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少額減価償却資産の特例が 40 万円未満に拡大|令和 8 年度改正で変わる点と注意点を北九州の税理士が解説
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- 法人税
- 税務実務
パソコンや事務機器、工具、備品などを購入したとき、通常は減価償却によって数年かけて費用化します。しかし中小企業には、一定額未満の資産を購入した年度に全額費用にできる「少額減価償却資産の特例」があり、令和 6 年度には約 67 万の法人が利用しました。
この特例が、令和 8 年度税制改正で見直されました。取得価額の基準が 30 万円未満から 40 万円未満に引き上げられた一方で、年間 300 万円の上限は据え置かれています。変わった点と変わらなかった点を正しく把握しておかないと、設備投資のタイミングや金額の判断を誤るおそれがあります。
本記事では、北九州エリアで中小企業の決算・申告をサポートしている税理士の視点から、改正の内容と実務での注意点を整理して解説します。
少額減価償却資産の特例とは
中小企業者等が取得価額の少ない減価償却資産を買って事業に使い始めた場合に、一定の要件のもとで取得価額の全額をその年度の損金にできる制度です。正式には「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」といいます。
通常の減価償却では、たとえば 25 万円のパソコンは 4 年かけて費用化しますが、この特例を使えば購入した年度に 25 万円全額を費用にできます。利益が出ている年度に設備を購入すれば、その年度の税負担を抑えられる効果があります。
特例の対象になるのは、1 事業年度あたり合計 300 万円までです。事業年度が 1 年に満たない場合は、300 万円を月数で按分した金額が上限になります。
対象となる中小企業者等
この特例を使えるのは、大規模法人の支配を受けていない資本金 1 億円以下の青色申告法人で、常時使用する従業員数が一定数以下の法人などです。個人事業主(青色申告者)も対象になります。
要件には細かな判定がありますが、北九州エリアの多くの中小企業や個人事業主は対象に含まれます。資本金が 1 億円を超える法人や、大企業の子会社などは対象外です。該当しそうな場合は個別に確認してください。
令和 8 年度税制改正で変わった点
今回の改正では、金額基準、従業員数基準、適用期限が見直されました。それぞれの内容を確認します。
金額基準が 40 万円未満に
取得価額の判定基準が 10 万円引き上げられました。
| 区分 | 取得価額の基準 |
|---|---|
| 改正前 | 30 万円未満 |
| 改正後 | 40 万円未満 |
昨年まで 30 万円以上のパソコンや機械は通常の減価償却が必要でしたが、改正後は 40 万円未満であれば即時償却の対象になります。物価上昇で備品や機器の価格が上がっているなか、実態に合わせた見直しといえます。
なお、この金額は消費税の経理方式によって判定が変わります。税込経理であれば税込金額で、税抜経理であれば税抜金額で判定します。税抜経理を採用している会社では、税込 43 万円のパソコンでも税抜では 39 万円台となり、特例の対象になるケースがあります。
従業員数基準が 400 人以下に
適用対象となる法人の従業員数の基準が引き下げられました。
| 区分 | 常時使用する従業員数 |
|---|---|
| 改正前 | 500 人以下 |
| 改正後 | 400 人以下 |
従業員数が 400 人を超える法人は、資本金が 1 億円以下でも特例の対象から外れます。北九州エリアの中小企業で影響を受ける会社は限られますが、従業員数が基準に近い会社は注意してください。
適用期限が 3 年延長
特例の適用期限が延長されました。
| 区分 | 適用期限 |
|---|---|
| 改正前 | 令和 8 年 3 月 31 日まで |
| 改正後 | 令和 11 年 3 月 31 日まで |
この特例は時限措置として延長を繰り返してきましたが、今回も 3 年間延長されました。少なくとも令和 11 年 3 月末までに取得して事業に使い始めた資産は、特例の対象になります。
変わらなかった点
改正で見直されなかった点も重要です。特に年間の上限額は据え置かれているため、金額基準が上がったことで上限に達しやすくなっています。
年間 300 万円の上限は据え置き
1 事業年度に特例を適用できる取得価額の合計額は、改正後も 300 万円のままです。金額基準が 40 万円未満に上がったことで、1 台あたりの対象額は増えましたが、合計の枠は変わっていません。
たとえば 38 万円のパソコンを 8 台購入すると合計 304 万円となり、300 万円の枠を超えます。この場合、7 台分の 266 万円までを特例で即時償却し、残る 1 台は通常の減価償却または一括償却資産として処理することになります。どの資産に特例を使うかは会社が選べるため、耐用年数が長い資産を優先して特例に回すと、費用化を早められます。
10 万円未満、20 万円未満の取扱いも従来どおり
10 万円に満たない資産は、特例とは別に消耗品費などとして全額を損金にできます。10 万円以上 20 万円未満の資産は、一括償却資産として 3 年で均等に償却する方法も選べます。これらの取扱いは今回の改正で変わっていません。
| 取得価額 | 選択できる処理 |
|---|---|
| 10 万円未満 | 消耗品費などで全額損金(特例の 300 万円枠を使わない) |
| 10 万円以上 20 万円未満 | 一括償却資産(3 年均等)または少額減価償却資産の特例 |
| 20 万円以上 40 万円未満 | 少額減価償却資産の特例または通常の減価償却 |
| 40 万円以上 | 通常の減価償却 |
10 万円未満の資産は 300 万円の枠を消費しないため、特例の枠は 10 万円以上 40 万円未満の資産に集中して使うことができます。
適用時期と事業年度をまたぐ場合の注意点
