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財務分析で経営改善!キャッシュフロー・損益分岐点分析を徹底解説
2025-11-01
- 経営
- 税務実務
財務分析とは
財務分析とは、会社の財務諸表(貸借対照表、損益計算書など)を分析し、経営状況を評価することです。財務分析により、会社の収益性、安全性、成長性、効率性を客観的に把握でき、経営改善のための具体的な施策を立てることができます。
多くの中小企業では、日々の業務に追われ、財務状況を詳しく分析する時間がありません。しかし、財務分析を行わずに経営を続けると、問題が深刻化してから気づくことになり、手遅れになる可能性があります。
財務分析の目的
- 経営状況の現状把握
- 経営課題の発見
- 改善策の立案
- 目標達成度の評価
- 銀行融資への対応
財務分析が必要な理由
- 感覚ではなくデータで経営判断ができる
- 問題を早期に発見できる
- 他社と比較して自社の位置を知る
- 銀行や投資家への説明ができる
財務分析の基本指標
財務分析には、様々な指標があります。ここでは、中小企業が特に重視すべき指標をご紹介します。
1. 収益性の分析
収益性とは、会社がどれだけ効率的に利益を上げているかを示す指標です。
売上高総利益率(粗利率)
売上高総利益率 = 売上総利益 ÷ 売上高 × 100
売上高総利益(粗利)は、売上高から売上原価を引いた金額です。粗利率が高いほど、商品やサービスの付加価値が高いことを示します。
業種別の目安
- 製造業:20〜30%
- 卸売業:10〜15%
- 小売業:25〜35%
- サービス業:50〜70%
例
売上高:1億円 売上原価:6,000万円 売上総利益:4,000万円
売上高総利益率 = 4,000万円 ÷ 1億円 × 100 = 40%
売上高営業利益率
売上高営業利益率 = 営業利益 ÷ 売上高 × 100
営業利益は、売上総利益から販売費及び一般管理費を引いた金額で、本業で稼いだ利益を示します。
目安
- 5%以上:優良
- 3〜5%:標準
- 3%未満:改善が必要
例
売上高:1億円 営業利益:500万円
売上高営業利益率 = 500万円 ÷ 1億円 × 100 = 5%
ROA(総資産利益率)
ROA = 当期純利益 ÷ 総資産 × 100
ROAは、会社の資産をどれだけ効率的に利益に結び付けているかを示します。
目安
- 5%以上:優良
- 3%未満:改善が必要
ROE(自己資本利益率)
ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100
ROEは、株主から預かった資本をどれだけ効率的に運用して利益を上げているかを示します。
目安
- 10%以上:優良
- 5%未満:改善が必要
2. 安全性の分析
安全性とは、会社が倒産せずに事業を継続できる能力を示す指標です。
自己資本比率
自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資産 × 100
自己資本比率は、会社の資産のうち、返済不要の自己資本がどれだけあるかを示します。自己資本比率が高いほど、財務的に安全です。
目安
- 40%以上:優良
- 20〜40%:標準
- 20%未満:改善が必要
例
総資産:1億円 自己資本:3,000万円
自己資本比率 = 3,000万円 ÷ 1億円 × 100 = 30%
流動比率
流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100
流動比率は、短期的な支払能力を示します。流動資産(1年以内に現金化できる資産)が流動負債(1年以内に返済が必要な負債)をどれだけカバーしているかを示します。
目安
- 150%以上:優良
- 100〜150%:標準
- 100%未満:資金繰りに注意
例
流動資産:6,000万円 流動負債:4,000万円
流動比率 = 6,000万円 ÷ 4,000万円 × 100 = 150%
当座比率
当座比率 = 当座資産 ÷ 流動負債 × 100
当座資産は、現金、預金、売掛金など、すぐに現金化できる資産です。在庫を除いた、より厳格な支払能力を示します。
目安
- 100%以上:優良
- 100%未満:資金繰りに注意
