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企業が重視しているリスクと保険・共済への加入状況|地震リスク 91 % に対し地震保険加入は 46 %、中小企業の備えを北九州の税理士が解説
公開日
- 経営
9 月 1 日の防災の日を前後して、自社の防災対策を見直す会社は多いと思います。北九州エリアは台風や大雨による風水害のリスクがあり、地震についても備えが必要な地域です。事業を続けていくには、災害などのリスクを想定したうえで、被害を受けたときに事業を立て直す資金の手当てまで考えておく必要があります。
2026 年 3 月に公表された内閣府の調査結果では、企業がどのようなリスクを重視しているか、そして保険や共済などのリスクファイナンスにどの程度加入しているかが示されています。リスクとして地震を挙げる企業が 9 割を超える一方、地震保険に加入している企業は半数に届いていません。
本記事では、中小企業の経営と資金の相談を受けている税理士の視点から、調査結果の内容と、中小企業がリスクへの備えを考える際の視点を整理して解説します。
調査の概要
参照するのは、内閣府防災担当の「令和 7 年度企業の事業継続及び防災の取組に関する実態調査」です。企業規模別(大企業、中堅企業、その他企業)に分類した調査対象 5,052 社に対し、昨年 11 月から 12 月に行われました。有効回答数は 1,759 社、回収率は 34.8 % です。
企業の事業継続計画(BCP)の策定状況や防災の取組を継続的に把握するための調査で、リスクの認識と備えの実態を企業規模別に比較できる点が特徴です。
7 割の企業がリスクを想定して経営
調査結果によると、回答企業全体の 72.3 % がリスクを具体的に想定して経営を行っていると回答しています。現在検討中の企業も 18.5 % あり、あわせると 90 % を超えます。
リスクを想定せずに経営している企業は 1 割に満たず、多くの企業が何らかのリスクを意識していることが分かります。ただし、想定しているリスクの内容や、備えの水準には企業ごとの差があります。
企業が重視しているリスク
具体的に想定して経営を行っている企業と、現在検討中の企業が挙げたリスクをまとめると、次のとおりです。全体の数字を中心に確認します。
| リスクの内容 | 重視している企業の割合(全体) |
|---|---|
| 地震 | 91.4 % |
| 感染症(新型インフルエンザ等) | 59.3 % |
| 火災・爆発 | 49.5 % |
| 洪水(津波以外) | 47.9 % |
| 通信(インターネット・電話)の途絶 | 47.4 % |
| 津波 | 42.8 % |
| 外部委託先のサーバー・データセンター等情報システムの停止 | 28.8 % |
| インフラ(水道、ガス等)の途絶 | 27.6 % |
| インフラ(道路等の交通インフラ)の途絶 | 27.5 % |
| 風害 | 25.1 % |
| 土砂災害 | 19.4 % |
| 雪害 | 18.8 % |
| 取引先企業の倒産・事業中断 | 18.8 % |
| 物流網の断絶による仕入品の欠品 | 15.7 % |
| テロ・紛争(国内外) | 11.9 % |
| 大気・土壌・海洋汚染等の環境リスク | 9.5 % |
| 経営幹部の突然の喪失 | 6.8 % |
| テレワーク等による従業員とのコミュニケーション不足 | 5.9 % |
| 他国からのミサイル攻撃 | 4.9 % |
全体では地震が 91.4 % で最も高く、次いで感染症が 59.3 % となりました。地震は企業規模を問わず最も高く、感染症もすべての規模で 2 番目に高い状況です。そのほか、火災・爆発、洪水、通信の途絶、津波などを重視する企業が多くなっています。
企業規模による違い
大企業では、地震 96.7 %、感染症 71.1 %、津波 60.1 %、洪水 63.4 % など、すべての項目で中堅企業やその他企業より高い割合を示しています。拠点が多く、サプライチェーンも広い大企業ほど、幅広いリスクを想定している状況です。
