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固定資産の会計処理で迷う場合の判断基準と実務対応を徹底解説
2025-11-06
- 経理
- 法人税
固定資産の会計処理とは
固定資産の会計処理とは、購入した資産を、経費として一括計上するか、固定資産として計上して減価償却するかを判断することです。
判断が必要な理由:
- 経費:当期の損金として全額計上
- 固定資産:減価償却により複数年で損金計上
判断基準:
- 取得価額
- 使用可能期間
- 税法の特例
資産計上と経費の判断基準
基本ルール
10万円未満:
- 全額経費として計上可能
10万円以上:
- 原則として固定資産として計上
- 減価償却により複数年で損金計上
例:
パソコン購入:8万円
→ 全額経費(消耗品費)として計上
パソコン購入:15万円
→ 固定資産(器具備品)として計上
→ 減価償却(耐用年数4年)
取得価額の判定
取得価額に含まれるもの:
- 購入代金
- 引取運賃
- 荷役費
- 購入手数料
- 設置費用
例:
機械本体:9万円
配送料:5,000円
設置費用:5,000円
取得価額 = 9万円 + 5,000円 + 5,000円 = 10万円
→ 10万円以上なので、固定資産として計上
少額減価償却資産の特例(中小企業)
30万円未満の特例
中小企業の特例: 取得価額30万円未満の資産は、全額経費として計上可能(年間300万円まで)
要件:
- 中小企業者等(資本金1億円以下など)
- 青色申告
- 取得価額30万円未満
例:
パソコン購入:25万円
→ 全額経費として計上可能(少額減価償却資産の特例)
ただし、年間300万円までの制限あり
注意:
- 1個あたり30万円未満
- 年間合計300万円まで
一括償却資産(20万円未満)
20万円未満の資産: 取得価額20万円未満の資産は、3年間で均等償却可能
メリット:
- 償却資産税(固定資産税)の対象外
例:
備品購入:18万円
→ 一括償却資産として計上
→ 3年間で均等償却(年間6万円)
どの特例を使うべきか
10万円未満:
- 全額経費
10万円以上20万円未満:
- 選択肢1:一括償却資産(3年均等償却)
- 選択肢2:少額減価償却資産の特例(全額経費)
20万円以上30万円未満:
- 選択肢1:固定資産(通常の減価償却)
- 選択肢2:少額減価償却資産の特例(全額経費)
30万円以上:
- 固定資産(通常の減価償却)
修繕費と資本的支出の区分
修繕費とは
定義: 固定資産の通常の維持管理、原状回復のための支出
会計処理: 全額経費として計上
例:
- 建物の壁の塗り替え
- 機械の部品交換
- 車の修理
資本的支出とは
定義: 固定資産の価値を高める、または使用可能期間を延長する支出
会計処理: 固定資産として計上し、減価償却
例:
- 建物の増築
- 機械の性能向上
- 車の改造
修繕費と資本的支出の判断基準
判断フロー:
1. 支出額が20万円未満: → 修繕費として全額経費
2. 支出額が60万円未満、または前期末取得価額の10%以下: → 修繕費として全額経費
3. 上記以外: → 資本的支出か修繕費かを個別判断
個別判断のポイント:
修繕費:
- 通常の維持管理
- 原状回復
- 壊れた部分の修理
資本的支出:
- 改良・改造
- 性能向上
- 使用可能期間の延長
例:
建物の外壁塗装:150万円
判断:
・前期末取得価額:2,000万円
・10%:200万円
・150万円 < 200万円
→ 修繕費として全額経費
形式基準による判定
形式基準: 以下のいずれかに該当すれば、修繕費として処理可能
1. 支出額が20万円未満
2. おおむね3年以内の周期で行われる修理・改良
3. 支出額が60万円未満、または前期末取得価額の10%以下
よくある迷うケース
ケース1: パソコンの購入(15万円)
判断:
- 10万円以上30万円未満
- 中小企業の場合、少額減価償却資産の特例で全額経費
- または、固定資産として計上(耐用年数4年)
おすすめ: 少額減価償却資産の特例を活用
ケース2: ソフトウェアの購入(50万円)
判断:
- 30万円以上なので、固定資産として計上
- 耐用年数5年で減価償却
注意:
- 10万円未満のソフトウェアは、全額経費
ケース3: 応接セット(25万円)
判断:
- 10万円以上30万円未満
- 中小企業の場合、少額減価償却資産の特例で全額経費
おすすめ: 少額減価償却資産の特例を活用
ケース4: エアコンの設置(本体18万円 + 工事費5万円)
判断:
- 取得価額 = 18万円 + 5万円 = 23万円
- 10万円以上30万円未満
- 中小企業の場合、少額減価償却資産の特例で全額経費
注意: 工事費も取得価額に含まれる
ケース5: 建物の外壁塗装(100万円)
判断:
- 前期末取得価額:1,500万円
- 10%:150万円
- 100万円 < 150万円 → 修繕費として全額経費
ケース6: 機械の部品交換(性能向上)(80万円)
判断:
- 性能向上を目的とした支出 → 資本的支出として固定資産に計上
注意: 単なる部品交換(原状回復)であれば、修繕費
固定資産の耐用年数
主な固定資産の耐用年数
建物:
- 木造:22年
- 鉄骨造(3mm以下):19年
- 鉄骨造(3mm超4mm以下):27年
- 鉄筋コンクリート造:47年
器具備品:
- パソコン:4年
- 机・椅子:8年
- エアコン:6年
- 応接セット:8年
車両:
- 普通自動車:6年
- 軽自動車:4年
機械装置:
- 業種により異なる(3年〜17年)
ソフトウェア:
- 5年
会計処理の実務
固定資産として計上する場合
仕訳例:
パソコン購入:20万円
(借方)器具備品 200,000円 / (貸方)現金 200,000円
減価償却の仕訳:
耐用年数4年、定額法の場合
年間減価償却費 = 20万円 ÷ 4年 = 5万円
(借方)減価償却費 50,000円 / (貸方)減価償却累計額 50,000円
少額減価償却資産として計上する場合
仕訳例:
パソコン購入:25万円(少額減価償却資産の特例を適用)
(借方)消耗品費 250,000円 / (貸方)現金 250,000円
注意:
- 確定申告書に「少額減価償却資産の取得価額の明細」を添付
修繕費として計上する場合
仕訳例:
外壁塗装:100万円
(借方)修繕費 1,000,000円 / (貸方)現金 1,000,000円
税理士に相談するメリット
固定資産の会計処理で迷う場合は、税理士に相談することで適切な判断ができます。
税理士のサポート内容:
- 資産計上と経費の判断
- 少額減価償却資産の特例の適用判断
- 修繕費と資本的支出の区分
- 耐用年数の判定
- 税務調査対策
固定資産の会計処理に迷ったら、税理士に相談してみましょう。
まとめ
固定資産の会計処理では、取得価額10万円未満は経費、10万円以上は固定資産が原則です。中小企業は30万円未満の少額減価償却資産の特例を活用できます。修繕費と資本的支出の区分は、形式基準を活用しましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な固定資産の会計処理については、税理士に相談することをお勧めします。
