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事業承継の税務の基本|北九州の税理士が経営者向けに分かりやすく解説

2026-02-20
  • 相続

「そろそろ会社の将来について考えなければ」「後継者への引き継ぎをどう進めればよいのか」——事業承継は、多くの経営者にとって重要な経営課題の一つです。特に中小企業では、事業承継に伴う税負担が大きな障壁となることがあります。北九州の税理士として、私たちの事務所では地域の中小企業経営者の方から事業承継に関するご相談を数多くいただいております。本記事では、事業承継を考え始めた経営者の方に向けて、税務の観点から知っておいていただきたい基本的な知識をお伝えします。

事業承継の3つの方法

事業承継の方法は、大きく分けて3つあります。それぞれの方法によって、税務上の取り扱いが異なります。

親族内承継

子どもや配偶者など、親族に事業を引き継ぐ方法です。中小企業で最も多い承継パターンです。株式や事業用資産を贈与または相続によって後継者に移転するため、贈与税や相続税の負担が生じます。自社株式の評価額が高い場合は、税負担が大きくなることがあるため、早い段階から計画的に準備を進めることが重要です。

従業員承継(親族外承継)

信頼できる従業員や役員に事業を引き継ぐ方法です。親族に適任者がいない場合に選択されることが増えています。この場合、後継者が株式を買い取る形が一般的ですが、後継者に株式の買取資金がないケースも多く、資金調達の問題が生じることがあります。株式の売却に伴い、現経営者には譲渡所得税が課税されます。

第三者承継(M&A)

外部の会社や個人に事業を譲渡する方法です。後継者がいない場合の選択肢として注目されています。株式譲渡や事業譲渡の方法があり、それぞれ税務上の取り扱いが異なります。株式譲渡の場合は現経営者に譲渡所得税が課され、事業譲渡の場合は法人に法人税が課されます。M&Aの場合は、税務面だけでなく契約条件や従業員の処遇など多くの論点がありますので、専門家のサポートのもとで進めることをお勧めします。

事業承継で発生する主な税金

贈与税

株式や事業用資産を生前に後継者へ無償で渡す場合、贈与税が課されます。贈与税は累進税率が適用され、贈与額が大きくなるほど税率が高くなります。例えば、直系尊属から20歳以上の者への贈与(特例贈与)の場合、課税価格が1,000万円を超えると税率は30%、3,000万円を超えると45%に達します。自社株式の評価額によっては、多額の贈与税が発生する可能性があります。

相続税

経営者が亡くなった際に、相続によって株式や事業用資産が後継者に移転する場合、相続税が課されます。相続税にも累進税率が適用されますが、基礎控除(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)があるため、遺産総額が基礎控除額以下であれば相続税はかかりません。ただし、自社株式の評価額が高い場合は、基礎控除を超えることが十分にあり得ます。

譲渡所得税

株式を売却して事業承継を行う場合、売却益に対して譲渡所得税が課されます。非上場株式の譲渡所得に対する税率は、所得税15.315%、住民税5%の合計約20%です。売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いた金額が課税対象となります。

自社株式の評価方法の概要

事業承継における税負担を考えるうえで、自社株式の評価額は極めて重要です。非上場会社の株式は市場価格がないため、国税庁が定めた評価方法に従って評価します。

主な評価方法には、「類似業種比準方式」と「純資産価額方式」があります。類似業種比準方式は、上場している類似業種の株価をもとに、配当、利益、純資産の3要素を比較して評価する方法です。純資産価額方式は、会社の保有する資産を時価で評価し、負債を差し引いた純資産をもとに評価する方法です。どちらの方式が適用されるかは、会社の規模によって異なります。

自社株式の評価額を事前に把握しておくことで、承継に伴う税負担の見通しが立ち、計画的な対策を講じることができます。当事務所では、自社株式の評価額算定のサポートも行っております。

事業承継税制の活用

事業承継に伴う税負担を軽減するための制度として、「事業承継税制(特例措置)」があります。この制度を活用すると、一定の要件を満たす場合に、後継者が取得した非上場株式に係る贈与税・相続税の納税が猶予され、さらに一定の要件を満たせば免除されます。

特例措置を利用するためには、「特例承継計画」を都道府県知事に提出する必要があります。特例承継計画の提出期限は2026年3月31日までとされていますので、活用を検討されている方は早急に準備を進める必要があります。また、承継後も一定期間は雇用確保などの要件を満たし続ける必要があります。制度の適用要件は細かく規定されていますので、活用を検討される場合は、早い段階で税理士にご相談ください。

なお、事業承継税制は今後の税制改正により期限延長や要件変更が行われる可能性がありますので、最新の制度内容を確認することが重要です。

事業承継の準備は早めに始めることが大切

事業承継は、短期間で完了するものではありません。後継者の育成、株式の移転、経営権の引き継ぎなど、準備には5年から10年程度の期間を要することも珍しくありません。税務面でも、計画的に株式を移転することで税負担を分散させることが可能です。

例えば、暦年贈与を活用して毎年少しずつ株式を後継者に移転する方法や、自社株式の評価額が低い時期を見計らって移転する方法などがあります。こうした対策は、時間をかけて段階的に進めることで効果が最大化されます。

事業承継に関連する法的な問題について

事業承継には、税務面だけでなく、会社法上の手続きや相続に関する法律上の問題が伴うこともあります。遺言書の作成や遺留分への配慮、株主間契約などの法的な事項については、弁護士にご相談ください。私たちの事務所では、税務の観点からのアドバイスを行いつつ、必要に応じて弁護士や司法書士などの専門家と連携して対応しております。

北九州の経営者の方へ

北九州エリアでも、経営者の高齢化に伴い、事業承継の重要性はますます高まっています。当事務所では、事業承継に関する税務相談を承っております。「自社株式の評価額を知りたい」「後継者への株式移転の方法を検討したい」「事業承継税制が使えるか確認したい」といったご要望がございましたら、お気軽にご相談ください。

事業承継は、経営者としての最後の大仕事ともいえます。大切に育ててこられた事業を次の世代に円滑に引き継ぐために、早めの準備と専門家の活用が重要です。私たちの事務所が、税務の観点から全力でサポートいたします。

※本記事は一般的な税務情報の提供を目的としています。個別の状況に応じた対応については、税理士にご相談ください。

現在弊社では、ZOOMを利用したオンラインによる面談を行っております。
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