その他企業(中小企業が中心)では、地震 89.3 %、感染症 54.1 %、火災・爆発 49.7 % となっており、自社の拠点で直接被害を受けるリスクを中心に想定している傾向がうかがえます。
近年高まっているリスク
国際情勢の緊迫化によるリスクも高まる昨今、事業環境の不確実性が増しています。他国からのミサイル攻撃を重視する企業は全体で 4.9 % と低い水準ですが、大企業では 12.2 % に上ります。通信の途絶を重視する企業は半数近く、情報システムの停止も 3 割近くあり、サイバー攻撃やシステム障害が自然災害と並ぶリスクとして認識されるようになっています。
保険・共済への加入状況
被害を受けたときの資金をどう手当てするかが、リスクファイナンスです。調査結果から、企業の保険・共済などへの加入状況をまとめると次のとおりです。
| 加入状況 | 全体 |
|---|---|
| 損害保険・共済(加入対象は建物 + 設備一式)に加入している | 44.0 % |
| 損害保険・共済(加入対象は建物 + 重要設備のみ)に加入している | 19.2 % |
| 損害保険・共済(加入対象は建物のみ)に加入している | 11.6 % |
| 損害保険・共済(加入対象は設備のみ)に加入している | 6.4 % |
| その他 | 3.5 % |
| いずれも未加入 | 10.1 % |
| 無回答 | 5.2 % |
全体では、建物と設備一式を対象とする損害保険・共済に加入している企業が 44.0 % で最も高く、建物と重要設備のみを対象とするものが 19.2 % で続きます。いずれも未加入は 10.1 % で、全体の 85 % 程度の企業が何らかの損害保険・共済に加入していることが分かります。
規模別でも同様の傾向ですが、いずれも未加入の割合は、その他企業が 12.5 % と高くなっています。大企業の 7.0 %、中堅企業の 7.2 % と比べると、中小企業で備えが手薄な会社が相対的に多い状況です。
地震保険の加入は 5 割未満
地震を重視する企業が 9 割を超える一方で、地震に対する保険への加入状況は次のとおりです。
| 加入状況 | 全体 |
|---|---|
| 加入している | 46.2 % |
| 現在検討中 | 7.8 % |
| 加入していない | 40.9 % |
| 無回答 | 5.1 % |
全体で地震保険に加入している企業は 46.2 % にとどまり、規模別では大企業(50.1 %)だけが 50 % を超えました。中堅企業は 45.7 %、その他企業は 45.3 % です。
一般の火災保険では地震による損害は補償されないため、地震のリスクを重視しているのであれば、地震保険や地震補償特約、共済の地震見舞金などで備える必要があります。リスクとしての認識と、資金面の備えとの間に開きがあることが、この調査から見えてきます。
中小企業がリスクファイナンスを考える視点
企業によって事業内容はもちろん、資産等の保有状況等の違いにより、必要となる保険等が異なります。自社に必要な備えを考える際の視点を整理します。
被害を受けたときに必要な資金を見積もる
建物や設備の復旧費用だけでなく、営業できない期間の固定費(人件費、家賃、借入金の返済)、取引先への補償、代替拠点の確保などにかかる資金を見積もります。復旧までに 3 ヶ月かかると仮定した場合の資金の総額が、備えの目安になります。
保険と自己資金の組み合わせ
すべてのリスクを保険でカバーしようとすると保険料の負担が大きくなります。発生頻度は低いが損害が大きいリスク(地震、火災)は保険で、頻度は高いが損害が小さいリスクは自己資金や積立で備えるという考え方が基本です。
事業を休止した期間の利益を補償する休業補償(利益保険)や、取引先の倒産に備える取引信用保険なども、業種によっては検討の対象になります。
共済の活用
中小企業向けには、中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)のように、取引先の倒産時に借入れができる制度があります。掛金は損金に算入できるため、税務上のメリットとリスクへの備えを兼ねた制度として活用されています。火災共済や地震共済など、事業協同組合や商工会議所を通じて加入できる共済もあります。
保険料と共済掛金の税務上の取扱い