3. 効率性の分析
効率性とは、会社が資産や資本をどれだけ効率的に活用しているかを示す指標です。
総資産回転率
総資産回転率 = 売上高 ÷ 総資産
総資産回転率は、総資産が何回転して売上を生み出しているかを示します。回転率が高いほど、資産を効率的に活用しています。
目安
- 製造業:1.0回転以上
- 卸売業:2.0回転以上
- 小売業:1.5回転以上
例
売上高:1億円 総資産:8,000万円
総資産回転率 = 1億円 ÷ 8,000万円 = 1.25回転
棚卸資産回転率
棚卸資産回転率 = 売上高 ÷ 棚卸資産
棚卸資産回転率は、在庫が何回転しているかを示します。回転率が高いほど、在庫の回転が速く、効率的です。
目安
- 卸売業:10回転以上
- 小売業:6回転以上
- 製造業:業種により異なる
売掛金回転期間
売掛金回転期間 = 売掛金 ÷ (売上高 ÷ 365日)
売掛金回転期間は、売掛金を回収するまでの平均日数を示します。期間が短いほど、資金回収が早く、資金繰りが良好です。
例
売掛金:2,000万円 年間売上高:1億円
売掛金回転期間 = 2,000万円 ÷ (1億円 ÷ 365日) = 73日
売掛金の回収に平均73日かかっています。
4. 成長性の分析
成長性とは、会社がどれだけ成長しているかを示す指標です。
売上高成長率
売上高成長率 = (当期売上高 - 前期売上高) ÷ 前期売上高 × 100
例
前期売上高:9,000万円 当期売上高:1億円
売上高成長率 = (1億円 - 9,000万円) ÷ 9,000万円 × 100 = 11.1%
経常利益成長率
経常利益成長率 = (当期経常利益 - 前期経常利益) ÷ 前期経常利益 × 100
キャッシュフロー分析
キャッシュフロー分析は、財務分析の中でも特に重要です。利益が出ていても、現金がなければ会社は倒産します(黒字倒産)。キャッシュフローを正しく把握することが、経営の鍵です。
キャッシュフロー計算書の読み方
キャッシュフロー計算書は、現金の流れを以下の3つに分けて表示します。
営業活動によるキャッシュフロー(営業CF)
本業で稼いだ現金の増減です。プラスであれば、本業で現金を稼いでいます。
投資活動によるキャッシュフロー(投資CF)
設備投資などに使った現金の増減です。通常はマイナスになります(現金が出ていく)。
財務活動によるキャッシュフロー(財務CF)
借入や返済による現金の増減です。借入をすればプラス、返済をすればマイナスになります。
キャッシュフローのパターンと意味
パターン1:営業CF +、投資CF -、財務CF -
意味
- 本業で稼いだ現金で、投資を行い、借金を返済している
- 最も理想的な状態
パターン2:営業CF +、投資CF -、財務CF +
意味
- 本業で稼いだ現金に加えて、借入も行い、積極的に投資している
- 成長段階の会社に多い
パターン3:営業CF -、投資CF -、財務CF +
意味
- 本業で現金を稼げておらず、借入に頼っている
- 危険な状態。早急に改善が必要
パターン4:営業CF +、投資CF +、財務CF -
意味
- 本業で稼いだ現金で借金を返済し、さらに資産を売却している
- 事業を縮小している可能性
キャッシュフロー改善の方法
営業CFの改善
- 売掛金の早期回収
- 在庫の削減
- 買掛金の支払いサイト延長
- 経費の削減
投資CFの改善
- 設備投資の見直し
- リースの活用
- 不要な資産の売却
財務CFの改善
- 新規借入の検討
- 借入金のリスケジュール
- 増資の検討
損益分岐点分析
損益分岐点分析は、売上高がいくらあれば利益が出るのか(赤字にならないか)を分析する手法です。経営計画を立てる際に非常に有用です。
損益分岐点とは
損益分岐点とは、売上高と費用が等しくなり、利益がゼロになる売上高のことです。損益分岐点を上回れば利益が出て、下回れば赤字になります。
損益分岐点の計算方法
固定費と変動費の分類
まず、費用を固定費と変動費に分類します。
固定費
売上高に関係なく発生する費用です。
例
- 人件費
- 家賃
- 減価償却費
- 保険料
- リース料
変動費
売上高に比例して発生する費用です。
例
- 仕入原価(売上原価)
- 外注費
- 運送費
- 販売手数料
損益分岐点売上高の計算式
