納付しなくて良い
→ 実質的に100万円の利益
2. 申告・納付の手間が不要
メリット:
- 消費税の申告書を作成する必要がない
デメリット
1. インボイスを発行できない
デメリット:
- 取引先が仕入税額控除を受けられない
- 取引先から取引を敬遠される可能性
影響:
取引先の負担増加:
免税事業者から110万円(税込)で仕入
→ 取引先は消費税10万円を控除できない
→ 取引先の消費税負担が10万円増加
結果:
・取引を断られる
・値引きを要求される(10%程度)
2. 消費税の還付が受けられない
デメリット:
- 仕入や経費が多くても、還付は受けられない
インボイス制度の影響
インボイス制度とは
開始時期: 2023年10月1日
内容:
- 仕入税額控除を受けるには、適格請求書(インボイス)が必要
- 免税事業者はインボイスを発行できない
免税事業者への影響
影響:
- 取引先が仕入税額控除を受けられない
- 取引先から取引を敬遠される
- 値引きを要求される(10%程度)
対策:
- 課税事業者になり、インボイスを発行
- 取引先と交渉し、免税事業者のまま継続
課税事業者になるべきか
課税事業者になるべき場合:
- 取引先が法人や課税事業者
- 取引を継続したい
免税事業者のままで良い場合:
- 取引先が一般消費者(個人)
- 取引先が少額の取引
どっちが得か?シミュレーション
ケース1: 売上1,000万円、仕入・経費500万円
課税事業者の場合:
売上(税込):1,100万円(消費税100万円)
仕入・経費(税込):550万円(消費税50万円)
納付消費税 = 100万円 - 50万円 = 50万円
手取り = 1,100万円 - 550万円 - 50万円 = 500万円
免税事業者の場合:
売上(税込):1,100万円
仕入・経費(税込):550万円
手取り = 1,100万円 - 550万円 = 550万円
結論: 免税事業者の方が50万円得(ただし、インボイス制度の影響を考慮する必要あり)
ケース2: 売上1,000万円、仕入・経費800万円
課税事業者の場合:
売上(税込):1,100万円(消費税100万円)
仕入・経費(税込):880万円(消費税80万円)
納付消費税 = 100万円 - 80万円 = 20万円
手取り = 1,100万円 - 880万円 - 20万円 = 200万円
免税事業者の場合:
売上(税込):1,100万円
仕入・経費(税込):880万円
手取り = 1,100万円 - 880万円 = 220万円
結論: 免税事業者の方が20万円得
ケース3: 売上1,000万円、仕入・経費1,200万円
課税事業者の場合:
売上(税込):1,100万円(消費税100万円)
仕入・経費(税込):1,320万円(消費税120万円)
納付消費税 = 100万円 - 120万円 = -20万円
→ 20万円の還付
手取り = 1,100万円 - 1,320万円 + 20万円 = -200万円
免税事業者の場合:
売上(税込):1,100万円
仕入・経費(税込):1,320万円
手取り = 1,100万円 - 1,320万円 = -220万円
結論: 課税事業者の方が20万円得(還付があるため)
課税事業者を選択する方法
課税事業者選択届出書
提出先: 所轄の税務署
提出期限: 課税事業者になりたい課税期間の開始日の前日まで
例: 2025年から課税事業者になりたい場合 → 2024年12月31日までに提出
注意: 一度課税事業者を選択すると、2年間は免税事業者に戻れない
簡易課税制度の活用
簡易課税制度とは
内容: 実際の仕入税額ではなく、みなし仕入率を使って消費税を計算
要件:
- 基準期間の課税売上高が5,000万円以下
- 簡易課税制度選択届出書を提出
みなし仕入率
業種別:
- 第1種(卸売業):90%
- 第2種(小売業):80%
- 第3種(製造業等):70%
- 第4種(その他の事業):60%
- 第5種(サービス業等):50%
- 第6種(不動産業):40%
簡易課税制度のメリット
メリット:
- 計算が簡単
- 実際の仕入税額より有利になる場合がある
例:
売上(税込):1,100万円(消費税100万円)
業種:サービス業(みなし仕入率50%)
納付消費税 = 100万円 - 100万円 × 50% = 50万円
税理士に相談するメリット
課税事業者と免税事業者の選択は、税理士に相談することで最適な判断ができます。
税理士のサポート内容:
- 課税・免税のシミュレーション
- インボイス制度の影響分析
- 課税事業者選択届出書の提出サポート
- 簡易課税制度の有利判定
- 消費税申告のサポート
消費税の選択に迷っている方は、税理士に相談してみましょう。
まとめ
課税事業者と免税事業者のどちらが得かは、売上規模、仕入・経費の割合、取引先の状況により異なります。インボイス制度の影響も考慮し、税理士に相談して最適な選択をしましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な消費税の選択については、税理士に相談することをお勧めします。
