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通勤手当の非課税限度額の見直し(令和 8 年度改正)|片道 65 km 以上の引き上げと駐車場代 5,000 円の加算を北九州の税理士が解説
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- 所得税
- 税務実務
会社が従業員に支給する通勤手当は、一定の限度額まで所得税がかかりません。電車やバスを利用する場合は月 15 万円まで非課税ですが、マイカーや自転車などで通勤する場合は、通勤距離に応じて限度額が細かく定められています。
令和 8 年度税制改正では、令和 7 年に続いてこの距離別の限度額が見直されました。片道 65 km 以上の長距離通勤者の限度額が引き上げられたほか、勤務先周辺の駐車場代を月 5,000 円まで非課税限度額に加算できる仕組みが新たに設けられています。
北九州エリアは自動車通勤の従業員が多く、駐車場を借りて通勤している方も少なくありません。本記事では、中小企業の給与計算をサポートしている税理士の視点から、改正の内容と会社が確認すべきポイントを整理して解説します。
通勤手当の非課税の基本
通勤手当は、会社が従業員の通勤にかかる費用を補填するものであり、実費弁償に近い性格があります。そのため、一定の限度額までは給与として課税されず、源泉徴収の対象にも含めません。限度額を超えて支給した部分は、給与として課税されます。
限度額は、通勤の方法によって次のように区分されています。
| 通勤の方法 | 非課税限度額の考え方 |
|---|---|
| 電車・バスなどの交通機関や有料道路を利用 | 1 ヶ月あたりの合理的な運賃等の額(最高限度 150,000 円) |
| マイカー・自転車などの交通用具を使用 | 片道の通勤距離に応じた定額 |
| 交通機関と交通用具を併用 | 両方の合計額(最高限度 150,000 円) |
交通機関なら実際の定期代が基準です。マイカー通勤はガソリン代の実費を見ず、通勤距離に応じた定額で判定します。
改正後の距離別の非課税限度額
マイカーや自転車などの交通用具を使用して通勤する従業員に支給する通勤手当の、改正後の 1 ヶ月あたりの非課税限度額は次のとおりです。
| 片道の通勤距離 | 非課税限度額(月額) |
|---|---|
| 2 km 未満 | 全額課税 |
| 2 km 以上 10 km 未満 | 4,200 円 |
| 10 km 以上 15 km 未満 | 7,300 円 |
| 15 km 以上 25 km 未満 | 13,500 円 |
| 25 km 以上 35 km 未満 | 19,700 円 |
| 35 km 以上 45 km 未満 | 25,900 円 |
| 45 km 以上 55 km 未満 | 32,300 円 |
| 55 km 以上 65 km 未満 | 38,700 円 |
| 65 km 以上 75 km 未満 | 45,700 円 |
| 75 km 以上 85 km 未満 | 52,700 円 |
| 85 km 以上 95 km 未満 | 59,600 円 |
| 95 km 以上 | 66,400 円 |
片道 2 km 未満の通勤には非課税枠がなく、通勤手当を支給すると全額が課税されます。徒歩でも通える距離と考えられているためです。
片道 65 km 以上の区分が新設
改正前は、片道 55 km 以上の通勤者はすべて一律 38,700 円が限度額でした。改正後は 65 km 以上の区分が細分化され、通勤距離に応じて 45,700 円から 66,400 円まで段階的に引き上げられています。
北九州市内から福岡市や下関市方面へ長距離通勤している従業員がいる会社では、この改正によって非課税で支給できる通勤手当の上限が大きく広がります。片道 70 km の通勤者であれば、改正前の 38,700 円から改正後は 45,700 円となり、月 7,000 円分が新たに非課税になります。
駐車場等の料金相当額の加算
昨年の改正にはなかった項目が、駐車場代の取扱いです。一定の要件を満たす駐車場等を利用している従業員については、上記の距離別の限度額に、1 ヶ月あたりの駐車場等の料金相当額(上限 5,000 円)を加算した金額が非課税限度額になります。
加算の対象となる要件
