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中小企業経営者の 3 割は 70 歳代以上|産業別の年代構成から考える事業承継のタイミングを北九州の税理士が解説
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- 事業承継
- 経営
「自分はまだ現役だから」と事業承継の話題を先送りにしている経営者の方に、当事務所でもよくお会いします。しかし統計を見ると、中小企業の経営者の年齢は着実に上がっており、70 歳代以上の経営者が全体の 3 割を超えています。
2026 年 2 月に公表された中小企業庁の調査結果から、産業別に経営者の年代構成を確認すると、業種によって高齢化の進み方に違いがあることが分かります。自社の業種の傾向を知ることは、承継の準備を始める時期を考える手がかりになります。
本記事では、北九州エリアで事業承継の相談を受けている税理士の視点から、調査結果の内容と、経営者の年齢から考える事業承継の進め方を整理して解説します。
調査の概要
今回参照するのは、中小企業庁の「令和 7 年中小企業実態基本調査(令和 6 年度決算実績)速報」です。11 の産業に属する中小企業約 11 万社を抽出し、2024 年度決算の状況などを調査したもので、有効回答率は 41.2 % です。
この調査には事業承継の状況に関する項目があり、産業別・従業者規模別に経営者の年代構成が集計されています。中小企業全体の傾向を把握するうえで、信頼性の高い統計のひとつです。
全体では 60 歳代が最も多い
2024 年度の中小企業経営者の年代別構成比を全体で見ると、60 歳代が 27.5 % で最も高く、50 歳代が 25.5 % で続いています。70 歳代も 24.9 % あり、80 歳代以上の 8.1 % を加えると、70 歳代以上の経営者は 33.0 % に達します。
| 年代 | 構成比(全体) |
|---|---|
| 20 歳代以下 | 0.1 % |
| 30 歳代 | 2.1 % |
| 40 歳代 | 11.8 % |
| 50 歳代 | 25.5 % |
| 60 歳代 | 27.5 % |
| 70 歳代 | 24.9 % |
| 80 歳代以上 | 8.1 % |
50 歳代から 70 歳代で全体の 4 分の 3 以上を占めており、40 歳代以下の経営者は 14 % にとどまります。中小企業の経営の担い手が、いかに高い年齢層に集中しているかが分かる数字です。
2019 年度からの変化
2019 年度当時は、70 歳代が 29.3 %、60 歳代が 28.2 %、50 歳代が 21.4 % でした。2024 年度と比べると、70 歳代の割合が 4.4 ポイント低下し、50 歳代の割合が 4.1 ポイント上昇しています。
| 年代 | 2019 年度と 2024 年度の構成比 |
|---|---|
| 50 歳代 | 21.4 % から 25.5 % へ上昇 |
| 60 歳代 | 28.2 % から 27.5 % へ微減 |
| 70 歳代 | 29.3 % から 24.9 % へ低下 |
| 80 歳代以上 | 6.7 % から 8.1 % へ上昇 |
70 歳代の割合が下がったのは、この 5 年間で事業承継や廃業が進み、一定数の高齢経営者が交代したためでしょう。一方で 80 歳代以上の割合は上昇しており、承継が進まないまま高齢化している層も存在します。
産業別に見た年代構成の特徴
産業別に見ると、経営者の年齢層には業種ごとの特徴があります。
| 産業 | 最も割合の高い年代とその構成比 |
|---|---|
| 建設業 | 50 歳代 28.9 % |
| 製造業 | 60 歳代 27.6 % |
| 情報通信業 | 50 歳代 31.7 % |
| 運輸業、郵便業 | 50 歳代 31.6 % |
| 卸売業 | 60 歳代 27.9 % |
| 小売業 | 70 歳代 27.6 % |
| 不動産業、物品賃貸業 | 70 歳代 27.6 % |
| 学術研究、専門・技術サービス業 | 60 歳代 31.1 % |
| 宿泊業、飲食サービス業 | 70 歳代 29.3 % |
| 生活関連サービス業、娯楽業 | 50 歳代 26.8 % |
| サービス業(他に分類されないもの) | 50 歳代 30.9 % |
50 歳代が最も高いのは、建設業、情報通信業、運輸業・郵便業、生活関連サービス業・娯楽業、サービス業でした。70 歳代が最も高いのは、小売業、不動産業・物品賃貸業、宿泊業・飲食サービス業です。
若い経営者が多い情報通信業
40 歳代の割合は情報通信業の 19.4 % が最も高く、30 歳代も情報通信業の 4.6 % が最も高くなりました。創業の敷居が比較的低く、新しい会社が生まれやすい業種だからです。
高齢化が進む小売業と不動産業
小売業と不動産業・物品賃貸業では、70 歳代の割合が 27.6 % で最も高く、80 歳代以上もそれぞれ 11.0 %、17.1 % と高い水準です。不動産業では 70 歳代以上が 44.7 % を占めています。
商店街の個人商店や、先代から引き継いだ賃貸不動産を管理する会社など、長年にわたって同じ経営者が続けているケースが多い業種です。北九州エリアでも、小売業や不動産賃貸業では後継者の有無が経営の大きな課題になっています。
経営者の高齢化が経営に与える影響
経営者の年齢が上がることは、それ自体が問題ではありません。しかし、承継の準備がないまま高齢化が進むと、経営にいくつかの影響が出てきます。
金融機関からの評価
金融機関は融資審査の際に、経営者の年齢と後継者の有無を確認します。経営者が 70 歳を超えて後継者が決まっていない場合、長期の融資に慎重になる傾向があります。設備投資や運転資金の調達に影響が出る前に、後継者の方針を示せるようにしておいてください。
