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財産債務調書と国外財産調書の提出義務|対象者・提出期限・記載内容と提出しなかった場合の影響を北九州の税理士が解説

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  • 所得税
  • 税務実務

所得税の確定申告が終わって一息ついた頃、税務署から「財産債務調書」や「国外財産調書」の提出を促す案内が届くことがあります。これらは確定申告書とは別に提出する書類で、一定以上の所得や財産を持つ個人に提出が義務付けられています。

提出期限は毎年 6 月 30 日で、確定申告の 3 月 15 日から 3 ヶ月半ほど後です。確定申告を終えると安心して忘れてしまいがちですが、提出しなかった場合や記載もれがあった場合には、将来の申告もれに対する加算税が重くなる仕組みがあります。

本記事では、北九州エリアで資産家や経営者の個人の税務をサポートしている税理士の視点から、2 つの調書の提出基準と記載内容、提出の有無による影響を整理して解説します。

財産債務調書とは

一定の所得と財産を持つ方が、その年の 12 月 31 日時点で保有する財産と債務の内容を記載して税務署に提出する書類です。所得税や相続税の申告の適正化を目的として導入されました。

次のいずれかに該当する方が提出します。

区分 提出の基準
所得基準と財産基準の両方に該当する方 その年の退職所得を除く各種所得の合計額が 2,000 万円を超え、かつ 12 月 31 日時点で財産の合計額が 3 億円以上、または有価証券等の合計額が 1 億円以上
財産基準のみに該当する方 12 月 31 日時点で財産の合計額が 10 億円以上(所得の金額にかかわらず)

所得が 2,000 万円を超えていても財産が 3 億円未満なら提出不要です。逆に財産が 10 億円以上あれば、所得がなくても提出します。財産の合計額は、預貯金、不動産、有価証券、貴金属、事業用資産など、すべての財産を合計して判定します。

記載する財産と債務の範囲

財産債務調書には、国内と国外を問わず、12 月 31 日時点で保有するすべての財産と債務を記載します。財産の種類ごとに、所在、数量、価額を記載する必要があります。

  • 土地、建物などの不動産
  • 現金、預貯金
  • 上場株式、非上場株式、投資信託、債券などの有価証券
  • 貸付金、未収入金
  • 書画骨とう、貴金属、自動車など
  • 借入金、未払金などの債務

事業を営んでいる方は、事業用の資産や負債も含めて記載します。同族会社の株式を持っている経営者の方は、非上場株式の評価という一手間が加わります。

財産の評価方法

財産の価額は、原則としてその年の 12 月 31 日時点の時価または見積価額で記載します。不動産は固定資産税評価額、上場株式は年末の終値、非上場株式は直近の決算書をもとにした純資産価額などが見積価額として認められています。

相続税の申告のように厳密な評価は求められていませんが、合理的な方法で見積もる必要があります。年末時点の預金残高証明書や証券会社の残高報告書を保存しておくと、作成がスムーズになります。

国外財産調書とは

その年の 12 月 31 日時点で 5,000 万円を超える国外財産を保有する居住者(非永住者を除く)が提出する書類です。国外財産の把握と適正な課税を目的として、財産債務調書よりも先に導入されました。

所得の金額は問いません。国外財産の合計額が 5,000 万円を超えていれば提出します。海外の不動産、海外の銀行口座の預金、海外の証券会社に預けている株式などが対象になります。

項目 内容
提出義務者 12 月 31 日時点で 5,000 万円を超える国外財産を有する居住者(非永住者以外)
提出期限 翌年 6 月 30 日
記載内容 国外財産の種類、数量、価額、所在など

海外に財産があるかどうかの判定は、財産の種類によって基準が異なります。不動産はその所在地、預金は口座のある金融機関の営業所の所在地、株式は発行法人の本店所在地などで判定します。国内の証券会社を通じて保有している外国株式は、国内の営業所で管理されているため国内財産として扱われます。

財産債務調書との関係

両方の提出義務がある方は、国外財産の明細を国外財産調書に書き、もう一方には国外財産の合計額だけを書きます。同じ財産を両方の調書に詳細に記載する必要はありません。

提出した場合と提出しなかった場合の違い

調書を出した人と出さなかった人で、後日の加算税に差がつく仕組みになっています。

提出した場合の軽減措置

調書を期限内に提出し、記載した財産について後日、所得税や相続税の申告もれが見つかった場合、その財産に関する過少申告加算税や無申告加算税が 5 % 軽減されます。適正に記載していれば、万が一の申告もれの際のペナルティが軽くなる仕組みです。

提出しなかった場合の加重措置

出さなかった場合や、出しても記載すべき財産が抜けていた場合、その財産について申告もれが見つかると加算税が 5 % 加重されます。通常の過少申告加算税は 10 %(一定額を超える部分は 15 %)ですが、これが 15 %(または 20 %)になります。

状況 加算税への影響
期限内に提出し、財産を記載していた 過少申告加算税・無申告加算税が 5 % 軽減
提出しなかった、または記載もれがあった 過少申告加算税・無申告加算税が 5 % 加重

さらに、国外財産調書については、正当な理由なく期限内に提出しなかった場合や虚偽の記載をした場合に、罰則が定められています。財産債務調書にはこのような罰則はありませんが、加算税の加重措置は同様に適用されます。

作成の実務と準備しておきたい資料

調書を作るには、年末時点の財産の一覧と評価額をそろえます。確定申告と同じタイミングで準備を始めると、6 月末の期限に余裕を持って対応できます。

昨年末に金融機関から届いた残高証明書や取引残高報告書、固定資産税の課税明細書、法人の決算書(非上場株式の評価用)、借入金の返済予定表などを保管しておきます。海外の金融機関の口座がある方は、年末の残高が分かる書類を取り寄せ、為替レートで円換算します。