駐車場等の料金相当額を加算できるのは、次の要件をすべて満たす場合です。
- 通勤のために自動車や自転車などの交通用具を使用している人のうち、駐車場等を利用している人であること(片道 2 km 未満の人を除く)
- 利用している駐車場等が、通勤に使用する交通用具を駐車するためのもので、勤務場所の周辺、または通勤に利用する交通機関の駅や停留所などの周辺にあること
- その駐車場等の料金を負担することが常例であること
自宅付近の駐車場は対象になりません。あくまで勤務先の周辺、または通勤の途中で利用する駅などの周辺にある駐車場が対象です。自転車やバイクの駐輪場も「駐車場等」に含まれます。
新設された区分
この加算に伴い、通勤手当の非課税限度額の区分に、駐車場等を利用する人向けの区分が新たに追加されました。
| 区分 | 非課税限度額 |
|---|---|
| 交通用具を使用し、要件を満たす駐車場等を利用している人 | 距離別の限度額 + 駐車場等の料金相当額(上限 5,000 円) |
| 交通機関と交通用具を併用し、要件を満たす駐車場等を利用している人 | 運賃等の額 + 距離別の限度額 + 駐車場等の料金相当額(上限 5,000 円)の合計(最高限度 150,000 円) |
たとえば片道 20 km をマイカー通勤し、勤務先近くの月 6,000 円の駐車場を借りている従業員の場合、距離別の限度額 13,500 円に駐車場代の加算 5,000 円(6,000 円のうち上限の 5,000 円)を加えた 18,500 円が非課税限度額になります。
改正の適用時期
改正後の非課税限度額は、令和 8 年 4 月 1 日以後に支払われるべき通勤手当から適用されます。4 月分の通勤手当から新しい限度額で判定するため、すでに 4 月以降の給与を旧限度額で計算している場合は、課税・非課税の区分を見直す必要があります。
旧限度額で課税していた部分が改正後は非課税になる場合、年末調整で精算することになります。給与計算ソフトを利用している会社は、通勤手当の非課税限度額のマスターが更新されているかを確認してください。
会社が検討したい対応
改正を受けて、通勤手当の支給ルールを見直す会社が増えると考えられます。検討のポイントを整理します。
長距離通勤者の通勤手当の見直し
片道 65 km 以上の従業員がいる場合、支給額が旧限度額の 38,700 円で頭打ちになっていないかを確認します。改正後の限度額まで支給額を引き上げれば、従業員の手取りを増やしながら非課税で支給できます。ただし、支給額の変更は賃金規程の改定を伴うため、就業規則の手続きもあわせて進めます。
駐車場代の支給の検討
これまで駐車場代を通勤手当として支給していなかった会社は、新たに支給するかどうかを検討する余地があります。従業員が自己負担していた駐車場代を月 5,000 円まで非課税で補助できるため、採用や定着の面でもメリットがあります。
一方で、支給の対象者や金額の確認、駐車場の契約内容の把握など、管理の手間は増えます。駐車場代の領収書や契約書を従業員から出してもらい、要件を満たしているかを会社で確認します。
社会保険料への影響
通勤手当は、所得税では非課税でも、社会保険の報酬には全額が含まれます。通勤手当の支給額を増やすと標準報酬月額が上がり、社会保険料の負担が会社と従業員の双方で増える可能性があります。手取りへの影響は所得税と社会保険料の両面から確認してください。
具体例で確認する非課税限度額の計算
改正後の限度額を、通勤パターン別に当てはめてみます。いずれも令和 8 年 4 月以降の通勤手当を前提にしています。
| 通勤パターン | 非課税限度額(月額) |
|---|---|
| 片道 8 km をマイカー通勤、駐車場は会社敷地内で無料 | 4,200 円 |
| 片道 30 km をマイカー通勤、勤務先近くの月 4,000 円の駐車場を利用 | 19,700 円 + 4,000 円 = 23,700 円 |
| 片道 70 km をマイカー通勤、勤務先近くの月 8,000 円の駐車場を利用 | 45,700 円 + 5,000 円 = 50,700 円 |
| 自宅から駅まで 5 km をマイカー、駅前の月 3,000 円の駐車場を利用し電車定期 12,000 円 | 4,200 円 + 3,000 円 + 12,000 円 = 19,200 円 |
