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不動産オーナーの税務完全ガイド|北九州の税理士が教える節税と管理会社設立
2025-11-05
- 不動産
- 税務実務
- 法人税
不動産オーナーの税務とは
不動産オーナー(大家さん)は、賃貸物件から得る家賃収入について、確定申告を行う必要があります。不動産所得の申告には、独特のルールがあり、適切な処理を行わないと、税負担が増えたり、税務調査のリスクが高まったりします。
不動産賃貸業は、適切な税務対策により、大幅な節税が可能です。特に、青色申告の活用、減価償却費の計上、必要経費の適切な処理、不動産管理会社の設立など、様々な方法があります。
不動産オーナーが直面する税務
- 所得税の確定申告
- 消費税の申告(事業規模による)
- 固定資産税
- 相続税対策
- 法人化の検討
不動産所得とは
不動産所得とは、不動産の貸付けにより生じる所得です。賃貸アパート、賃貸マンション、貸家、駐車場、貸地などから得る収入が該当します。
不動産所得の計算式
不動産所得 = 総収入金額 - 必要経費
総収入金額
- 家賃収入
- 礼金
- 更新料
- 共益費
- 駐車場収入
- 敷金・保証金のうち返還しない部分
必要経費
- 固定資産税
- 都市計画税
- 損害保険料
- 修繕費
- 減価償却費
- 借入金の利息
- 管理費
- 水道光熱費
- 仲介手数料
- 税理士報酬
不動産所得の確定申告
不動産所得がある場合、原則として確定申告が必要です。
確定申告が必要なケース
サラリーマン(給与所得者)の場合
- 不動産所得が年間20万円を超える場合
個人事業主の場合
- 不動産所得が少額でも申告が必要
専業大家の場合
- 不動産所得が基礎控除額(48万円)を超える場合
確定申告の期限
申告期限
- 翌年2月16日〜3月15日
納税期限
- 3月15日
青色申告と白色申告
不動産所得の申告には、青色申告と白色申告の2つの方法があります。
青色申告
青色申告を選択すると、様々な税務上のメリットがあります。
青色申告のメリット
- 青色申告特別控除(最大65万円または55万円)
- 青色事業専従者給与の必要経費算入
- 純損失の繰越控除・繰戻還付
- 少額減価償却資産の特例(30万円未満)
- 貸倒引当金の設定
青色申告の要件
- 事業的規模であること(5棟10室基準)
- 青色申告承認申請書を期限までに提出
- 複式簿記による記帳
- 貸借対照表と損益計算書の作成
事業的規模の判定(5棟10室基準)
不動産の貸付けが事業的規模かどうかは、以下の基準で判定します。
- アパート・マンション:10室以上
- 一戸建て:5棟以上
- 駐車場:50台以上(おおむね5台で1室換算)
例
アパート8室 + 一戸建て1棟 = 9室相当 → 事業的規模でない
アパート6室 + 一戸建て2棟 = 8室相当 → 事業的規模でない
アパート10室 = 10室 → 事業的規模
青色申告特別控除
65万円控除
以下の要件を満たすと、65万円の特別控除を受けられます。
- 事業的規模
- 複式簿記による記帳
- 貸借対照表と損益計算書の提出
- 電子申告またはe-Tax による申告、または電子帳簿保存
55万円控除
電子申告等を行わない場合、55万円の控除になります。
10万円控除
事業的規模でない場合、または簡易な帳簿による場合、10万円の控除になります。
青色申告のデメリット
- 記帳が複雑
- 帳簿の保存義務(7年間)
- 事前に青色申告承認申請書の提出が必要
白色申告
青色申告の承認を受けていない場合、白色申告となります。
白色申告のメリット
- 記帳が簡単
- 特に手続きが不要
白色申告のデメリット
- 青色申告特別控除がない
- 青色事業専従者給与が認められない
- 純損失の繰越ができない
不動産所得の必要経費
不動産所得の計算で、どの経費が必要経費として認められるかは重要です。
必要経費として認められるもの
固定資産税・都市計画税
賃貸物件にかかる固定資産税と都市計画税は、全額必要経費になります。
損害保険料
火災保険料、地震保険料は、賃貸物件に係る部分が必要経費になります。自宅部分と兼用の場合、按分が必要です。
修繕費
建物や設備の修繕費は、原則として必要経費になります。ただし、資本的支出(価値を高める支出)は、減価償却資産として扱います。
修繕費と資本的支出の区分
修繕費(必要経費)
- 壁の塗り替え
- 畳の表替え
- 破損したガラスの取り替え
- 設備の小規模な修理
資本的支出(減価償却)
- 建物の避難階段の取り付け
- 用途変更のための模様替え
- エレベーターの設置