毎年提出する方は、前年の調書をもとに増減を反映する方法が効率的です。財産の種類ごとの記載方法は国税庁の記載要領で細かく定められているため、初めて作成する場合は税理士に相談することをおすすめします。

経営者が特に注意したい点

会社を経営している方は、自社株式の評価額によって財産の合計額が 3 億円を超えることがあります。業績が好調で会社の純資産が積み上がっている場合、本人が意識していなくても財産基準に該当しているケースがあります。

役員報酬と配当を合わせて所得が 2,000 万円を超えており、かつ自社株式と不動産などを合わせて 3 億円以上の財産があれば、財産債務調書の提出義務があります。自社株式の価額は法人の決算書から純資産価額を計算する必要があるため、法人の決算が固まった後に個人の財産を集計する流れになります。

また、会社への貸付金や会社からの借入金も、財産や債務として記載する対象です。役員貸付金や役員借入金の残高は法人の決算書で確認できます。

提出義務の判定を具体例で確認する

提出が必要かどうかは、所得と財産の両方の数字を確認しないと判断できません。北九州エリアの経営者によく見られるパターンを例に、判定の流れを確認します。

判定
役員報酬 2,500 万円、自社株式 2 億円、自宅と預金 1.2 億円 所得 2,000 万円超かつ財産 3.2 億円のため提出が必要
役員報酬 1,800 万円、自社株式 3 億円、預金 5,000 万円 財産は 3.5 億円だが所得が 2,000 万円以下のため提出不要
不動産所得 2,200 万円、賃貸不動産 2.5 億円、預金 3,000 万円 所得 2,000 万円超だが財産 2.8 億円のため提出不要
年金収入のみ、上場株式 1.2 億円、預金 2 億円 有価証券等は 1 億円以上だが所得が 2,000 万円以下のため提出不要

2 つ目と 3 つ目の例のように、所得か財産のどちらか一方だけが基準を超えている場合は提出義務がありません。ただし、役員退職金を受け取った年や不動産を売却した年は所得が一時的に跳ね上がるため、その年だけ提出義務が生じることがあります。

退職所得は所得基準の計算から除かれますが、不動産の譲渡所得や株式の譲渡所得は含まれます。自社株式を後継者に売却した年や、賃貸不動産を売却した年は、譲渡所得が 2,000 万円を超えていないか確認してください。

提出方法と様式

調書は、所得税の確定申告書と同じく、住所地を管轄する税務署に提出します。書面のほか、e-Tax による電子提出も可能です。財産債務調書には、財産や債務の合計額を記載する「財産債務調書合計表」を添付します。

様式は国税庁のウェブサイトからダウンロードできます。財産の種類ごとに記載欄が分かれており、不動産は所在地と面積、預貯金は金融機関名と口座の種類、有価証券は銘柄と数量などを記載します。記載する項目が多いため、財産の一覧表を先に作成してから様式に転記する方法が効率的です。

当事務所の考え方

経営者の方には、法人の決算が固まった時点で自社株式の純資産価額を計算し、個人の財産一覧に載せておくことをお勧めしています。財産債務調書の要否は毎年 6 月に判定しますが、自社株式の評価は決算後でないと出ないためです。

初めて提出する年は、財産の一覧表の作成に時間がかかります。5 月中に金融機関の残高証明書や固定資産税の課税明細書をそろえておけば、6 月末の期限に余裕を持てます。

よくある質問

財産債務調書と国外財産調書について、当事務所によく寄せられる質問をまとめます。

Q1. 確定申告をしていない場合でも提出しますか

財産債務調書は、財産の合計額が 10 億円以上の方であれば、所得の金額にかかわらず提出します。国外財産調書も、国外財産が 5,000 万円を超えていれば確定申告の有無にかかわらず提出義務があります。確定申告をしていないから関係ないとは限りません。

Q2. 提出期限を過ぎてしまった場合はどうすればよいですか

期限後でも提出できます。税務調査の事前通知を受ける前に提出すれば、期限内に提出したものとみなして軽減措置が適用される取扱いがあります。気づいた時点で出してください。

Q3. 財産の評価額に自信がない場合はどうすればよいですか

合理的な方法で見積もった価額であれば認められます。不動産は固定資産税評価額、非上場株式は直近の純資産価額など、国税庁が示している見積方法を使えば問題ありません。厳密な時価を算定する必要はないため、資料にもとづいて計算した金額を記載してください。

Q4. 夫婦で財産を共有している場合はどう記載しますか

共有財産は、それぞれの持分に応じた価額を各自の調書に記載します。夫婦であっても調書は個人ごとに作成し、提出義務の判定も個人ごとに行います。名義預金など、名義と実質的な所有者が異なる財産は、実質で判断します。

Q5. 相続で取得した財産はいつから記載しますか

相続で取得した財産は、相続が発生した年の 12 月 31 日時点で保有していれば記載の対象です。ただし、相続開始年の調書については、相続財産を記載せずに提出できる特例があります。翌年以降の調書には相続財産を含めて記載します。

6 月 30 日までに出すかどうかを判定する

財産債務調書は、所得 2,000 万円超かつ財産 3 億円以上(または有価証券等 1 億円以上)の方と、財産 10 億円以上の方が提出する書類で、国外財産調書は 5,000 万円を超える国外財産を持つ方が提出します。提出期限はいずれも 6 月 30 日です。

適正に提出していれば将来の申告もれの加算税が軽減され、提出しなければ加重されます。対象となる方は確実に提出しておいてください。当事務所では、北九州エリアの経営者や資産家の皆様に、自社株式や不動産の評価を含めた調書の作成をサポートしています。提出義務の有無の判定からご相談いただけますので、お気軽にお問い合わせください。

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