駐車場代の加算は実際の料金と 5,000 円のいずれか低い金額です。2 つ目の例では駐車場代が 4,000 円のため 4,000 円をそのまま加算し、3 つ目の例では 8,000 円のうち上限の 5,000 円だけを加算しています。
4 つ目の例のように、自宅から最寄り駅までマイカーを使い、駅前の駐車場に停めて電車に乗る通勤も加算の対象です。ただし、この場合の駐車場は「通勤に利用する交通機関の駅の周辺」にある必要があり、自宅付近の駐車場は対象外です。また、自宅から駅までの距離が片道 2 km 未満であれば、駅周辺の駐車場であっても加算できません。
会社が実際に支給する通勤手当が限度額を下回っていれば全額が非課税となり、限度額を超えていれば超過分だけが課税されます。従業員ごとに通勤距離、駐車場の有無と料金、交通機関の利用の有無を把握し、限度額を 1 人ずつ計算します。
当事務所の考え方
賃金規程を見直すときは、通勤手当を「距離別の限度額まで」と定めるのではなく、実際の通勤経路にもとづく実費相当を上限として定め、非課税限度額は課税判定にだけ使う形をお勧めしています。限度額いっぱいを支給額にすると、社会保険料の負担が思った以上に増えるためです。
駐車場代の補助を新設する場合は、対象者を「勤務先周辺の月極駐車場を自己負担で契約している従業員」に限定し、契約書の写しを提出条件にすると、後の説明が容易になります。
よくある質問
通勤手当の非課税限度額について、当事務所によく寄せられる質問をまとめます。
Q1. 通勤距離はどのように測ればよいですか
自宅から勤務先までの、通常利用する経路の片道距離で判定します。地図アプリなどで最短経路ではなく実際に通勤に使う合理的な経路の距離を測り、従業員から申告してもらう方法が一般的です。申告内容は通勤経路の届出書として保管しておきます。
Q2. 通勤手当をガソリン代の実費で支給している場合はどうなりますか
マイカー通勤の非課税限度額は距離別の定額で判定するため、実費で支給していても限度額を超えた部分は課税されます。ガソリン価格が上がって実費が限度額を超える月があれば、その超過分は給与として処理します。
Q3. 駐車場代を会社が直接契約して負担している場合はどうなりますか
従業員が選んだ駐車場を会社が代わりに契約して料金を負担する場合は、実態として駐車場代相当額の通勤手当を支給したことと変わりません。そのため、通勤手当を支給したものとして非課税限度額の計算を行います。会社契約であれば非課税枠と無関係になるわけではない点に注意してください。
Q4. 通勤手当をまったく支給していない会社は何か対応が必要ですか
通勤手当を支給していない場合、今回の改正による直接の影響はありません。ただし、改正を機に通勤手当の支給を始める会社もあるため、採用競争力の観点から制度の導入を検討する余地はあります。
Q5. 限度額を超えて支給した部分はどう処理しますか
超過部分は給与として課税し、源泉徴収の対象に含めます。給与明細では通勤手当のうち課税分と非課税分を分けて表示すると、年末調整の際に混乱が生じません。給与計算ソフトでは通勤手当の課税・非課税を自動判定する機能があるため、距離区分の登録を正確に行ってください。
Q6. 改正前の限度額で 4 月分から課税していました。どう直せばよいですか
令和 8 年 4 月 1 日以後の通勤手当には改正後の限度額が適用されるため、本来非課税となる部分を課税していたことになります。年末調整で年間の課税給与を正しく計算し直せば精算できます。すぐに修正する場合は、翌月以降の給与計算で調整する方法もあります。
長距離通勤者と駐車場利用者の支給額を見直す
令和 8 年度税制改正により、マイカーや自転車などで通勤する従業員の通勤手当の非課税限度額が見直されました。片道 65 km 以上の区分が新設されて限度額が引き上げられ、勤務先周辺などの駐車場等の料金相当額を月 5,000 円まで加算できる仕組みが加わっています。改正は令和 8 年 4 月 1 日以後に支払われるべき通勤手当から適用されます。
自動車通勤が多い北九州エリアの会社では、長距離通勤者の支給額や駐車場代の補助を見直す好機です。当事務所では、通勤手当の課税判定を含む給与計算のチェックや、賃金規程の見直しに伴う税務・社会保険の影響の試算をサポートしています。通勤手当の取扱いでご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。