判定が難しい場合
以下のいずれかに該当すれば、修繕費として処理できます。
- 支出金額が60万円未満
- 支出金額が前期末の取得価額の10%以下
減価償却費
建物や設備は、耐用年数にわたって減価償却費として経費に計上します。
建物の耐用年数
| 構造 | 耐用年数 | |------|---------| | 木造・合成樹脂造 | 22年 | | 木骨モルタル造 | 20年 | | 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造) | 47年 | | 鉄筋コンクリート造(RC造) | 47年 | | 金属造(肉厚4mm超) | 34年 | | 金属造(肉厚3mm超4mm以下) | 27年 | | 金属造(肉厚3mm以下) | 19年 |
中古建物の耐用年数
中古建物を取得した場合、以下の計算式で耐用年数を算出します。
耐用年数 = (法定耐用年数 - 経過年数) + 経過年数 × 20%
端数は切り捨て、最低2年です。
例
築15年の木造アパート(法定耐用年数22年)を購入
耐用年数 = (22年 - 15年) + 15年 × 20%
= 7年 + 3年
= 10年
減価償却費の計算例
建物取得価額:3,000万円 耐用年数:22年 償却方法:定額法
年間減価償却費 = 3,000万円 ÷ 22年 = 約136万円
借入金の利息
不動産投資のために借り入れたローンの利息は、必要経費になります。元本の返済は経費になりません。
管理費
不動産管理会社に支払う管理費は、必要経費になります。
水道光熱費
共用部分の水道光熱費は、必要経費になります。
仲介手数料
入居者募集のための仲介手数料は、必要経費になります。
税理士報酬
不動産所得の確定申告を税理士に依頼した場合の報酬は、必要経費になります。
必要経費として認められないもの
借入金の元本返済
ローンの元本部分の返済は、経費になりません。利息のみが経費です。
自宅部分の経費
自宅と賃貸物件が同じ建物にある場合、自宅部分の経費は必要経費になりません。按分が必要です。
所得税・住民税
所得税や住民税は、必要経費になりません。
罰金・過料
駐車違反の罰金などは、必要経費になりません。
不動産所得の節税対策
青色申告の活用
青色申告を選択し、青色申告特別控除を受けることで、大幅な節税が可能です。
節税効果の例
不動産所得:500万円 青色申告特別控除:65万円
課税所得 = 500万円 - 65万円 = 435万円
所得税・住民税の節税額:約20万円
青色事業専従者給与の活用
青色申告を行っている場合、生計を一にする配偶者や親族に支払った給与を必要経費にできます。
要件
- 青色申告者と生計を一にする配偶者または親族
- 年齢が15歳以上
- 年間6か月を超える期間、専従している
- 「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出
節税効果の例
不動産所得:800万円 配偶者への専従者給与:年間300万円
不動産所得 = 800万円 - 300万円 = 500万円
配偶者の給与所得控除や基礎控除により、家族全体の税負担が減少します。
減価償却費の最大化
建物を適切に評価し、減価償却費を最大化することで、節税できます。
建物と土地の按分
不動産を購入した場合、建物と土地の価格を適切に按分します。建物部分を大きくすることで、減価償却費が増えます。
按分方法
- 固定資産税評価額の比率
- 標準的な建築価額表
- 不動産鑑定評価
設備の区分
建物の一部を「建物附属設備」として区分することで、耐用年数が短くなり、減価償却費が増えます。
建物附属設備の例
- 電気設備(耐用年数15年)
- 給排水設備(耐用年数15年)
- 空調設備(耐用年数13年)
- エレベーター(耐用年数17年)
修繕費と資本的支出の判定
修繕費として処理できるものは、一括で経費にできます。資本的支出となると、減価償却で長期間かけて経費にすることになります。
判定が難しい場合、前述の基準(60万円未満または取得価額の10%以下)を利用して、修繕費として処理します。
小規模企業共済の活用
個人の不動産オーナーは、小規模企業共済に加入できます。掛金は全額所得控除となり、節税効果があります。
掛金
- 月額1,000円〜7万円
- 年間最大84万円
節税効果の例
年間掛金:84万円 所得税率:20%
所得税の節税額 = 84万円 × 20% = 16.8万円
住民税の節税額 = 84万円 × 10% = 8.4万円
合計:25.2万円
不動産管理会社の設立
不動産の規模が大きい場合、不動産管理会社を設立することで、大幅な節税が可能です。