取引先や従業員の不安
取引先は、経営者の年齢から会社の継続性を測ります。従業員も、自分の雇用が今後どうなるのかを気にしています。後継者が見えない会社は、優秀な人材の採用や定着で不利になります。
突発的な事態への備え
経営者の病気や事故は、年齢が上がるほど起こりやすくなります。承継の準備がない状態でこうした事態が起きると、会社の株式や借入金の個人保証、取引先との関係などをめぐって混乱が生じ、事業の継続そのものが危うくなることがあります。
事業承継の準備を始める目安
事業承継には、後継者の選定と育成、株式の移転、税負担の検討、金融機関や取引先への説明など、多くの工程があります。準備から完了まで 5 年から 10 年かかります。経営者が 60 歳になる頃には検討を始めてください。
| 経営者の年齢 | 準備の目安 |
|---|---|
| 50 歳代 | 後継者候補の検討を始め、会社の現状(株式、資産、負債)を整理する |
| 60 歳代 | 後継者を決めて育成を進め、株式の移転方法と税負担を検討する |
| 70 歳代 | 承継を実行し、代表者の交代と株式の移転を完了させる |
調査結果では 60 歳代の経営者が最も多く、この年代はまさに承継の準備を本格化させる時期にあたります。
承継の選択肢
後継者の候補は、親族、従業員、第三者(M&A)に大別されます。親族に候補がいない場合でも、役員や従業員への承継、他社への売却という選択肢があります。
親族への承継では、自社株式の贈与や相続に伴う税負担が課題になります。事業承継税制を活用すれば、一定の要件のもとで贈与税や相続税の納税が猶予される制度があります。従業員への承継では、株式の買取り資金の確保が課題です。第三者への売却では、会社の価値を高めたうえで相手を探します。
承継の準備で税理士が関わること
事業承継では、自社株式の評価が出発点になります。株式の評価額によって、贈与税や相続税の負担、買取りに必要な資金が大きく変わるためです。評価額を下げる対策や、納税資金の準備、事業承継税制の適用要件の確認など、税務面の検討事項は多岐にわたります。
また、経営者個人の財産と会社の財産の整理、役員借入金や個人保証の取扱い、退職金の支給計画なども、承継とあわせて検討する必要があります。早い段階から税理士と一緒に現状を整理しておくことで、選択肢を広く持ったまま準備を進められます。
当事務所の考え方
事業承継の相談は、後継者が決まってからではなく、自社株式の評価額を知るところから始めるようお伝えしています。評価額が分かれば、贈与か相続か売却か、それぞれの税負担と必要な資金の目安が出て、現実的な選択肢が絞れます。
代表が 60 歳を超えているお客様には、後継者の有無にかかわらず、株主構成と役員借入金、個人保証の一覧を作ることを最初の一歩としてお勧めしています。万一の際に会社を止めないための最低限の整理です。
よくある質問
経営者の年齢と事業承継について、当事務所によく寄せられる質問をまとめます。
Q1. 後継者がいない場合はどうすればよいですか
親族に候補がいなくても、従業員への承継や M&A による第三者への売却という選択肢があります。福岡県事業承継・引継ぎ支援センターなどの公的機関が相談窓口を設けており、後継者のマッチング支援も行っています。早めに相談することで選択肢が広がります。
Q2. 事業承継の準備は何から始めればよいですか
自社株式の評価と、会社の資産・負債の現状把握から始めます。株式の評価額が分かれば、承継にかかる税負担や資金の目安が見えてきます。そのうえで、後継者候補の検討と、承継の方法(贈与、相続、売却)の比較に進みます。
Q3. 70 歳を過ぎていますが、今からでも間に合いますか
間に合います。ただし、準備に使える時間が限られるため、優先順位をつけて進める必要があります。後継者の決定と株式の移転を先に進め、育成は並行して行うなど、段取りを工夫します。健康なうちに着手することが何より大切です。
Q4. 事業承継税制はどのような制度ですか
一定の要件を満たす非上場株式の贈与や相続について、贈与税や相続税の納税が猶予され、最終的に免除される制度です。特例措置の適用には都道府県への特例承継計画の提出が必要で、提出期限が定められています。適用を検討する場合は、期限を確認したうえで早めに準備してください。
Q5. 廃業を選ぶ場合の注意点はありますか
廃業には、従業員の処遇、取引先への通知、資産の処分、借入金の返済、法人の解散・清算手続きなどが伴います。資産の売却益に対する税負担や、清算に伴う税務申告も必要です。廃業を選ぶ場合でも、M&A で事業の一部だけを引き継いでもらう可能性を含めて、専門家に相談することをおすすめします。
Q6. 承継後も先代が会社に関わることはできますか
できます。代表を退いた後も会長や相談役として残り、後継者を支える形は多くの会社で採られています。ただし、経営の実権が先代に残ったままでは後継者が育ちにくく、金融機関や取引先からも承継が完了したと見なされません。役員報酬や退職金の税務上の取扱いにも影響するため、関わり方は承継の計画の段階で決めておくことをおすすめします。
60 歳代が準備を本格化させる時期
中小企業庁の調査によると、中小企業経営者は 60 歳代が 27.5 % で最も多く、70 歳代以上が 33.0 % を占めています。2019 年度からは 70 歳代の割合が低下して 50 歳代が上昇しており、承継が進んだ面がある一方で、小売業や不動産業では高齢化が続いています。
事業承継の準備には 5 年から 10 年かかるため、60 歳代の経営者は検討を本格化させる時期にあります。当事務所では、北九州エリアの経営者の皆様に、自社株式の評価から承継方法の比較、事業承継税制の活用まで、承継の準備を段階的にサポートしています。自社の承継について考え始めた方は、お気軽にご相談ください。
