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副業・兼業人材とスポットワーク人材の活用|中小企業白書に見る業種別の活用状況と受け入れ時の税務・労務の注意点を北九州の税理士が解説

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  • 経営
  • 労務

人手不足が続くなか、正社員の採用だけに頼らず、他社に勤める人の空き時間や、アプリを通じて単発で働く人の力を借りる会社が増えています。副業・兼業人材やスポットワーク人材と呼ばれる働き方で、飲食業や運送業を中心に活用が広がっています。

2026 年 4 月に公表された中小企業白書には、中小企業におけるこれらの人材の活用状況が業種別にまとめられています。全体ではまだ 1 割に満たない水準ですが、業種による差が大きく、宿泊業・飲食サービス業では半数近い企業がスポットワーク人材を活用しています。

本記事では、北九州エリアで中小企業の経営と労務・税務の相談を受けている税理士の視点から、白書のデータと、こうした人材を受け入れる際に会社が押さえておきたい注意点を整理して解説します。

副業・兼業人材とスポットワーク人材とは

白書は用語を次のように定義しています。

区分 定義
副業・兼業人材 他社の正社員が、業務後や休日等の空き時間を使って別の仕事を行うもの
スポットワーク人材 求人関連のアプリやプラットフォームを用いて、短時間・単発の業務に従事する人材

副業・兼業人材は、本業を持ちながら専門性を活かして他社の業務を担うケースが典型で、経理や IT、マーケティングなどの分野で活用されています。スポットワーク人材は、飲食店のホールや倉庫の軽作業、イベントの設営など、その日限りの労働力が必要な場面で活用されることが多い働き方です。

調査の概要

参照するデータは、中小企業庁の「2026 年版中小企業白書」214 〜 215 ページに掲載されている、帝国データバンクの「令和 7 年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」の結果です。全国の中小企業 12,215 社を対象とした分析であり、業種別の活用状況が示されています。

副業・兼業人材の活用は 7.0 %

現在活用している中小企業は、全体で 7.0 % でした。現在は活用していないが活用したことがある企業の 4.0 % をあわせると、11.0 % の企業に活用の経験があります。

業種 副業・兼業人材を現在活用している割合
全体 7.0 %
建設業 4.7 %
製造業 6.1 %
情報通信業 7.3 %
運輸業、郵便業 15.9 %
卸売業 5.6 %
小売業 9.1 %
宿泊業、飲食サービス業 32.9 %

業種別では、宿泊業・飲食サービス業が 32.9 % で最も高く、運輸業・郵便業が 15.9 % と 10 % を超えています。最も低いのは建設業の 4.7 % で、次いで卸売業の 5.6 % でした。

スポットワーク人材の活用は 6.1 %

こちらは全体で 6.1 % でした。活用したことがある企業の 5.8 % をあわせると 11.9 % となり、副業・兼業人材と同程度の水準です。

業種 スポットワーク人材を現在活用している割合
全体 6.1 %
建設業 4.0 %
製造業 5.2 %
情報通信業 6.0 %
運輸業、郵便業 12.6 %
卸売業 5.2 %
小売業 11.0 %
宿泊業、飲食サービス業 49.4 %

宿泊業・飲食サービス業では 49.4 % と半数近くの企業がスポットワーク人材を活用しており、運輸業・郵便業が 12.6 %、小売業が 11.0 % で続きます。最も低いのは建設業の 4.0 % です。

今後の活用意向

活用したことはないが今後活用する意向がある企業は、副業・兼業人材で 14.5 %、スポットワーク人材で 13.3 % でした。一方、活用したことがなく今後も活用する意向がない企業は、それぞれ 74.5 %、74.8 % と 4 分の 3 を占めています。

業種による活用状況の違いが明確ですが、自社の業務を見直すことなどにより、こうした人材を活用できる企業が増える可能性があります。

活用が進む業種と進まない業種の違い

宿泊業・飲食サービス業や運輸業で活用が進んでいるのは、業務が時間や日で区切りやすく、繁閑の差が大きいという特徴があるためです。週末や繁忙期だけ人手が必要な場面では、その日限りの労働力を確保できるスポットワークとの相性がよくなります。

一方、建設業や製造業では、安全教育や技能の習得が必要な業務が多く、初めての人がその日から戦力になりにくいことが活用の障壁になっています。ただし、事務作業や資材の整理、清掃など、切り出せる業務がまったくないわけではありません。

自社の業務のなかで、単発で任せられる作業、専門性はあるが常勤は不要な業務を洗い出すことが、活用の第一歩になります。

受け入れる際の税務・労務の注意点

契約の形態によって、税務や労務の取扱いが変わります。会社が押さえておきたい点を整理します。

雇用か業務委託かの区分

副業・兼業人材との契約は、雇用契約と業務委託契約のどちらもあり得ます。会社の指揮命令のもとで働く場合は雇用契約となり、労働基準法の適用や源泉徴収、労働保険の対象になります。成果物の納品や特定の業務の遂行を約束する場合は業務委託契約となり、報酬の支払時に源泉徴収の対象になる業務(原稿料、デザイン、コンサルティングなど)かどうかを確認します。

契約書の名称が業務委託でも、実態が雇用であれば労働者として扱われます。働き方の実態に合った契約形態を選ぶことが、後のトラブルを防ぎます。

スポットワークの雇用形態

スポットワークのアプリを通じた就業は、多くの場合、アプリの運営会社ではなく受け入れ企業との間で短期の雇用契約が成立します。1 日単位の雇用であっても、労働時間の管理、賃金の支払い、労災保険の適用は通常の雇用と同じです。