今回の改正は、令和 8 年 4 月 1 日以後に取得等をする資産から適用されます。3 月末決算の法人であれば、令和 8 年 4 月から始まる事業年度の取得分がすべて新基準で判定されるため分かりやすい状況です。
一方、3 月末決算以外の法人では、事業年度の途中で基準が切り替わります。たとえば 12 月決算の法人の場合、令和 8 年 1 月から 3 月に取得した資産は 30 万円未満、4 月から 12 月に取得した資産は 40 万円未満で判定することになります。
同じ事業年度内でも取得日によって基準が異なるため、固定資産台帳で取得日を正確に記録しておく必要があります。令和 8 年 3 月に 35 万円の機器を購入していた場合、この資産は旧基準のため特例の対象になりません。購入のタイミングを 4 月以降にずらしていれば対象になっていたことになり、設備投資の時期を計画するうえで意識しておきたい点です。
個人事業主も同様に改正
個人事業主(所得税)についても、法人と同様の改正が行われています。青色申告をしている個人事業主であれば、令和 8 年 4 月 1 日以後に取得した 40 万円未満の資産について、特例による即時償却が可能です。年間 300 万円の上限も法人と同じです。
個人事業主は暦年で所得を計算するため、令和 8 年分の申告では 1 月から 3 月の取得分と 4 月以降の取得分で基準が異なります。法人と同じく、取得日を固定資産台帳に正確に記録しておいてください。
適用を受けるための手続き
この特例を適用するには、確定申告書に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書を添付する必要があります。法人の場合は別表十六(七)を使用し、資産ごとの取得価額や事業供用日を記載します。
明細書の添付がないと特例の適用が認められないおそれがあります。決算時に該当する資産を漏れなく拾い上げてください。会計ソフトで固定資産を登録する際に、特例の対象として区分しておくと集計がスムーズになります。
決算前に確認しておきたい設備投資の進め方
特例を上手に使うには、決算の 2 〜 3 ヶ月前に当期の利益見込みを把握し、必要な設備投資があれば期末までに取得して事業に使い始めることがポイントです。購入しただけで倉庫に置いたままの資産は「事業の用に供した」とはいえず、特例の対象になりません。
また、40 万円未満の資産を複数購入して 300 万円の枠を使い切る計画を立てる場合は、翌期以降に本当に必要な資産かどうかを見極めることも大切です。節税だけを目的に不要な資産を買えば、資金繰りを圧迫するだけになります。
当事務所では、月次の試算表から当期の利益を予測し、必要な投資と特例の枠の使い方をご提案しています。決算前の対策として設備投資をお考えの方は、早めにご相談ください。
当事務所の考え方
決算 2 ヶ月前の利益予測で黒字幅が大きいお客様には、40 万円未満の設備で来期に必要になるものを前倒しで購入する提案をしています。ただし、300 万円の枠を使い切るために不要な資産を買うことはお勧めしていません。資金は残らず、翌期以降の償却費も無くなるためです。
税抜経理を採用している会社は、税込 43 万円台までの資産が特例の対象になります。見積書を税込で見て「対象外」と早合点しているケースが目立つので、判定は税抜金額で行ってください。
よくある質問
少額減価償却資産の特例について、当事務所によく寄せられる質問をまとめます。
Q1. 中古の資産でも特例の対象になりますか
対象になります。新品か中古かは問われず、取得価額が 40 万円未満で事業の用に供していれば特例を適用できます。ただし、貸付け(主要な事業として行うものを除く)の用に供した資産は対象外です。
Q2. 取得価額が 40 万円ちょうどの場合はどうなりますか
40 万円未満が基準であるため、ちょうど 40 万円の資産は対象になりません。税抜経理を採用している場合は税抜金額で判定するため、税込 44 万円(税抜 40 万円)の資産も対象外です。付随費用を含めた取得価額で判定する点にも注意してください。
Q3. 特例を使わずに通常の減価償却を選ぶこともできますか
できます。特例は任意の制度であるため、赤字の年度など損金を増やしても効果が薄い場合は、通常の減価償却を選んで翌年度以降に費用を残す判断もあります。年度の損益の見通しに応じて選択してください。
Q4. 300 万円の上限を超えた分はどうなりますか
超えた部分は特例の対象外となり、通常の減価償却または一括償却資産(20 万円未満の場合)として処理します。どの資産を特例の対象にするかは選択できるため、上限に達しそうな年度は資産の組み合わせを検討すると有利です。
Q5. 令和 8 年 3 月以前に取得した 35 万円の資産は対象になりますか
なりません。令和 8 年 3 月 31 日以前の取得分は改正前の基準(30 万円未満)で判定するため、35 万円の資産は通常の減価償却になります。改正後の基準は令和 8 年 4 月 1 日以後の取得等から適用されます。
Q6. 特例を適用した資産は固定資産税(償却資産)の申告に含めますか
含めます。少額減価償却資産の特例で即時償却した資産は、法人税や所得税では全額損金になりますが、固定資産税の償却資産としては申告の対象になります。10 万円未満で消耗品費として処理した資産や、一括償却資産として 3 年均等償却を選んだ資産は申告の対象外であるため、処理方法によって償却資産税の負担が変わる点も考慮して選択するとよいでしょう。
4 月以降の購入分から判定が変わる
少額減価償却資産の特例は、令和 8 年度税制改正で取得価額の基準が 40 万円未満に引き上げられ、適用期限が令和 11 年 3 月 31 日まで延長されました。一方で年間 300 万円の上限は据え置かれ、従業員数基準は 400 人以下に引き下げられています。
改正は令和 8 年 4 月 1 日以後の取得分から適用されます。3 月末決算以外の法人や個人事業主は、同じ年度内で判定基準が切り替わります。当事務所では、北九州エリアの中小企業・個人事業主の皆様に、設備投資の時期や特例の活用を含めた決算対策をサポートしています。固定資産の処理や節税の相談は、お気軽にお問い合わせください。
