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役員賞与の税務リスクを徹底解説!損金不算入を避ける方法
2025-11-07
- 法人税
- 税務実務
役員賞与とは
役員賞与とは、**役員に対して支給する賞与(ボーナス)**です。税務上、原則として損金不算入ですが、事前確定届出給与として届出をすれば、損金算入が可能です。
役員賞与の税務上の扱い:
- 原則:損金不算入
- 例外:事前確定届出給与として届出 → 損金算入
注意: 従業員の賞与は、届出不要で損金算入可能
役員賞与が損金不算入になる理由
理由: 役員は、会社の経営者であり、自由に報酬を決められる立場にあります。そのため、利益調整のために恣意的に賞与を支給することを防ぐため、原則として損金不算入とされています。
具体例:
決算直前に利益が出ていることが判明
→ 役員賞与を支給して利益を圧縮
→ 税金を減らす
このような利益調整を防ぐため、原則として損金不算入
事前確定届出給与とは
定義: 役員賞与を支給する前に、税務署に届出をすることで、損金算入が認められる制度
要件:
- 支給時期と支給額を事前に確定
- 株主総会等で決議
- 税務署に届出(事前確定届出給与に関する届出書)
- 届出どおりに支給
届出期限:
- 株主総会等の決議日から1か月以内
- または、会計期間開始日から4か月以内
- いずれか早い日
事前確定届出給与の要件
1. 支給時期と支給額を事前に確定
確定すべき内容:
- 支給を受ける役員の氏名
- 支給時期(例:2025年12月10日)
- 支給額(例:100万円)
注意:
- 支給時期と支給額を1円単位で確定する必要がある
2. 株主総会等で決議
決議方法:
- 株主総会の議事録に記載
- または、取締役会の議事録に記載(取締役会設置会社の場合)
議事録の記載例:
令和7年6月25日開催の定時株主総会において、以下のとおり決議した。
役員賞与の支給
・支給対象者:代表取締役 山田太郎
・支給時期:令和7年12月10日
・支給額:100万円
3. 税務署に届出
届出書: 事前確定届出給与に関する届出書
提出先: 所轄の税務署
提出期限:
- 株主総会等の決議日から1か月以内
- または、会計期間開始日から4か月以内
- いずれか早い日
例:
3月決算の会社
定時株主総会:6月25日
届出期限:7月25日(株主総会から1か月以内)
4. 届出どおりに支給
重要: 届出した支給時期・支給額と、実際の支給が1円でも異なると、全額が損金不算入
NG例:
届出:12月10日に100万円支給
実際:12月15日に100万円支給
→ 支給時期が異なるため、全額損金不算入
届出:12月10日に100万円支給
実際:12月10日に99万円支給
→ 支給額が異なるため、全額損金不算入
役員賞与の税務リスク
1. 届出を忘れた場合
リスク: 役員賞与が全額損金不算入
影響:
役員賞与:100万円
法人税率:30%
損金不算入 → 追加納税:100万円 × 30% = 30万円
2. 届出と異なる支給をした場合
リスク: 役員賞与が全額損金不算入
例:
- 支給時期が1日でもずれた
- 支給額が1円でも異なる
3. 支給しなかった場合
リスク: 届出したが、実際には支給しなかった場合、問題ない(損金不算入にはならない)
ただし: 役員は、所得税の課税なし
4. 複数回支給する場合
届出: 複数回の支給時期と支給額を全て届出
例:
1回目:7月10日に50万円
2回目:12月10日に50万円
両方を届出し、両方とも届出どおりに支給する必要あり
リスク: 1回でも届出と異なる支給をすると、全額が損金不算入
税務調査での指摘事項
1. 届出期限の遅れ
指摘: 届出期限を過ぎて届出した場合、無効
リスク: 役員賞与が全額損金不算入
2. 支給時期・支給額の相違
指摘: 届出と実際の支給が異なる
確認される書類:
- 事前確定届出給与に関する届出書
- 給与台帳
- 役員報酬の支払証明書
3. 株主総会議事録の不備
指摘: 株主総会議事録に役員賞与の決議が記載されていない
リスク: 事前確定届出給与が無効 → 損金不算入
4. 実質的な定期同額給与
指摘: 毎年同額の役員賞与を支給している場合、実質的に定期同額給与とみなされる可能性
ただし: 定期同額給与として認められれば、損金算入可能
役員賞与の支給方法
方法1: 事前確定届出給与として支給
手順:
- 株主総会で決議
- 税務署に届出
- 届出どおりに支給
メリット:
- 損金算入できる
デメリット:
- 届出の手間がかかる
- 届出どおりに支給しないと、全額損金不算入
方法2: 役員報酬として毎月支給
手順:
- 役員報酬を月額で支給(定期同額給与)
メリット:
- 届出不要
- 毎月の支給額を調整しやすい
デメリット:
- 賞与として支給できない
方法3: 損金不算入を承知で支給
手順:
- 届出せずに役員賞与を支給
メリット:
- 届出の手間がない
デメリット:
- 全額損金不算入
- 法人税が増える
役員賞与の失敗事例
事例1: 届出期限を過ぎた
状況:
- 株主総会:6月25日
- 届出期限:7月25日
- 実際の届出:8月5日(期限後)
結果: 届出が無効 → 役員賞与100万円が損金不算入 → 追加納税30万円
事例2: 支給日が1日ずれた
状況:
- 届出:12月10日に100万円支給
- 実際:12月11日に100万円支給(1日遅れ)
結果: 全額損金不算入 → 追加納税30万円
事例3: 支給額が1円異なった
状況:
- 届出:12月10日に100万円支給
- 実際:12月10日に99万9,999円支給(源泉所得税の計算ミスで1円少ない)
結果: 全額損金不算入 → 追加納税30万円
役員賞与の代替策
代替策1: 定期同額給与の増額
方法:
- 役員報酬を月額で増額
メリット:
- 届出不要
- 損金算入可能
デメリット:
- 毎月の支給額が増える
- 社会保険料が増える
代替策2: 役員退職金
方法:
- 役員退任時に退職金を支給
メリット:
- 退職金は全額損金算入
- 受け取る役員も税負担が軽い
デメリット:
- 役員が退任する必要がある
税理士に相談するメリット
役員賞与の支給は、税理士に相談することで税務リスクを回避できます。
税理士のサポート内容:
- 事前確定届出給与の届出書作成
- 株主総会議事録の作成支援
- 届出期限の管理
- 支給時期・支給額の確認
- 税務調査対策
役員賞与を支給する場合は、必ず税理士に相談しましょう。
まとめ
役員賞与は、原則として損金不算入ですが、事前確定届出給与として届出をすれば損金算入が可能です。届出期限、支給時期、支給額を厳守する必要があり、1円でも異なると全額が損金不算入になるリスクがあります。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な役員賞与については、税理士に相談することをお勧めします。