日雇労働者に支払う賃金からの源泉徴収は、日額表の丙欄を使って計算します。給与計算ソフトで丙欄の設定ができるかを確認しておいてください。

労働時間の通算

雇用契約で副業・兼業人材を受け入れる場合、本業の労働時間と自社での労働時間は通算されます。本業で 1 日 8 時間働いた後に自社で 2 時間働けば、自社での 2 時間は法定時間外労働となり、割増賃金の対象になります。本人から本業の労働時間を申告してもらい、自社での勤務時間を管理する必要があります。

社会保険の取扱い

短時間・短期間の勤務であれば、健康保険や厚生年金保険の加入要件を満たさないことが多いですが、勤務日数や時間が増えて要件を満たしたら加入手続きをします。副業・兼業で複数の会社の加入要件を満たす場合は、本人が選択した事業所で手続きを行う仕組みがあります。

費用の経理処理

雇用契約であれば給与手当として処理し、業務委託であれば外注費や支払手数料として処理します。業務委託の場合、相手が免税事業者であればインボイスの経過措置(令和 8 年 10 月からは 7 割控除)の適用を検討します。スポットワークのアプリ運営会社に支払う手数料は、支払手数料として処理します。

自社での活用に向けた進め方

こうした人材の活用を検討する場合、いきなり広い範囲で始めるのではなく、限られた業務で試してみることをおすすめします。

  • 単発で任せられる業務、専門性はあるが常勤は不要な業務を洗い出す
  • 業務の手順を文書化し、初めての人でも取り組めるようにする
  • 契約形態(雇用か業務委託か)を決め、契約書や労働条件通知書を準備する
  • 給与計算や源泉徴収、労働時間管理の方法を確認する
  • 少人数・短期間で試し、業務の切り出し方や受け入れ体制を改善する

受け入れ体制が整えば、繁忙期の人手の確保や、専門分野の業務を外部の知見で補うことが可能になり、正社員の採用だけに頼らない人材確保の選択肢が広がります。

当事務所の考え方

外部人材を初めて受け入れる会社には、業務委託ではなく短期の雇用契約から始めることをお勧めしています。会社が業務の進め方を指示する場面が多い初期段階では、業務委託の形にすると実態が雇用と判断されるおそれがあるためです。

給与計算では、日雇いの従業員に丙欄を使う設定と、労働時間の通算の管理を先に整えてください。ここが整っていないと、受け入れ後に源泉徴収や割増賃金の計算で手戻りが生じます。

よくある質問

副業・兼業人材とスポットワーク人材の活用について、当事務所によく寄せられる質問をまとめます。

Q1. 副業・兼業人材を受け入れる場合、本業の会社の許可は必要ですか

本人が本業の会社の就業規則に従って副業の許可や届出を行うことが前提です。受け入れ側の会社が直接確認する義務はありませんが、後のトラブルを避けるため、本業で副業が認められていることを本人に確認しておくことをおすすめします。

Q2. スポットワークで来た人が業務中にけがをした場合はどうなりますか

雇用契約であれば労災保険の対象になります。1 日限りの雇用でも労災保険は適用されるため、労災の手続きを行います。業務委託の場合は労災保険の対象外であるため、契約時に保険の取扱いを確認しておく必要があります。

Q3. 業務委託で受け入れた副業人材への報酬は源泉徴収の対象ですか

報酬の内容によります。原稿料、デザイン料、講演料、コンサルティング料など、所得税法で定められた報酬・料金に該当する場合は、支払時に 10.21 %(100 万円超の部分は 20.42 %)を源泉徴収します。単純な事務作業の委託など該当しない業務であれば源泉徴収は不要です。

Q4. 自社の従業員が副業をしたいと申し出た場合はどうすればよいですか

副業を認めるかどうかは会社の判断ですが、近年は副業を認める方向で就業規則を整備する会社が増えています。認める場合は、労働時間の通算や情報漏えいの防止、健康管理の観点から、届出制にして副業の内容と労働時間を把握する仕組みを設けることが一般的です。

Q5. 活用にあたって助成金はありますか

副業・兼業人材の受け入れそのものを対象とする助成金は限られますが、外部人材を活用して生産性向上に取り組む場合に利用できる補助金や、人材確保に関する助成金が用途に応じて存在します。福岡県や北九州市の支援制度も含めて、事前に確認することをおすすめします。

Q6. 雇用契約と業務委託契約のどちらが会社にとって負担が少ないですか

業務委託契約であれば労働時間の管理や割増賃金、労働保険の負担はありませんが、会社が業務の進め方を細かく指示できないという制約があります。指揮命令のもとで働いてもらう必要があるなら雇用契約を選ぶべきであり、負担の軽さだけで業務委託を選ぶと、実態が雇用と判断されて未払賃金や保険料の問題が生じるおそれがあります。業務の性質に合わせて選んでください。

雇用か業務委託かを先に決める

2026 年版中小企業白書によると、副業・兼業人材を活用している中小企業は 7.0 %、スポットワーク人材は 6.1 % で、宿泊業・飲食サービス業や運輸業・郵便業で活用が進んでいます。業種による差は大きいものの、自社の業務を見直すことで活用の余地が広がる可能性があります。

受け入れの際は、雇用か業務委託かの区分、労働時間の通算、源泉徴収や社会保険の取扱い、経理処理を整理しておくことが欠かせません。当事務所では、北九州エリアの中小企業の皆様に、外部人材の受け入れに伴う契約形態の検討や給与計算、税務処理をサポートしています。副業・兼業人材やスポットワーク人材の活用をお考えの方は、お気軽にご相談ください。

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