損害保険料や共済掛金は、原則としてその事業年度の損金に算入されます。ただし、複数年分をまとめて支払う長期の保険契約は、期間に応じて前払費用として処理し、各事業年度に配分する必要があります。
保険金や共済金を受け取った場合は、益金に算入されます。被災した建物や設備の帳簿価額との差額が課税対象になりますが、受け取った保険金で代わりの資産を取得した場合には、圧縮記帳によって課税を繰り延べる制度があります。
| 項目 | 税務上の取扱い |
|---|---|
| 損害保険料・共済掛金 | 原則として支払った事業年度の損金(長期契約は期間配分) |
| 経営セーフティ共済の掛金 | 損金算入(月額 20 万円まで、累計 800 万円まで) |
| 受け取った保険金・共済金 | 益金算入(代替資産の取得で圧縮記帳の適用可) |
| 災害による資産の損失 | 損金算入(災害損失として) |
災害時の税務には特例が多く、申告期限の延長や納税の猶予なども用意されています。万一の際は、復旧と並行して税務上の手続きも確認してください。
当事務所の考え方
保険の見直しは、決算のタイミングで保険証券を一覧にし、補償の対象と金額が現在の建物や設備と合っているかを確認することから始めるようお伝えしています。設備を更新したのに保険金額が古いままの会社が少なくありません。
地震への備えは、地震保険で建物を全額カバーしようとすると保険料が重くなるため、復旧に最低限必要な金額に絞った保険と、経営セーフティ共済などの借入れの仕組みを組み合わせる形をお勧めしています。
よくある質問
企業のリスクとリスクファイナンスについて、当事務所によく寄せられる質問をまとめます。
Q1. 中小企業でも BCP(事業継続計画)を作るべきですか
規模にかかわらず、災害時に何を優先して復旧するか、誰がどう連絡を取るか、資金をどう手当てするかを決めておくことは事業の継続に直結します。中小企業庁は中小企業向けの簡易な BCP のひな形を公表しており、事業継続力強化計画の認定を受けると税制優遇や補助金の加点などの支援を受けられます。
Q2. 地震保険の保険料が高く、加入をためらっています
保険料は建物の構造や所在地によって異なります。補償額を復旧に最低限必要な金額に絞る、免責金額を設定するなどの方法で保険料を抑えることができます。共済の地震見舞金制度など、保険以外の選択肢も比較してみてください。
Q3. 経営者が突然亡くなった場合のリスクにはどう備えますか
調査でも経営幹部の突然の喪失を重視する企業が 6.8 % あります。経営者に万一のことがあった場合の借入金の返済や当面の運転資金に備えて、会社が契約者となる生命保険を活用する方法があります。あわせて、後継者の決定や株式の承継など、事業承継の準備も備えの一部です。
Q4. 災害で被災した場合、税金の支払いはどうなりますか
災害により申告や納付が期限までにできない場合は、申告期限の延長や納税の猶予を受けられる制度があります。被災した資産の損失は損金に算入でき、個人の場合は雑損控除や災害減免法による所得税の軽減もあります。被災時は税務署または税理士に早めに相談してください。
Q5. 保険の見直しはどのくらいの頻度で行えばよいですか
建物の増改築、設備の更新、事業内容の変更があった際には、補償の対象と金額が実態に合っているかを確認します。変更がなくても、年に 1 回、決算のタイミングで保険の一覧を見直す習慣をつけておくと、補償のもれや重複に気づきやすくなります。
認識と備えの開きを自社で確かめる
内閣府の調査によると、企業の 72.3 % がリスクを具体的に想定して経営を行い、重視するリスクは地震が 91.4 % で最も高くなっています。一方で、地震保険に加入している企業は 46.2 % にとどまり、リスクの認識と資金面の備えとの間に開きがあります。
中小企業では、被害を受けたときに必要な資金を見積もり、保険と自己資金、共済を組み合わせて備えることが現実的です。当事務所では、北九州エリアの中小企業の皆様に、保険料や共済掛金の税務上の取扱いを含めて、リスクへの備えを経営と資金の面からサポートしています。自社の備えが十分かどうか見直したい方は、お気軽にご相談ください。