不動産管理会社設立のメリット
所得の分散
個人で全ての家賃収入を受け取ると、累進課税により税率が高くなります。法人を設立し、管理料を法人に支払うことで、所得を分散できます。
法人税率の方が低い
個人の所得税は最高55%(住民税含む)ですが、法人税は最高約33%です。所得が高い場合、法人化により税負担が軽減されます。
給与所得控除の活用
法人から自分や家族に給与を支払うことで、給与所得控除を利用できます。
例
法人から年間600万円の給与を支払う場合
給与所得控除:164万円
課税所得:436万円
経費の幅が広がる
法人の場合、個人より経費として認められる範囲が広くなります。
認められやすくなる経費
- 役員報酬
- 退職金
- 社宅
- 生命保険料
- 出張手当
相続税対策
不動産を法人名義にすることで、相続財産から除外でき、相続税対策になります。ただし、法人株式が相続財産になります。
不動産管理会社のスキーム
不動産管理会社には、主に3つのスキームがあります。
管理徴収方式
法人が不動産の管理業務を行い、個人から管理料を受け取る方式です。
流れ
- 個人が不動産を所有
- 法人が管理業務を行う
- 個人が法人に管理料を支払う(家賃収入の5〜10%程度)
メリット
- 設立が簡単
- 初期費用が少ない
デメリット
- 節税効果が限定的(管理料の範囲内)
サブリース方式
法人が個人から不動産を一括借り上げし、転貸する方式です。
流れ
- 個人が不動産を所有
- 法人が個人から一括借り上げ
- 法人が入居者に転貸
- 個人が法人から家賃の80〜90%を受け取る
- 法人が差額を利益として留保
メリット
- 節税効果が大きい
- 法人に利益を留保できる
デメリット
- 管理が複雑
- 税務リスクがある(適正な賃料設定が必要)
不動産所有方式
法人が不動産を所有し、直接賃貸する方式です。
流れ
- 法人が不動産を購入または個人から買い取る
- 法人が入居者に賃貸
- 法人が家賃収入を得る
メリット
- 最も節税効果が大きい
- 相続税対策になる
デメリット
- 個人から法人への不動産の移転に費用がかかる(登録免許税、不動産取得税)
- 借入金がある場合、金融機関の承諾が必要
不動産管理会社設立の費用
設立費用
- 株式会社:約25万円
- 合同会社:約10万円
ランニングコスト
- 税理士報酬:年間30〜60万円
- 社会保険料:役員報酬に応じて
- 法人住民税:最低7万円(赤字でも必要)
不動産管理会社設立が有利なケース
不動産所得が年間1,000万円以上
不動産所得が高額な場合、法人化により大幅な節税が期待できます。
家族に所得を分散したい
配偶者や子どもに役員報酬を支払い、所得を分散できます。
将来的に事業を拡大したい
法人の方が信用力が高く、融資を受けやすくなります。
北九州の不動産オーナーの税務対策
北九州市内で賃貸物件を所有している不動産オーナーは、適切な税務対策により、税負担を大幅に軽減できます。
北九州市内の不動産の特徴
北九州市は、賃貸需要が一定程度あり、投資用不動産も多く取引されています。ただし、地域によって不動産価格や賃料相場が大きく異なります。
需要の高いエリア
- 小倉北区(小倉駅周辺)
- 八幡西区(黒崎駅周辺)
- 大学周辺(北九州市立大学、九州工業大学など)
税理士への相談
不動産オーナーの税務は専門性が高く、税理士のサポートを受けることをお勧めします。
税理士に相談するメリット
- 青色申告のサポート
- 適切な必要経費の計上
- 減価償却費の最適化
- 不動産管理会社設立のアドバイス
- 税務調査への対応
税理士への依頼費用
確定申告(個人)
- 物件数5棟未満:5〜10万円
- 物件数5棟以上:10〜20万円
不動産管理会社の顧問
- 月額顧問料:3〜5万円
- 決算申告料:15〜25万円
まとめ
不動産オーナーは、適切な税務対策により、大幅な節税が可能です。青色申告の活用、必要経費の適切な計上、減価償却費の最大化、青色事業専従者給与の活用など、様々な方法があります。
不動産の規模が大きい場合、不動産管理会社を設立することで、さらなる節税効果が期待できます。管理徴収方式、サブリース方式、不動産所有方式など、状況に応じた最適なスキームを選択することが重要です。
北九州で不動産を所有しているオーナーは、税理士に相談し、個別の状況に応じた税務対策を実施することをお勧めします。適切な申告と節税対策により、手取り収入を最大化できます。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な不動産の税務や管理会社設立については、税理士にご相談ください。