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ (1 - 変動費率)
変動費率 = 変動費 ÷ 売上高
計算例
- 固定費:年間6,000万円
- 変動費率:60%(売上高1億円、変動費6,000万円)
損益分岐点売上高 = 6,000万円 ÷ (1 - 0.6)
= 6,000万円 ÷ 0.4
= 1億5,000万円
売上高が1億5,000万円あれば、利益がゼロになります。これを上回れば利益が出ます。
損益分岐点比率
損益分岐点比率 = 損益分岐点売上高 ÷ 実際の売上高 × 100
損益分岐点比率が低いほど、経営に余裕があります。
目安
- 80%以下:優良
- 80〜100%:標準
- 100%以上:赤字
例
損益分岐点売上高:1億5,000万円 実際の売上高:2億円
損益分岐点比率 = 1億5,000万円 ÷ 2億円 × 100 = 75%
損益分岐点を下げる方法
固定費の削減
- 人件費の見直し
- 家賃の引き下げ交渉
- 不要な契約の解約
変動費率の引き下げ
- 仕入原価の削減
- 外注費の見直し
- 販売手数料の交渉
売上高の増加
- 新規顧客の獲得
- 既存顧客への販売強化
- 新商品・新サービスの開発
経営相談と財務サポート
税理士は、財務分析を基に、経営相談や財務サポートを提供します。
税理士による財務分析サポート
月次決算での財務分析
毎月の月次決算時に、財務指標を計算し、経営状況を報告します。
分析内容
- 前月との比較
- 前年同月との比較
- 予算との比較
- 業界平均との比較
年次決算での詳細分析
年度末には、より詳細な財務分析を行い、経営課題を抽出します。
分析内容
- 収益性、安全性、効率性、成長性の総合分析
- 過去数年のトレンド分析
- 業界他社とのベンチマーク
経営改善計画の策定サポート
財務分析で発見した課題を解決するための経営改善計画を策定します。
計画の内容
- 現状分析
- 課題の抽出
- 改善策の立案
- 数値目標の設定
- アクションプランの作成
- 進捗管理
資金繰り改善のサポート
資金繰り表の作成
将来3〜6か月の資金繰りを予測し、資金不足を未然に防ぎます。
資金調達のサポート
資金が不足する場合、銀行融資の支援や、補助金・助成金の活用をサポートします。
予算管理のサポート
年度予算の作成
次年度の売上目標、経費予算を設定し、計画的な経営を支援します。
予実管理
毎月、予算と実績を比較し、差異の原因を分析します。差異が大きい場合は、対策を検討します。
北九州の中小企業経営と財務分析
北九州市内の中小企業は、製造業、卸売業、小売業、サービス業など多様です。業種によって、重視すべき財務指標が異なります。
製造業の場合
重視すべき指標
- 売上高総利益率(粗利率)
- 棚卸資産回転率
- 固定資産回転率
- 売上高営業利益率
課題
- 原価管理
- 在庫管理
- 設備投資の判断
卸売業の場合
重視すべき指標
- 売上高総利益率
- 棚卸資産回転率
- 売掛金回転期間
- 総資産回転率
課題
- 在庫の適正化
- 売掛金の回収管理
- 仕入先・販売先との交渉
小売業の場合
重視すべき指標
- 売上高総利益率
- 棚卸資産回転率
- 人件費率
- 坪当たり売上高
課題
- 在庫管理
- 売れ筋商品の見極め
- 店舗運営の効率化
サービス業の場合
重視すべき指標
- 売上高営業利益率
- 人件費率
- 労働生産性
- キャッシュフロー
課題
- 人材確保・育成
- サービス品質の向上
- 固定費の管理
まとめ
財務分析は、会社の経営状況を客観的に把握し、経営改善のための具体的な施策を立てるために不可欠です。収益性、安全性、効率性、成長性の各指標を分析し、課題を発見します。
特に重要なのは、キャッシュフロー分析と損益分岐点分析です。キャッシュフローを正しく把握することで、資金繰りを改善でき、損益分岐点を理解することで、適切な売上目標を設定できます。
北九州の中小企業経営者は、税理士のサポートを受けながら、定期的に財務分析を行い、経営改善に取り組むことをお勧めします。税理士は、財務分析、経営相談、資金繰り改善、予算管理など、幅広い財務サポートを提供します。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な財務分析や経営相談については、税理士にご相談ください。
